発達障害者にとって、就労をするということはとても大きな壁である。
日常生活においても不自由することが多いというのに、自分に合わない仕事に就いてしまうと、ミスを多発し「どうしてそんなに簡単なことも出来ないのか」と責められる。
そうして「働きづらさ」を感じ、うつ病などの二次障害を抱えてしまうこともあるのだ。
しかし、発達障害者は何も出来ないわけではない。
必ず、自分に合った仕事……天職があり、それを見つけ出すことが出来れば、そこで目覚ましい成果をあげることも可能である。
大手外資系メーカーに勤務するデータアナリストの岩本友規さん(36歳)もその1人だ。
発達障害には、ADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー症候群、自閉症、LD(学習障害)、自閉症などがあるが、岩本さんの場合は、ADHDとアスペルガー症候群を併発。アスペルガー症候群には意外と多いケースだという。発達障害の人は、一般の人が簡単にできる業務がうまくできず、自信をなくして心身症やうつ病になってしまうケースが多い。岩本さんの場合もそうだ。前職では向いていない仕事に苦しみ続け、うつ病で一年間休職した。
そんな岩本さんは、どのようにして自分の天職を見つけ出したのだろうか。
元々、岩本さんは、半導体商社で働いていた。
そこで、電話番をするよう指示をされる。
ところが、
「お客さんと電話で話していたんですが、メモを取ろうとしてもまったく取れなかったんです。話をしていると文字が書けない。文字を書こうとすると話が耳に入ってこない。電話番くらい普通にできると思っていたので、ショックでした。」(岩本さん)
大学時代に講義をノートにとることはまったく問題がなかった。岩本さんの場合は、聞いて書くか、聞いて話す、どちらか一方しかできないのだという。
これが、岩本さんが初めて「働きづらさ」を感じた瞬間だという。
営業部に所属していた岩本さんは、それからも幾つかの会社を転々とした。
そうして転機となったのは、大手通信会社からスカウトが来たことだった。通信端末を仕入れる購買担当という、最初の会社での業界知識を買われての採用だ。
「もともとハイテク機器の開発が目標だったので、この大企業で働くことはチャンスだと思いました。でも皮肉なことにこの会社で働きづらさが一気に開花したんです(笑)。購買担当といってもただ通信端末を買ってくればいいわけではありません。ほかにも業務用パソコンの発注、OA周辺機器の購入、サプライヤとの調整など、多岐にわたる業務をさまざまな人とかかわってこなさなくてはならなかった。まさに苦手な業務のオンパレードだったんです。」
上司から叱られる毎日。
つらくて会社に行きたくなくなり、ストレスが体に出て、通勤電車に乗ると腹痛に苦しむようになった。そうして良い対処も出来ないまま、遂にはうつ病を発症。1年間休職をすることになる。
その後復職をし、数年経って、会社が別の通信会社に買収された。
そのときに新しい産業医の紹介で主治医が変わり、3〜4回の面談の後、発達障害であるということが判明したのだ。
戸惑いはしたが、言われてすっきりした部分もあるという岩本さん。
そこから発達障害やキャリア形成に関する本を読みあさり、自分の適職は何なのか考えた。
「決め手となったのは、チクセントミハイという心理学者が提唱した“フロー”という考え方です。フローとは “時間の感覚をなくしてやってしまうこと”。それがいちばん、幸せを感じる瞬間だということです。そこで、これまでの業務を考えて、“時間の感覚をなくしてやってしまうこと”は何か考えてみた。それが“分析”でした。商品の顧客分析をやっていたときは、とにかく楽しくていつも時間を忘れていたんです。自分のフローはこれだ、と確信しました。」
障害者認定を受けていた岩本さんは転職活動を開始。データ分析ができる仕事を探した。そして1年後、現在の大手外資系メーカーに障害者採用で入社した。世界中に支社を持つ大手企業だ。
その後の岩本さんはどうなったのか。
なんと、入社して1年後、担当分野の予測精度で、社内ランキング世界1位の実績を上げ、所属部署の日本・オセアニア地区2014年第3四半期の優秀賞を受賞したのだ。
岩本さんのように学生のときは気づかず、社会に出て働いて発達障害だと診断されるケースは多いそうだ。
そんな中、
「障害があるかどうかは申告制ですから、おかしいなと思ったら自分で専門家の門をたたくことが大事」
と記事にはあった。
発達障害に起因する働きづらさの感じ方は人それぞれだ。
それでは、どんな感じ方をしたら、相談するべきなのか。
ボーダーラインは、“うつ状態”だと語る。「もちろんうつ状態でなくとも働きづらさを少しでも感じているならば相談に行ったほうがいいと思います。しかし、うつ状態になっているなら赤信号です。すぐに専門家に相談して何らかの支援を受けたほうがいい。」
岩本さんは「支援」や「援助」を受けた後、障害者認定も受けている。
法改正がされ、障害者雇用枠が増加していることもあり、障害への理解を求めながら働くことが出来るということはその理由の1つになるだろう。
岩本さんも「障害者手帳を持っていることを前向きにとらえればいい」と話す。「私も妻子を抱えていますから、待遇に関してはいろいろ考えました。でも働きづらさを抱えたまま自分に合っていない仕事をしていても、苦しいだけで長くは続きません。まずは自分の適職に就くことが大事。そのために障害者枠を利用し、そこで実績を出せれば、次は一般枠で転職するという道もありえるのですから。」
わたしの回りで知る限りは、発達障害の診断を受けて、そうです。の判断が出ても、認める人と受け取らないで、認めない人がいる。
前に、わたしと関わった人は、そうだね。分かっていても認めない。
大人になってからの話し。— 乗っ取られて手の出しようがない‼💦 (@CatMusicke) August 17, 2016
自分の道を歩んでいく中で、発達障害を持っていることを、恥じる必要はない。
この記事の中で、
“自立”を「自分の役割を知り、全うすること」だと定義する。
とあるように、健常者と自分を比較することなく、自分のやれること、そして自分のやるべきことをこなしていくことが最も、重要であるのではないだろうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/91476?display=b
via:東洋経済ONLINE