国家公務員障害者選考試験を受験【区分・九州】
3月22日、中央省庁障害者雇用水増し問題を受けて実施された、第1回の国家公務員障害者選考試験の最終合格者が発表となりました。
最終合格者数は全体で754人、採用予定数の676人を若干上回りました。
今回は初の試験だったということで、実施する担当者にとっても手探りの試みだったのかもしれません。しかし、試験を実施する側には、合理的配慮を謳う前にもっと考えなければならないことがいくつもあるように感じられました。
二次面接に至る過程や、面接試験期間中もしんどい思いをされている方々が特に精神に多かっですね。
そして今日の合格者発表で、不合格が確定し落胆された方もいらっしゃいます。
ここまでサポートするのが、障害者採用選考試験では求められると思います。
そこまで気づいて欲しかったです。
— ひこ☆ (@ADHD_type) 2019年3月22日
試験実施状況
試験は全国を9つの地域、北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄に区分し、各地域ごとに合格者を決定する方式で行われました。
最も採用数の多かった地域は関東甲信越で365人。最も少なかった地域は沖縄で13人でした。都市と地方では人口も大きく異なりますので、申込者数の多い関東で採用が多いのは比率から言って妥当でしょう。
一方、申込者数に占める最終合格者数の割合で、最も競争率の厳しかった地域が近畿で合格率5.6%、続いて九州の6.5%でした。逆に最も競争率の低かった地域は、東北の13.6%、次に北海道で12.5%の受験者が合格しています。
居住地域の差
九州とはいえまだ寒風の吹きすさぶ2月2日、翌3日に行われる国家公務員障害者選考1次試験を受験するため、私は午前7時32分天文館発の博多バスターミナル行き高速バスに乗りました。九州区分で申し込んだ受験者は基本的に全員、福岡市に設けられた同じ受験会場で一斉に1次選考を受験しなければなりません。
実際に採用されたらどうなる
国家公務員の試験ですから、地方で採用するなら地方にある外局、出張所などが勤務先となります。それを九州で区分けすれば、ほとんどの勤務地が福岡市に固まってしまいます。国の機関が、鹿児島まで届いていません。せいぜい熊本市、北九州市まで伸びるくらいです。それでも、私は県庁所在地居住ですから九州の中では恵まれた方だったとは思います。しかし、地方であればあるほど、地元でそのまま勤務できる可能性は低くなります。
私は、もし最終合格すれば福岡市に引っ越して勤務する可能性が高くなります。それでも挑戦してみようと、受験申込書を提出しました。
試験は開始前から不備がささやかれていた
2018年の秋ごろに私は今回の試験を知り、受験を迷っていました。試験のことを知っている友人も周囲に数人いましたが、受験はやめておくという人がほとんどでした。私自身も受験を迷っていましたが、受験資格に制約の少ないことを知り、試験の実施を知らない友人に「国家公務員の障害者だけの採用試験があるから、受けてみればいい」と教えていました。
しかし、ほとんどの友人は受験前に尻込みし、受験はやめておくと諦めていました。理由の大半は、「1次のペーパーテストですらわざわざ福岡市の会場まで行かなければ受験できなことが負担」ということでした。
身体に障害のある人であれば、移動は物理的にも大変でしょう。精神の障害なら服薬による体力低下が顕著ですから、通常なら1人で長時間長距離を移動することにも大きな負担がかかります。現地で生活リズムを崩したら、もう受験どころではありません。
服薬管理ができなくなる
およそ毎日、定期的な服薬を日課とする精神障害者の場合、長距離の移動を理由に服薬時刻を変えるわけにはいかない人もいます。たった1回の服薬時刻をずらしたり服用自体を諦めてしまうことで大きく体調を崩す人もいます。
移動において、交通機関が規定する時刻表が最優先される高速バスや新幹線においては、薬を後回しにしてまずは乗車を優先しなければならない場面が増えます。仮に車内で服用したとしても、車内で密集した大勢の乗客に囲まれ一旦緊張のスパイラルに入ってしまうと薬が役に立たなくなることもあります。
受験希望者の弱い立場
福岡市内に到着し、天神の宿泊先に荷物を置いた私は、受験会場の下見に行く途中のJR博多駅構内や地下鉄中洲川端駅構内で、大勢のスーツ姿の障害者らしい人を見かけました。
骨格に不自由のありそうな男性は、ご両親と思われる年配の男性と女性に付き添われて駅構内に貼られた博多駅周辺図を見ながらどう行けばいいのか相談中。ラフなトレーナーやスウェット姿が多数を占める5、6名の集団は、おそらくは地域移行支援施設の職員らしき人に引率されている様子でした。絶対に受験者だと決めつけることはできませんが、基本的に自立を重視する障害者の行動にしては、両親ともに付き添いは、ちょっと大仰だなと思ったのです。
つまりは、交通手段、宿泊先、現地での移動の手配、食事、現地でいつ起きるかわからないトラブルへの対処までを、見知らぬ土地にポンと放り込まれてたった一人で対応できる障害者など、それほど多くないのだと思います。でも考えてみれば、それは障害の有無に関係なく誰でも不得意なはずです。
受験までの遠い道のり
鹿児島県にもいろいろな土地があります。鉄道がまったく通っていない大隅半島の北部山間の人たちがもし受験したら、一体どれだけの経済的、身体的負担を負うのか、想像すること自体つらくなるほどです。それでも、能力の高い人は地域に限らず存在するはずです。
試験を実施する側は、試験問題の難易度だけで受験者の能力を公平に測定することができると思っているのかもしれません。しかし、あまりにも遠い移動を伴う試験の場合、これは試験全般において言えることかもしれませんが、試験会場近辺に居住する受験者が圧倒的に有利であることを知っておいてください。
1次試験本試験、その後の2次面接試験、さらに2次面接解禁前に行われた合同説明会についても、障害者だからこそ大きく差が出てしまう事情に対する配慮の軽さを感じました。自分が障害者の立場になって受験してみなければ分からないような、様々な問題点をたくさん経験しました。
このシリーズは、これから数回にわたって書き続ける予定です。
【応募殺到、反省材料残る 採用後の配慮も課題 障害者試験】
国の障害者雇用水増し問題の早期解決に向けた障害者を対象とする初の選考試験で、人事院は合格者754人を発表しました。https://t.co/GyXv6nu1VP
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) 2019年3月22日