電動車いすでの外出、踏切の横断には細心の注意を!
さまざまな理由から歩行が困難な人にとって、「電動車いす」は自立した生活を送るうえで欠かせないものです。ところが近年、電動車いす利用者の踏切内における事故が増えており、nite(ナイト)が注意喚起を行っています。なぜ事故が起きてしまうのか?事故を防ぐにはどのような注意が必要なのでしょうか?
電動車いす
高齢者や障害者、重篤な疾患などで自立歩行が困難な人が移動手段として利用している「電動車いす」。行動範囲も広がり、自立した生活を送るために便利で欠かせないものです。障害者や難病患者が利用している印象が強いかもしれませんが、高齢者が運転している小型の四輪車も電動車いすです。
「ハンドル型」と「ジョイスティック型」があり、電気モーターによって走行し、ハンドルやジョイスティックを操作することで直進走行や方向転換などを行います。主に手で操作しますが、手が動かせない場合でも足でジョイスティックを操作したり、口やあご、ひたいなどの動かせる部位があれば、その人の体の状態に合わせた操縦法もオプションとして用意されています。息を吹き込むことで操作ができる、ストローのようなスイッチも。
増える踏切内での事故
電動車いすでの事故は、踏切や坂道、段差などの場所で発生してますが、特に踏切内での事故は死亡や重篤なケガを負うなどの被害に繋がっています。2009年度〜2013年度の10年間で、nite(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)に通知があった踏切内での事故件数は16件。その内訳は、死亡事故:11件、重傷事故:4件、製品破損事故:1件でした。
2018年は11月末時点の踏切内での事故は5件発生しており、残念ながらその全てが死亡事故でした。いずれも高齢者で、そのうち2人が利用開始から1年未満でした。
先程発生した西武多摩川線の事故。電動車いすとの衝突でした。乗られていた方の安否が、気になります。 pic.twitter.com/PcglnSyz2h
— トミスケ (@teikouseigyo103) 2017年2月28日
niteは踏切内での事故増加の現状を受け、未然に事故を防ぐため利用者へ注意を呼びかけています。
事故の原因
踏切内で発生した事故の原因については、調査が終了しているものは11件。そのうち、8件が「製品に起因しないもの」、3件が「原因不明」となっています。「製品に起因しないもの」は、電動車いすには異常が見当たらず、不注意や操作ミスが原因であったものと考えられています。
電動車いすの事故を防ぐために
利用者の不注意や操作ミスによる事故ならば、”高い危機意識”を持ち”十分な準備”を行うことで事故を未然に防ぐことができるかもしれません。
例えば、充電をしっかり行い外出中にバッテリー切れにならないよう気を付ける、夜間の外出は控える、操作に不慣れなうちは介助者に付き添ってもらう、など。
踏切での注意点
電動車いすでの踏切の横断は危険が多いため避けることが最善ですが、やむを得ず通行する際は細心の注意をはらって横断してください。
- 介助者に付き添ってもらう
- 踏切の前では必ず一時停止し、左右をしっかり確認する
- 踏切の警報が鳴ったら、踏切内に絶対に入らない
- 踏切内では線路の溝にタイヤがはまらないよう、直角に横断する
- 脱輪しないよう、踏切の端に寄りすぎない
万が一、踏切内で立ち往生してしまった時は自分だけで何とかしようとせずに、落ち着いて周囲の人に大声で助けを求め、非常ボタンを押してもらい脱出を手伝ってもらいましょう。
周囲の通行人で事故を防ぐ
周囲の通行人の協力がより一層の事故防止に繋がります。”補助をして手伝う”とかではなく、踏切を横断する際に電動車いす利用者が通行していることに気付いたら、”無事に渡りきれるかを見守る”だけで良いのです。アクシデントが発生した際に誰かがすぐに気付けることで、重大な事故を防ぐことができます。
もし列車が近付くなか、踏切内で立ち往生している電動車いす利用者に気付いた場合は、ためらわずに非常ボタンを押して緊急事態を知らせ、利用者を連れて速やかに踏切内から脱出してください。ただし、決して無理はせず自身の安全確保も忘れないように。
「非常ボタン、ためらわず押して」。踏切での死亡事故を受けて、京浜急行では非常ボタンのデザインを変更して、活用を促す方針ですhttps://t.co/h5al1NAw0f pic.twitter.com/LjrOB0cund
— 朝日新聞デジタル編集部 (@asahicom) 2017年5月15日
電動車いすは便利である一方で、少しの不注意や操作ミスが命に関わるということも。「いつも問題なく通行できているから大丈夫」といった油断は、重大な事故に繋がりかねません。常に慎重な走行を心がけ、普段から利用する道で危険だと思う場所は自身や家族で確認しておくなど、自分の身を守るための事故防止に努めましょう。