「ひつじのおくるみ」を求めて
澄んだ空に星々がきらめく季節に、私はあるサプライズを思いつきました。それは、お気に入りの喫茶店のお菓子をお取り寄せすること。コロナ禍と物価高の影響で、経営に苦しんでいる個人事業者を少しでも支援したい…そんな想いから、「三月の羊」のシュトーレンをいただきました。
私のあこがれの喫茶店 「三月の羊」
三月の羊のオーナー、大沼ねこひさんのブログを閲覧していた際のこと。ふと、季節限定のお菓子の販売のお知らせが目に留まりました。果実を練り込み焼き上げた生地に、粉雪のような砂糖がまぶしてあるパン、「シュトーレン」。ステンドグラスを模したクッキー、アップルパイ…
そのなかでも特に気になったのが、シュトーレン。遠い雪国の大地を思わせるような美しいビジュアルに目を惹かれ、気になり調べてみますと、シュトーレンとはドイツ発祥のクリスマスのお菓子とのこと。クリスマスの料理にはチキンと並び欠かせないものだそうです。
平飼いの卵、こめ油、小麦粉など体に優しい無農薬栽培の食材を使用しているとのこと。自家栽培のベリー類を洋酒に漬け込んだミックスフルーツを使用し、丁寧に心を込めて焼き上げられたシュトーレン。オーガニックなお菓子が好きな私は、すぐにオンラインショップでオーダーしました。もちろんティータイムに欠かせないはちみつも忘れずに。
宝石箱を開けて
ある日、待ちわびていた雪国からの贈り物が届きました。箱をそっと開けると、ペーパークッションの上にシュトーレンが入っていました。それは、寒空の牧舎の中、柔らかな敷き藁に身を横たえて春の訪れを待つ子羊のようにも見え、愛おしく感じられました。
一切れ取り分けると、果実が溶け込んだ洋酒の香りがふわりと鼻孔をくすぐります。口の中に入れると、果実の甘みと洋酒のほろ苦さがじんわり溶け広がってゆきます。ほんのりと効いたスパイスが甘さを引き立てており、とても滋味深い味わい。
やわらかな色をしたベリーが、星のようにたくさん散りばめたシュトーレン。継ぎ足しでコクを出しているというベリーからは、様々な人たちの想いが感じられました。小さな星のかけらと、北海道の自然の恵み、作り手の想いがぎゅっとつまった特別な一本。
大切に少しずついただくことにしました。
春を告げる幸せの青い鳥
感染症の拡大、物価高、インボイス制度など、個人事業主が抱える問題はたくさんあります。生産者や作り手の諦めや苦悩、困惑などの想いが連日のように、ネットやテレビを通して伝わってきます。大切に育てた家畜を処分せざるを得なくなったり、経営困難に陥ってしまった飲食店も少なくありません。
そんな環境下でも希望を抱き、試行錯誤を重ねながら生きるよすがを探り寄せようとする人々。社会が変動していく中で、農業を取り巻く課題が注目されています。私たちにできることは、地産地消や消費税に関する知識を深めること。食に関する知識を高めること。
シュトーレンに添えられていたカードに、花をくわえた青い鳥が描かれていました。寒く厳しい冬が過ぎれば、必ず春が来る…それは移り行く時代の中でも変わらないことです。幸せの青い鳥が皆さんのもとへ訪れますように。