企業だけではない!?社労士が個人のお客様にできるサポート業務とは?
前回の記事では、多くの社労士は企業と契約をして顧問料の収入で生計を立てているものの、「経営者の味方、働く人の敵」ということではなく、経営者・働く人の両方のため、働きやすい会社づくりをサポートする存在であることを説明しました。
今回の記事では、そんな中でも、実は、社労士が個人のお客様のためにサポートできる業務も少なからずあるのだということをご紹介したいと思います。
障害年金の請求
社労士が個人のお客様に対して最もお役に立てる業務の一つは、障害年金の請求です。
老齢年金であれば、一定の年齢に達したら保険料納付要件を満たしている限り、誰でも年金の請求ができます。しかし、障害年金の場合は、障害の状態が、法律で定める障害の等級に該当していることを証明しなければ受給をすることができません。
また、障害厚生年金を請求する場合は、初診日が厚生年金の加入期間(会社勤めをしていた期間)にあった、という「タイミング」の証明も重要になってきます。
どのように障害年金の申請書類を作成し、どのような添付書類を準備すれば説得力があるのかなど、社労士は障害年金の申請をサポートすることができます。
手や足が不自由であるとか、失明をしてしまったというような身体障害の場合は比較的申請をしやすいですが、内臓系の疾患や、精神疾患などは、証明が大変な場合が少なくありませんので、是非社労士に相談をしてみてください。
労災の申請
業務上の事由で怪我や病気になってしまった場合は労災を申請し、療養や休業に対する補償を受けることができます。
通常は会社が労災の申請手続のサポートを行うべきものなのですが、会社に労務に詳しい人がいなかったり、パワハラによる精神疾患などで会社が労災であることを認めていない場合は労災の申請手続が難航します。
そのような場合、社労士は会社にかわり、本人の労災申請の手続をサポートすることができます。
労働紛争
未払い残業や不当解雇など、労働紛争の解決に関しても、社労士は労働者側の代理人としてサポートをすることが可能です。
従来は、労働紛争の解決の代理人になれるのは弁護士だけでした。しかし「特定社労士」という制度ができて、社労士が「紛争解決手続代理業務試験」に合格すると、「特定社労士」と名乗ることができ、労働局のあっせん手続や、これに付随する和解交渉などにおいて、社労士が代理人となることができます。
訴訟や労働審判の代理人は引き続き弁護士に委ねなければなりませんが、その前段階で話し合いによる円満な解決を図るにあたり、社労士が力を発揮することができるのです。
加えて、訴訟の場においても、社労士は弁護士の保佐人として出廷し、法廷で意見を述べることが可能です。
創業支援
個人の方が新たに創業をする際のサポートを社労士が行うことが可能です。
具体的には、円満に現在の会社を退職することや、有給を消化して退職できるのかとか、創業準備期間に失業保険をもらえるのかとか、医療保険や年金はどうすれば良いのかなど、様々な場面でアドバイスを差し上げることが可能です。
創業時や創業間もないときに利用できる助成金や補助金の制度についてもアドバイスができます。
成年後見人
精神障害や知的障害、あるいは高齢により、判断能力の不十分な方を法的に保護するのが成年後見制度です。保護が必要となる方に対して成年後見人がつき、法律行為を代理したり、本人が行った本人に不利益となる法律行為を取り消したりすることができます。
成年後見人は、未成年者は破産者など法律上の欠格事由に該当しなければ誰でもなることができるのですが、実務上は親族や弁護士などの法律専門家がなることが多いです。
この点、社労士も法律専門家の一翼であり、障害を持った方や高齢者の方の生活と密接に関わる年金制度や医療保険・介護保険等の専門家であるため、既に成年後見人として活躍している社労士も少なくありません。
まとめ
現状としては企業側で仕事をすることが多い社労士ですが、このように、個人のお客様に対してサポートができることも様々あります。
個人の方も、何かあった際にはこの記事のことを思い出して、社労士を活用して頂けましたら幸いです。
プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)
大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。
主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど