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2024/11/10:フリーペーパーvol.104発刊!

会員アプリ無し現金払い匿名滞在可「Joyfull」の重要性

会員アプリ無し現金払い匿名滞在可だった「ジョイフル」

ファミレスに限らず、今では多くの店舗が採用している電子マネーやスマホ決済。顧客の囲い込みと個人データの収集に役立つ会員アプリ。それらは、ポイント還元や割引クーポンなどといった具体的な金額で消費者の心をつかみ、着々とダウンロード数を伸ばしています。

九州ファミレス界の重鎮「ジョイフル」

その一方で、世間の風潮どこ吹く風と、かたくななまでに昭和の決済手段「現金払い」を守り、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済などのキャッシュレス決済にも未対応、自社アプリすら持たなかった九州ファミレス界の重鎮「Joyfull」がどれだけ貴重な存在だったか、あなたは理解していたでしょうか?

大分市を本社とするファミリーレストラン・ジョイフルは、地元の大分や九州全域を中心に、全国に多くの店舗があります。

そう、ジョイフルも時代の要請に適応し、ついにクレジットカード、電子マネー決済を始めたのです。

意識を向けるべき原点―アプリの安全性

席に座って注文し、料理が届いて食事を楽しんでる間、客の自分がどのような職業でどんな映画が好きで、通販やコンビニではどんなものを買うのか、こちらからは見えることすらない厨房の店員さんが知っているとしたら、その事実をあなたはどう思いますか?

誰もが気にしなくなった

別に知られて困るようなことはない、自分の個人的嗜好ぐらい知りたいやつには教えてやる、と割り切れるならいいのですが。Tポイントカード、Pontaカード、nanaco、ファミマカード、dポイントカード………その他、無数に存在する会員カード、ポイントカードには、自分の購買履歴が残り、その情報は自分が死んだ後も消えることはありません。

もちろん、知られることが必ずしも不都合というわけではありません。クレジットカードの情報が抜き取られて自分の知らない間に勝手に偽造されて使い込まれるようなことさえなければ、人間の好みなんて、結局のところ芯の部分ではあまり変わらないものかもしれませんから。

孤立じゃなく孤独

匿名性の高いチェーンのファミレスに行き、誰でも頼むような安い日替わりランチをせっかく一人で食べているのに、不特定多数のモブでいられる気楽さなど現代ではほとんど得られません。黙ってはいても、店員ですらやろうと思えば私の情報を引き出すことだって出来るのだと思うと、自分の行為が見透かされた孤独ごっこにさえ思えてしまいます。

ファミレスの事情

ファミレスだけでなく、現在では多くのサービス業が自社アプリを配布しています。入会時の特典やキャンペーンのたびに配布される割引クーポンに惑わされ、自分の情報を渡しているという事実を私たちの多くはもはや分かっていながら見て見ぬふりをしているのです。

個人情報は止まらない

それを特に気にしない、知られても別に構わないという考えの消費者も増えました。インターネット通販の隆盛する現代は、実店舗での購入履歴すら一旦カードや電子マネー決済を経由すれば、住所、氏名、年齢、電話番号、購入履歴、金額、店舗名、さらには他の会員カードで購入した情報までが、規約に応じて全て抜かれてしまうような時代です。もちろん、だからといって、お店が悪さをするということでは決してないのですけれど。

他人同士で礼儀を払う素晴らしさ

ただ、私たち日本人は、いや、日本人に限ったことではないのかもしれませんが「周りの誰一人として自分のことを知らない」という心地よい解放感を得る権利を捨ててしまいました。

忘れ合う礼節

軽食も可能だった昔ながらの喫茶店をジョイフルと重ね合わせてみると、携帯電話、ポケットベル以前の日本なら当たり前のように得ることの出来た「誰ともつながらない」時間が、今では貴重なものとなってしまいました。一旦自宅を出てしまえば自宅の固定電話がどれだけ鳴ろうと出られないのは当然。留守番電話の登場以前なら電話があったことすら知らぬままで、電話に出なかったと後で責められることもありません。

現金と紙の帳簿

クレジットカードは存在したものの、一般的に支払いはほぼすべてが現金。電子マネー、スマホ決済は存在せず、客の情報がデータとして残るシステムが整っているわけでもありません。情報を残すにしても、帳簿などの紙面に印字するのがせいぜい。

確かに、そのことが良い面にもなれば不都合を生み出す元凶になったこともありました。「消えた年金記録」などは、電子情報を残せなかったことが原因の一部でもありました。

それでも、完全なる「たった一人」の時間は、精神衛生上極めて効果の高いデトックス効果を持っていたはずです。

金と時間

ファミリーレストラン・ジョイフルは、そういった旧態依然とした決済手段を残していた、稀有で貴重なお店でした。決済手段についての店の良し悪しは、客それぞれが自分の好みで個人的に判断すればいいことです。

現代というのは、昼食時間を含めた昼休憩を1時間すら持てない人もたくさんいます。そんな貴重な昼食時間に極上の癒やしを与えてくれるものは何かといえば、それはやっぱり何はともあれ「時間」そのものなのではないでしょうか。

ひとり

自分の自由な時間の純度を極限まで高めてくれる精製媒体が「孤独」で、それは自分の情報は自分だけのもので、誰も簡単に知ることは出来ないという安心感こそが生み出せるものでしょう。

私がまだ中学生だったころ、自宅のそばには大きな川が流れ、護岸は広々とした草むらの堤防が立っていました。周囲はめったに人が通らず、頭上には遮るもののない真っ青な空に白い太陽がゆがんでいました。

ポケベル、PHS、携帯電話、スマートフォンなどの携帯通信手段が何もない、草むらに囲まれた世界の中の小さな座席で、誰にも邪魔されることなく自分の自由な時間を何時間でも持つことができた体験を、とても贅沢なものだったのだと、今では思い返すことができます。

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