(体が)とんとフリーズ<その1>
突然うつ病を発症した私の物語。
当時、どのような状況だったのか、どのように苦しんだのか、どうやって前に進んで行ったのか(現在も奮闘中ですが…)、どうにかこうにか日々を生き抜いてきた男の話をエッセイ風にして書いてみました。
どうぞご覧ください。
めちゃGRAVITY
2020年9月1日(火)、コロナが猛威を振るっていた晩夏のAM07:15の事
私は布団から起き上がれなくなってしまっていた。
まるで日本中の力士がのしかかってきたかと思うほどに体が重く、立ち上がることも困難を極めた。(図1)
部屋の外へ出ようとしても体を思うように動かせず、無理やり起き上がろうとジタバタしていた。それに比例するように動悸が激しく、呼吸は厳しくなり、高山病のような苦しみが私を襲った。
これが私とうつ病のなれそめであった。
お世辞にもいい出会い方とは言えない。むしろ出合わなかったほうがお互い幸せだったに違いない。
しかし無情にもうつ病は私の体を勝手に間借りし、ぬけぬけと居候になってしまったのである!
こうなるともうどうしようもない。哀れ私の体の一部は未だ(2023年現在)うつ病に所有権を奪われたまま今日を迎えてしまった。
こうして強烈な苦しみと予告なく同居する羽目になってしまった私であったが、息つく間もなく新たな恐怖と対面する羽目になる。
GO 職場, NO LIFE
そんなこんなで布団の上でうめいていた私に耳障りな高音と振動が飛び込んできた。
なんと上司から出勤確認のメールが送られてきたのである!間の悪いことに私は前日体調を崩した(というテイ)で休暇を貰っていた。今思えばもうそこからうつ病は始まっていたのかもしれない。とにかくその日の私にとって職場からの連絡は恐怖以外の何者でも無かった。
私は固まった体を動かし、なけなしの勇気をふり絞ってメールを返信した。
「ハイ、出勤できますよ!」
メールを作成しながら (劇団四季の『キャッツ』を鑑賞したら少しは軽やかさが体に戻ってくるだろうか)などとしょうもないことを考えていた。
メールを送信し終えたとき、それは起こった。ただでさえ重かった体が更に重量を増し、私は布団の上でぺちゃんこになってしまったのだ!
何が起こったのか分からなかった私はしばらく考え、さっき送ったメールの内容に従えば本日も出勤しなければならなくなるという当たり前の事実に行きついた。
その途端、あらゆる負の感情が嵐となって心の中(my soul soul)へ襲い掛かってきた。まるで洗濯機に投げ込まれたスチュアート・リトルのごとく、言葉にできない苦しみと恐怖の渦に呑み込まれ、心身共にてんやわんやになってしまった。
でんわにでれんわ
私は震える手で携帯を掴み、恥も外聞も投げ捨て再度メールを送信した。
「すみません。体が思うように動かせず、本日仕事へ行けそうにありません」
送信し終えるとそのまま布団へ潜り込み、ガタガタ震え続けていた。
途中何度か携帯が震えているのを確認したが、手に取ることなどとても出来なかった。(図2)
そんな狂おしい時間を過ごしているうちに時計の長針は四周し、午前11時となっていた。
私はどうにか体を起こし、鹿児島でお世話になっている心理士の先生に藁にも縋る思いで連絡した。
「先生、助けてくだせえ!」と用心棒に泣きつく小悪党のような私の泣き言を先生はしっかりと受けとめ、震える私に「とにかく安静にするように」とのお言葉をくれた。親しい方からの助言により、大荒れ模様だった私の心も少しずつ穏やかになっていった。
次回へ続きます。
お楽しみに!