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2021/09/10:フリーペーパーvol.66発刊!

森羅万象を鳴らすギタリスト、AOKI, hayato。アルバム・レビューでその才覚に迫る!

序文ーAOKI, hayato氏の音楽に、見事ハマってしまったこの頃

相も変わらず連日Apple Musicなどのサブスクリプション・サービスで新たな音楽を探し続けております。その中で新たに一際素晴らしいアーティストを発見致しました。その名はAOKI, hayato(青木隼人)氏。
AOKI氏は1978年生まれのソロ・ギタリスト。自主レーベル「grainfield」を拠点に、ジャケットのデザインなども含め自らの手で作品を送り続けています。

名盤と肩を並べる才覚

私はギターによるインストゥルメンタルのアルバムを聴くのがとても好きで、これまでもパット・メセニー「One Quiet Night」やドゥルッティ・コラム「The Return Of The Durutti Column」などのアルバムを強くヘビーローテーションしてきましたが、AOKI氏の音楽はそれらに肩を並べるような素晴らしい音楽です。今回はAOKI氏の数あるアルバムの中で、私が特に引っかかった作品を周辺の情報とともに詳しくレビューし、その瑞々しい才覚を解析していこうと思います。何卒お付き合い下さい。(アルバム・レビューはサブスクリプション・サービスにも存在する作品に絞らせて頂きます)

1:「guitar solo #1」(2007年)

アコースティック・ギターのインストのみで構成された一作。曲調が完全に統一されており、一曲一曲の繋ぎ目が分からないほど緩やかに時が流れるアルバムです。
一聴して、全部同じ曲に聴こえてしまう、という感想を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、これはアルバム一作を通して何度かリピートすることで完成する作品であると私は思います。

野外もしくは自宅録音なのか、雑踏や鳥の鳴き声などの環境音も聴こえてきます。しかし旋律ではない音とギターの混ざり具合にも全く違和感が無い。むしろこの環境音こそ無くてはならないものであるように思え、周りの音すら見事にナチュラルな音楽にしてしまう空間構成力に驚きます。
あらゆるアーティストが陥りがちな自己中心的な考え方では、こういう風に環境と素直に繋がり合うような音楽は鳴らせないでしょう。煩悩や欲の無い、煩雑なメッセージ性からも離れた音楽として、AOKI氏の音楽は毅然と鳴っているのです。

心をあっという間に溶かしていくようなギターの音色。情景が浮かぶ環境音。生々しい録音。全てがとにかく素晴らしい!非常に静かで淡々としているようで、聴き手の想像力によって色々な人間の表情が浮かんでくるようにも思えます。
最初はこのアルバムを入り口としてAOKI氏の音楽に触れることをお勧め致します。気に入った方は続編の「guitar solo #2」も是非!

2:「morning july」(2008年)

2006年7月18日に行われたライブ演奏を収録したアルバムです。観客席の音などは恐らくカットされており、ギターの音だけが鳴っています。
前述の「guitar solo #1」と地続きのサウンドで構成されておりますが、楽曲は幾分か長大になっており、18分に渡る楽曲もあります。5曲でトータル51分15秒。しかしマンネリ感は無く、これだけの時間をかけることによって、音楽自体がゆっくりと身の解きほぐされていくような感触を得ています。
アルバム全体をトータルで聴くことで真価が分かる作品づくりになっているのを承知でピークポイントを挙げるならば、いつもより情緒的で音数が少し多めの「part4」が締め括りにふさわしい見事な出来栄えです。この世界をライブ演奏で生み出してしまう力量に強く感じ入ることも出来ますし、切々と在りながらも甘いギターの音色には、只々心が落ち着きます。

「morning july」というタイトル通り、夏の朝、目覚めたばかりの時に夢うつつの淡い空気感の中、なるべく良質なスピーカーで聴きたくなる一作です(イヤホンではなく)。これはまさに音楽を取り巻く周囲の空気や環境音と混ぜることで完成する、ギターによる空間芸術です。リスナー自身のコンディションや聴く時に置かれているシチュエーションによっても、聴こえ方がはっきりと変化するでしょう。まるで映し鏡のような面白いアルバムです。

3:「equivalent」(2014年)

古めかしいカセットMTR(カセットテープを主体とした録音機材のひとつ)で録音された、エレクトリック・ギターの音だけの作品です。
ローレン・コナーズの諸作品を彷彿とさせるような、リバーブに満ち溢れた隠喩的なサウンド。ギターという楽器の可能性を緩やかに、かつ最大限に引き出すような演奏。モノラルであるにも関わらず、圧倒的にステレオ的な感覚を覚える音像。
夏場の晴れた日にも、雪の降るような寒い日にも。あるいは作業をしたい時。睡眠時。いずれにも合う、時と場所を選ばない音楽です。人間の感情をニュートラルな状態に無理なく戻してくれるマインドセットのための音楽としても、極めて良質であると感じます。

