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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

高齢者運転免許自主返納、東京と地方の異なる事情

高齢ドライバー交通事故、免許自主返納と地方における車の無い生活

高齢者ドライバーによる運転操作ミスが死亡事故を引き起こしています。幼稚園児や小学生など、子どもたちの何十年もの未来が犠牲になっています。

ドライバー自身も事故を起こしたくて起こしているわけではありません。しかし、犠牲になった幼児や子どもたちの命は戻ってきません。

高齢ドライバーが事故を起こす原因は、アクセルとブレーキの踏み間違いなど初歩的なミスがほとんどです。この傾向に歯止めをかけるため、運転免許制度にも若干の変更が加わりました。年をとるごとに運転技能が低下することを前提に、70〜74歳、75歳以上と、ドライバーへの高齢者講習が1998年から義務化されることになりました。認知症の症状を検査し、結果によっては免許の返納が求められる場合もあります。

運転免許自主返納で生じる地方の不便

運転免許の返納が、その後の生活にどのように影響するかといえば、最も大きく影響するのは交通手段です。東京と鹿児島の交通手段を比較して、両者に大きな違いがあることは誰の目にも明らかでしょう。

地方の交通手段

電車、バス、地下鉄の本数や路線の網羅率には雲泥の差があります。もし免許を返納しても、それ以外に選べる交通手段が東京にはたくさんあります。一方の鹿児島は東京に比べれば選択肢が少なく、車がなければ不便な土地です。

さらに鹿児島市以外の県内市町村で、車でさまざまな生活上の用件を済ませてきた高齢者が、とつぜん車という交通手段を失えば大きな不便をこうむることになるでしょう。

削減される路線

鹿児島の鉄道はJRしかないし、そのJRでさえ便利に路線が巡らされているとはいえません。国鉄民営化の後、大隅半島からは宮崎からの日南線志布志駅以外の路線も無くなりました。路面電車も、路線は鹿児島市内の一部2路線のみで、その2路線すら昭和のころから少しずつ路線が減少し現在にいたるものです。バスも次々と便数が減り、いまだにSuicaなど全国共通で使えるはずの交通系電子マネーとの互換性すら整備されていません。鹿児島ではバスの運賃をSuicaで払えないのでご注意ください。

鹿児島市以外の市町村、離島などはさらに不便です。バス路線も少なく、器用に乗り継いで時間を節約しながら自由に移動する手段としては、ほとんど期待できないでしょう。

高齢者講習と並行した交通難民対策

人間の加齢も動物的な衰えである以上、高齢者が認知的な部分で衰えていくのは都会も田舎も変わりません。しかし、75歳で免許を返納し、その後の生活に制約がより大きくかかるのは地方の高齢者です。認知症、または認知症の疑われる高齢者による事故は現実に起きていて、それは防がなければなりません。ですから、当然ですが高齢者講習は必要です。その代わり、地方の高齢者もその土地で快適に暮らせるような政策を、免許返納政策と同時に考えなくてはならないはずです。

高齢者が楽しく活動できる社会

特に問題となっているのは「買い物難民」と「医療難民」です。毎日の食事と医療は、人間が生きていく上で最も重要な項目です。

地方の高齢ドライバー

高齢者の方々が、免許を返納すれば自分の生活が不便になることを知った上で、免許証を自主的に返納するときの気持ちを、何人の政治家が分かっているのか疑問です。地方の市や県が運営するバス路線を充実させることに、日本の年間国家予算およそ90兆円のうち、そのほんの少しだけ余計に割くことはできないのでしょうか。交通安全と高齢者福祉を両立させる予算としても、有効な予算配分ではないでしょうか。

健康な足腰はなによりの宝

福祉は介護を中心に進むものかもしれませんが、健康寿命の観点に立てば、介護にいたる前の健康維持が予防医療と同じく重要です。足腰の健康は、生活のなかで頻繁に体を動かすところから実現するものです。やみくもに何もない土地を黙々と歩くのは若者でも苦痛でしょう。歩くにもモチベーションというものが必要です。さまざまな移動手段を乗り継ぐ中で、歩行距離というのは延びていくものです。

地方の交通弱者問題を東京では議論できない

その一環として、買い物やその他の移動手段が保証されているという安心感、病気になっても病院への移動手段と移動時間が前もって分かっている安心感は、足腰の弱ってきた高齢者にとって、精神衛生上とても重要なことです。

地方行政の負担

これまでも高齢者は介護の対象とされてきましたが、近ごろはその政策も、以前よりさらに行き届いたものが必要とされています。いままで熱心に取り組んできた行政も、市民の複雑多様なニーズが負担となり、高齢者福祉の政策を懸案事項のまま手を付けず放置してしまうことにもなりかねません。予算的にも、地方の高齢者向け交通インフラの整備は、50億円、100億円もの額が必要な事業というわけではないでしょう。

地方は改善をいとわない

日本全国どこか特定の自治体だけでいいから、地方の高齢ドライバーが免許を自主返納しても暮らしやすい街を、実現できないものでしょうか。

地方が自主的に解決策を見つけるための投資として、その第一弾として国が特定の市町村に予算で協力できないか。成功例が出れば同じような問題を抱える自治体どうし、自主的に案を出し合って協力して解決してしまうのかもしれません。その呼び水としての予算だけ、国は用意すればいいのかもしれないのです。

どんな偉大な成功も、最初の一歩は小さなきっかけであることがほとんどです。そのことを、多くの成功者は知っています。

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