10代の頃、生きづらさを抱えたときに読んだ本
毎日のように生きづらい。今は10代の頃とは違い、病状も良くなり、少しずつ前へ向けているのに希死念慮は取れない。10代の頃から閉鎖病棟で過ごした私にとってその生きづらい気持ちは本や小説によって昇華してきた。生きづらいる気持ちは収まらないが何度か読み返した本の中から生きづらい気持ちを昇華できる本を紹介する。
ざっくり
草の花 福永武彦
草の花
福永武彦全小説 第二巻心の風土が異なる男と男、男と女。わかりあえず、すれ違い、孤独な風土に咲く草の花。#読了
無慈悲に命を奪う戦争と病気。なぜ人を救う宗教が戦争を止めてくれないのですか!
洗礼を受けた青年の絶望と咆哮。
運命が無慈悲だからこそ、孤独な風土に花を咲かせたい。 pic.twitter.com/PAvu0ohKdG— 猫と本@読書垢 (@VZlHaHj18EPuhct) April 25, 2023
この小説は切なくも繊細で美しい。まるで、美しい絵画を見ているかのようだ。主人公の汐見は儚くも恋に破れ、自殺に近い手術を行い、若くして亡くなる。その残された雑記帳には多くの苦悩が書かれていた。19歳の時に読んだがその瑞々しい文体は今でも心を貫く。切ない感情に震えたい方におススメです。
星への旅 吉村昭
『星への旅』吉村昭 #読了
日常への倦怠から集団自殺を企てる少年少女を描いた表題作。自殺を企てる彼らの生き生きとした姿。文字から死の気配が漂ってきて腕が掴まれそうになる。吉村昭という人の自殺に対する異様な程の関心、惹かれるが怖い。調べてみたら、作家本人の最期も何と言っていいのか。 pic.twitter.com/CloV3P47BZ— きょんきょん@読書 (@kyoko_dokusyo) December 26, 2021
死を扱わない小説が必ずしも生きづらさを緩和するわけではない。本作は吉村昭のデビュー作。集団自殺を扱った本作は青年たちがどのようにして死の旅路へ逝こうとしたのか、克明に描かれる。YOASOBIの『夜に駆ける』もそうだが、自死を扱った作品だからこそ、そのマグマを昇華できる作品もあるのだ、と思えるような作品。
初恋 ツルゲーネフ
今日は,ロシアの作家ツルゲーネフの誕生日(1818年).農奴制や女性の自立などの社会問題を取り上げる一方,ロシアの田園をすぐれた感性でとらえた叙情性あふれる作品も遺しました.『初恋』は,その名の通り,自分の16歳の頃の恋について回想する自伝的物語.☞ https://t.co/kOdYSFO4Wp pic.twitter.com/aCprXyEv5C
— 岩波書店 (@Iwanamishoten) November 9, 2019
16歳の少年、ウラジミールは年上の令嬢、ジナイーダに恋をする。しかし、彼女には秘密があって、少年は恋に破れる。閉鎖病棟の入院中に読んだ本。読んだ年齢がちょうど主人公と同年齢だったからその焦燥感や苛立ちに共感できた。落ちはあまり言わないほうがいいけれども、初恋とは甘酸っぱいだけじゃいられないもの。
スピンクス 山岸凉子
ずーっと思ってるんですけど、山岸凉子のスピンクスを石御で見たいんですよ。黒髪が石垣くんね。 pic.twitter.com/Ojq0lr8Q5u
— 尾坂ヨイドロ (@zeppan_daigaku) May 14, 2015
こちらは漫画。少女漫画の巨匠、山岸凉子さんの初期の短編漫画。少年は魔女の館に住んでいた。少年は魔女の館の主、スピンクスと対峙し、心の闇を彷徨する。スピンクスの正体はまさかのあの人だった。精神科に入院する少年の心の旅路を繊細な描写で鮮明に描いた傑作。解離状態をよく描けているから閉鎖病棟に入院したことのある人ならばあるあるかも。
悲しみを生きる力に 入江杏
NHKディレクターご自身の喪失体験が出発点。
“悲しみは乗り越えなければいけないものなのか?”
“いつまでもくよくよしている私は、後ろ向きの弱い人間なのか?”
その時、手にした本の中に…
世田谷事件から22年 入江杏さんインタビュー (NHK NEWS) https://t.co/HcSqn5xMSB pic.twitter.com/hvqraHkht9
— 入江 杏「わたしからはじまる 悲しみを物語るということ」小学館より発売 (@ann_irie) December 28, 2022
世田谷一家殺害事件で最愛の妹家族を失った入江杏さんのエッセイ集。人は何故、悲しむのか、悲しみとは何か、悲しむ力を失いつつあるこの世界でもう一度悲しむ力を問い直す。読んで思ったのは自分の中の他者の不幸を悲しむ力だった。事件や災害が起こったとき、私は悲しんでいるだろうか。興味本位で見ていないだろうか。悲しみの当事者には誰もが成り得る。涙を流す行為は文字通り、『水に戻す』行為だ。水がたゆたうまで私は悲しみに寄り添っているだろうか。
星戀 野尻抱影・山口誓子
今日はJAXAの若田宇宙飛行士と、交信するお仕事がありました
宇宙にいく夢絶対あきらめない星の本をたくさん書いた野尻抱影さん
姻戚関係なご縁があります✨ pic.twitter.com/dIu8joW9Xi— 🍉中川翔子🍉🐈⬛ (@shoko55mmts) February 15, 2023
この本は星空の宝石箱のような本だ。蓋を開けると満面の星空を覗けるような本だ。野尻抱影さんは天文民俗学者であり、星の和名の収集家。山口誓子の星にまつわる俳句も綺羅星のようで美しい。私はこの本の一文を何度か抜粋した。紙の上に起こしてもその星の綺麗さを想像できる。
天使の卵 村山由佳
『天使の卵』
村山由佳 #読了どんな傷を抱えても、生きちゃいけないなんてことはないと伝える一冊。
何年も、何回も読んでる一番好きな小説🌛
新年度で疲れた心を癒やしたくて、大好きな天使シリーズを読みます。
先月愛猫が14歳で亡なり桜がちょうど綺麗で、この本に抱きしめられた気分です。 pic.twitter.com/t6Cq8tHHO2— りりんぴー (@lillyn_pi) April 16, 2023
直木賞作家の村山由佳のデビュー作。19歳の青年、慎一は年上の精神科医・春妃に恋をする。しかし、春妃は流産によって春を待たずして旅立ってしまう。初々しい青年の心理状態が細やかに青春を高らかに綴られた本書はロングセラー作品。時代は変われども恋が若者の心をとらえているのに変わりはない。
最後に 生きづらさを抱えたときに読んできた本から学んだこと
個人的な『生きづらさを感じたときに読んだ本』でしたが、いかがでしょうか。活字が苦手な方は最近では漫画も素晴らしい作品がたくさんあります。画集やイラスト集、写真集も豊富です。ネットを検索すればアマチュア作家さんでもいい作品を書いている方は大勢います。こんな死にたくなるような世の中ですが、一押しの作品を探してみるのもいいかもしれません。
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