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2024/11/10:フリーペーパーvol.104発刊!

春の憂鬱 美味しいものと綺麗なもの

春を求めて

少しずつ暖かくなり、木々や植物たちが芽吹き始める春。重い季節を脱ぎ捨てて、衣替えをしたくなるのは人も同じようです。ただ、最近は季節の移り変わりが不安定で、新しいサイクルに身を任すことが難しいと感じる今日この頃。少しでも冬の翳(かげり)を払いたくて、私は春を探すことにしました。

お花のキャラメルタルト

山梨県甲府市太田町にある「bebe nature」。自然素材・伝統技法にこだわった美味しいお菓子を販売しているお店です。マドレーヌやフィナンシェ、ドライフルーツで彩られたクッキーリースなどどれも素敵な商品たちばかりです。

私のおすすめは、お花のクッキーがたくさん乗ったキャラメルタルト。春に咲く花を彷彿させるニュアンスカラーのクッキーが可愛らしいです。香ばしいクルミと甘いキャラメルのマリアージュを楽しめます。

以前、ここのお店のお菓子の詰め合わせを母の日に贈ったことがありました。母が箱を開けた時の花笑みを今も思い出します。

『うさぎパン』瀧羽麻子

春の木漏れ日のような青春を描いた短編小説。

高校生の優子は、同級生の富田くんと大好きなパン屋巡りを始める。パンが好きな2人はお互いへの想いを深めていく…。複雑な家族への想い、淡い恋心をやさしく包み込み、ふんわりと焼き上げたような作品です。

春の訪れを告げる菜の花のように、甘いだけでなくほんの少しの苦さがアクセント。お気に入りのパンを買ってお花見に行きたくなります。

桃のお茶

春になると桃のお茶が飲みたくなります。香りを移したフレーバーティーが私のお気に入りです。透き通った黄金色、ふわりと香る甘い匂い。すっきりとした飲み心地。あたたかくて優しいお茶、私を癒してくれるお茶。

憂鬱な日は桃のお茶を淹れます。香りを燻らせて、綺麗な色をした水面をぼーっと眺めて楽しみます。薄めに淹れたお茶を焼菓子といただきます。桃のお茶だけは、他のものを我慢してでもいいものを選ぶほど好きです。

思えば昔から桃が好きでした。風邪を引いた時に食べた桃の缶詰、昔見に行った白くてかわいい花、高校生の時に買った桃のフレグランス。少し甘くて眠くなりそうな香り、丸くてすべすべした果肉…。いつの間にか私は桃のとりこになっていたようです。

春愁

春は始まりの終わり、そして終わりの始まりの季節。水の流れのように留まらず、絶えず変化してゆきます。冬の間眠っていたものが一斉に萌え出て、春が少し急かすように、優しく終わりを促します。

心が浮き立つのも、憂鬱になるのも、そうした自然の流れに適応しようとしているからかもしれません。

 

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