障害者雇用に対するコロナの影響
新型コロナウイルスの影響により、テレワークが広く普及するなど、私たちの働き方は大きく変わりました。この変化は、障害者雇用の現場にも大きな影響を及ぼしています。
「一緒に働く人はみんな仲が良かった。大好きな職場だったのに…」。軽い知的障害のある女性(48)=東京都大田区=は、肩を落とす。17年間勤めた食堂の運営会社から今月15日に解雇された。
東京都内の大手IT企業の社員食堂で週5日間、パートとしてテーブルの掃除やトレーの片付けなどを担当してきた。だが、3月から社員の大半はテレワークとなり、食堂を訪れる社員は激減。女性は長期間の休業を命じられ、結局食堂自体の閉鎖が決まった。
(東京新聞Web 2020年10月18日)
コロナ禍前、少なからずの障害者の方が、オフィスの清掃、社員食堂の配膳、郵便物の仕訳、シュレッダー処理などの業務に従事していました。
確かに、テレワークによるオフィスへの出社への減少、業務におけるペーパレス化、行政手続や契約の電子化などは、新型コロナウイルス対策や、業務の効率化という観点からは望ましいことです。
しかし、その裏で、障害者の方が働く場の喪失に直面しているということも忘れてはならない課題です。
厚生労働省の統計によると、今年の3月から8月までの半年間に解雇をされた障害者は1475人で、前年同月比で約35%も増加しているということです。
新たな可能性への期待
一方で、withコロナ時代の障害者雇用の新たな可能性にも期待が高まっています。
テレワークにおける定番のWEB会議ツールとしてzoomがありますが、zoomは、視覚障害者の方がスムーズにWEB会議に参加できるよう、プレゼンター画面と手話通訳者画面を簡単に同時表示できる機能をリリースしました。
他にも、視覚障害者の方がインターネットにアクセスできるようにするための音声ブラウザや、腕などに障害がある方がキーボードやマウスを使わなくても音声でパソコンを操作したりデータ入力したりできるような技術も存在しています。
このように、ITによるサポートを活用すれば、テレワークにおいて、多くの障害者の方が個性を生かした働き方をすることができりる可能性があるのではないでしょうか。
身体に障害があったり、満員電車による通勤が困難になるような精神障害があったりして、オフィスへ通勤をすることが困難だった方も、テレワークに可能性を見出すことができるかもしれません。
また、テレワークは、場所を選びませんので、地方在住の障害者の方が、東京など都市部の企業での就業するチャンスもあるでしょう。
たとえば「株式会社カラフィス」は、テレワークによる障害者の就業支援に特化したサービスを提供しています。
障害者の方が、現在通所もしくは関係をもつ障がい者就労支援施設(就労移行や就労継続支援A型・B型など)を通じてカラフィスに登録すると、障害者の方を採用したいと考えている企業とのマッチングを行います。
カラフィスは、企業側にも、テレワークにおける障害者雇用のノウハウを提供し、マッチングの成立を促していくということです。
障がい者の在宅雇用のカラフィスのHPです – 障がい者が完全在宅で働く カラフィス
https://www.coloffice.com/
まとめ
新型コロナウイルスは、健常者、障害者を問わず、働き方に大きな変化をもたらしました。
まだまだ予断を許さない状況でありますが、テレワークをはじめ、新しい働き方のチャンスも増えています。この変化をポジティブに捉え、障害者の雇用促進につなげていきたいものです。
プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、個人事務所を経てポライト社会保険労務士法人に改組。マネージングパートナーに就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。また、近年は人事労務freee、SmartHR、KING OF TIMEなどHRテクノロジーの普及にも努めている。
主な寄稿先:東洋経済オンライン、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Web、打刻ファースト、起業サプリジャーナルなど