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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

生きづらさを感じたときに読みたい本

10代の頃、生きづらさを抱えたときに読んだ本

毎日のように生きづらい。今は10代の頃とは違い、病状も良くなり、少しずつ前へ向けているのに希死念慮は取れない。10代の頃から閉鎖病棟で過ごした私にとってその生きづらい気持ちは本や小説によって昇華してきた。生きづらいる気持ちは収まらないが何度か読み返した本の中から生きづらい気持ちを昇華できる本を紹介する。

草の花 福永武彦

この小説は切なくも繊細で美しい。まるで、美しい絵画を見ているかのようだ。主人公の汐見は儚くも恋に破れ、自殺に近い手術を行い、若くして亡くなる。その残された雑記帳には多くの苦悩が書かれていた。19歳の時に読んだがその瑞々しい文体は今でも心を貫く。切ない感情に震えたい方におススメです。

星への旅 吉村昭

死を扱わない小説が必ずしも生きづらさを緩和するわけではない。本作は吉村昭のデビュー作。集団自殺を扱った本作は青年たちがどのようにして死の旅路へ逝こうとしたのか、克明に描かれる。YOASOBIの『夜に駆ける』もそうだが、自死を扱った作品だからこそ、そのマグマを昇華できる作品もあるのだ、と思えるような作品。

初恋 ツルゲーネフ

16歳の少年、ウラジミールは年上の令嬢、ジナイーダに恋をする。しかし、彼女には秘密があって、少年は恋に破れる。閉鎖病棟の入院中に読んだ本。読んだ年齢がちょうど主人公と同年齢だったからその焦燥感や苛立ちに共感できた。落ちはあまり言わないほうがいいけれども、初恋とは甘酸っぱいだけじゃいられないもの。

スピンクス 山岸凉子

 

こちらは漫画。少女漫画の巨匠、山岸凉子さんの初期の短編漫画。少年は魔女の館に住んでいた。少年は魔女の館の主、スピンクスと対峙し、心の闇を彷徨する。スピンクスの正体はまさかのあの人だった。精神科に入院する少年の心の旅路を繊細な描写で鮮明に描いた傑作。解離状態をよく描けているから閉鎖病棟に入院したことのある人ならばあるあるかも。

悲しみを生きる力に 入江杏

世田谷一家殺害事件で最愛の妹家族を失った入江杏さんのエッセイ集。人は何故、悲しむのか、悲しみとは何か、悲しむ力を失いつつあるこの世界でもう一度悲しむ力を問い直す。読んで思ったのは自分の中の他者の不幸を悲しむ力だった。事件や災害が起こったとき、私は悲しんでいるだろうか。興味本位で見ていないだろうか。悲しみの当事者には誰もが成り得る。涙を流す行為は文字通り、『水に戻す』行為だ。水がたゆたうまで私は悲しみに寄り添っているだろうか。

星戀 野尻抱影・山口誓子

この本は星空の宝石箱のような本だ。蓋を開けると満面の星空を覗けるような本だ。野尻抱影さんは天文民俗学者であり、星の和名の収集家。山口誓子の星にまつわる俳句も綺羅星のようで美しい。私はこの本の一文を何度か抜粋した。紙の上に起こしてもその星の綺麗さを想像できる。

天使の卵 村山由佳

直木賞作家の村山由佳のデビュー作。19歳の青年、慎一は年上の精神科医・春妃に恋をする。しかし、春妃は流産によって春を待たずして旅立ってしまう。初々しい青年の心理状態が細やかに青春を高らかに綴られた本書はロングセラー作品。時代は変われども恋が若者の心をとらえているのに変わりはない。

最後に 生きづらさを抱えたときに読んできた本から学んだこと

個人的な『生きづらさを感じたときに読んだ本』でしたが、いかがでしょうか。活字が苦手な方は最近では漫画も素晴らしい作品がたくさんあります。画集やイラスト集、写真集も豊富です。ネットを検索すればアマチュア作家さんでもいい作品を書いている方は大勢います。こんな死にたくなるような世の中ですが、一押しの作品を探してみるのもいいかもしれません。

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