2019年6月7日に障害者雇用促進法の改正案が国会で可決されました。法改正事項のうち、重要な部分が2020年4月1日より施行されていますので、今回の記事で説明させて頂きたいと思います。
障害者雇用促進法とは?
そもそも、障害者雇用促進法とは、どのような法律なのでしょうか?
障害者雇用促進法は、障害者の方が自立した職業生活を営むことを実現するため、職業リハビリテーションの推進や、事業主が障害者を雇用する義務、差別の禁止や合理的配慮の提供義務等を定めた法律です。
より具体的に言えば、国や地方公共団体が障害者雇用を促進するために取り組まなければならないこと、事業主が雇用すべき障害者の率(従業員全体に占める障害者の割合で、これを「法定雇用率」という)、法定雇用率を超える障害者を雇用した場合の事業主への報奨金、法定雇用率を達成できなかった事業主に対するペナルティーなどがこの法律には定められています。
障害者雇用促進法の2020年4月1日から施行される改正事項で、押えておきたい内容は2つです。
障害者の短時間雇用に対する特例給付金制度が開始された
2020年4月から施行される障害者雇用促進法の重要な法改正事項の1つ目は、短時間で雇用される障害者に対する特例給付金制度が開始されるということです。
先ほど説明した、「法定雇用率を超える障害者を雇用した場合の事業主への報奨金」は、これまでは、週20時間以上勤務する障害者のみが対象でした。
しかしながら、障害者の中には、短時間ならば働くことができるが、週20時も勤務することは難しいという方も少なからずいらっしゃいます。
そこで、今回の法改正によって、週20時間以上の場合の報奨金よりも金額は小さくなりますが、週20時間未満で障害者の方を雇用した場合にも特例給付金を支払うことで、短時間ならば働けるという障害者の方に対する雇用促進のインセンティブにしようと国は考えたわけです。
なお、特例給付金の支給額は、条件によって幅がありますが、短時間で雇用する障害者1人あたり5,000円/月または7,000円/月となっています。1年に換算すると60,000円ないし84,000円となりますので、少なからずのメリットになるはずです。
障害者雇用に対する優良事業者の「認定制度」が創設された
2つ目の法改正は、障害者雇用に対する優良事業者の「認定制度」が創設されたことです。
これまでも、子育て支援の優良企業には「くるみんマーク」、介護支援の優良企業には「トモニンマーク」、女性活躍を積極的に進めている企業には「えるぼしマーク」というように、認定制度が存在し、一定の審査基準のもと、認定マークが与えられていました。
企業は、これらのマークをホームページや企業案内に掲げたり、採用活動の場でPRしたりすることで、企業価値を高めることができます。
これと同じような考え方で、障害者雇用に対する優良事業者の「認定制度」が創設されることになったということです。
マークのデザインや愛称が、2020年1月24日までの締切で公募されていたのですが、どのようなマーク・愛称に決まったのか、厚生労働省による公表が待たれます。
また、認定基準についても、まだ公表されていませんので、こちらも公表が待たれます。
まとめ
企業経営者の方は、今回の法改正を活用して、短時間で働ける障害者の雇用拡大を検討したり、障害者雇用に対する優良事業者の認定を目指してみるのはいかがでしょうか。
今回の法改正を機に、短時間ならば就業できる方を中心に、障害者の方の雇用機会が、一層拡大することを願ってやみません。
プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)
大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、個人事務所を経てポライト社会保険労務士法人に改組。マネージングパートナーに就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。また、近年は人事労務freee、SmartHR、KING OF TIMEなどHRテクノロジーの普及にも努めている。
主な寄稿先:東洋経済オンライン、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Web、打刻ファースト、起業サプリジャーナルなど