そうなのです。AOKI氏の音楽は常にニュートラルな感情を呼び起こしてくれる音楽である、ということが極めて重要な点です。そういった音楽は日本国内にはほぼ存在しないと思われます。あらゆる思想性・生活に付きまとう損得の概念・卑しい煩悩を超越した音楽であるという言い方も出来るでしょう。とにかく、このような音楽は非常に珍しいです。リスナー生活を20年以上続けてきた私からしても。

4:「FOLKLORE」(AOKI, hayatoとharuka nakamura)(2015年)

広島・世界平和記念聖堂など多くの重要文化財施設にて演奏会を行い、様々なドラマやCMにも楽曲提供を重ねる音楽家、haruka nakamura氏とのコラボレーション・アルバムです。タイトル通りフォーク・ミュージックにも近いアコースティックな音を貫き通すアルバムです。

私はnakamura氏の音楽も普段から愛好していますが、nakamura氏のメロディーを構築する際のセンスと、AOKI氏の作品に通底する生々しい音の質感が融合したようなこのアルバムは非常に興味深いものです。じめじめとした暗さや虚無感の無い、音楽によって創り出された陽だまりのような作品であるという印象です。
そしてここで意識してしまうのは、AOKI氏が奏でるアコースティック・ギターの音の独特な鳴りです。素朴な響きでありながら、一度聴いただけでAOKI氏の音であると判断できるようなギターの鳴り。他アーティストとのコラボレーションであるということが、よりAOKI氏の持つサウンドの毅然さを浮き彫りにしているように思えます。

5:「日田」(2018年)

大分県日田市にある映画館「シネマテーク・リベルテ」にて録音されたアルバムです。リベルテは映画上映、カフェ、雑貨ショップ、館内を貸し切ったコンサートイベントと様々な取り組みを行っており、文化の発信地となっている映画館です。そして、本作はリベルテが立ち上げたレーベルからの第一弾リリースとなったアルバムです。曲名も「馬とシネマ」「リベルテ」など日田の街、映画館に関する(と思われる)ものが多く、ある種コンセプチュアルな作品に仕上がっています。

コンセプトとして実に面白いアクションとなっている今作は、内容を見ると非常に叙情的でメロディアスなギターインスト作品。ですが、初期の無機質で潔癖なほど透き通った感覚から、音楽的質感がより深化・変化しており、有機的で美しいメロディーが平熱を守りながら紡がれていきます。
歌が無いのに、歌がどこかから聴こえてくるような。ギターひとつのシンプルな演奏が、何層もの楽器が折り重なる音に聴こえてくるような……。
私はAOKI氏の音楽から、「歌は歌のないところから聴こえてくる」という早川義夫氏のアルバム・タイトルを連想します。言葉を排し、装飾を取り払った先にはこのような風景が広がっているのです。

AOKI氏の音楽は徹底して繊細でありながら、非常に壮大です。大分の田舎街にある風景と、芸術への渇望を音楽に投影する。その極めて個人的な行いが、大きな音楽となって聴き手に浸透する。その尊大さに感じ入りたいアルバムです。
私はこのアルバムを聴いて、純粋な心の在り方・表現行為の在り方とはこういうことなのだと唸ってしまいました。インストゥルメンタルを聴かない方も、インストゥルメンタルを中心に聴かれる方も、音楽が好きであると自負する方には、このアルバムを是非チェックして頂きたく思います。

最後にーそこには言葉は無い。しかし、それは紛れもなく「歌」である

以上、5作を紹介してきましたが、皆様のお気に入りとなるような作品はありましたでしょうか。
現代社会において日々忘れられがちな、理性的な感覚・ニュートラルな感情を呼び起こすAOKI氏の音楽。たくさんの言葉を連ねるよりも大きなメッセージが溶け込んでいくようなその作品群こそ、歌はなくとも本当の意味での「歌」と呼びたいものです。
また、AOKI氏のアルバムはパッケージングも通常の紙ジャケットとは違う素材を使うなど、非常に凝ったものばかりです。よりAOKI氏の世界に触れたいと思った方は、パッケージングされたCD作品を手に取ってみるのも吉でしょう。

AOKI氏の音楽は、自分のペースを保ちながら生きていたい、日々の中で少しでも自由な環境を手にしたいと願う方に、嘘偽りなく誠実に接してくれる音楽だと私は思います。この音楽に是非、没入してみて下さい。きっと心の中で、何かが変わるはずです。

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