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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

精神疾患の記述が40年ぶりに高校保健の教科書に復活

精神疾患の記述が高校保健体育教科書に40年ぶり復活、3月告示文科省新学校指導要領

中学校の教科書から1977年、高校の教科書から1978年に、それぞれ消えてしまった「精神疾患」についての記述が、2022年の教科書から復活することが明らかとなりました。10代後半から20代にかけてが発症のピークなのに、日本の義務教育が精神疾患を教えないことは一部の精神科医からも指摘されてきました。

精神疾患はコミュニティーで考えるべき

3月に告示された文部科学省による新学習指導要領で、今回の記述復活が明らかになっています。

1978年イタリア、2000年豪州、日本は2022年

1978年に日本の教育現場から姿を消した、精神疾患を理解するための教育が、40年以上を経てようやく戻ってきます。イタリアの1978年といえば、「バザーリア法」成立にともなう精神病院の廃止と精神障害者の共同体受け入れ体勢が確立した年です。オーストラリアでは国家的プロジェクト「学校精神保健プログラム」により、2000年を前後する時期から多くの中学高校でメンタルヘルスへの早期理解につなげる「マインドマターズ」が実施されてきました。

以前に、バザーリア法を採用したイタリアと入院治療中心の日本、それぞれの精神科医療について疑問を投げかけた、

バザーリア法が日本精神科医療に突きつけた40年間の空白

のような記事を公開しています。合わせてぜひ、お読みください。

教育は当然

2018年に文科省で決定した教科書への記述が、2022年に復活します。決定から4年待つ理由は、国民への周知や教科書の発行準備などに時間が必要だからでしょう。しかし本来なら、教科書で精神疾患を取り上げること自体は画期的な変革などではなく当たり前のことです。今まで40年間、行政に動きの無かったことの方に問題意識が向けられるべきです。

精神疾患教育が教科書から外されて44年

18歳までに、5人に1人がうつ病など何らかの精神疾患の症状を経験すると言われています。重度精神障害と見なされる統合失調症患者でさえ、100人に1人存在すると言われています。

数字で見る精神疾患

100人に1人ならば、繁華街のスクランブル交差点を1回横断すれば、2、3人の患者にはすれ違っているという計算になります。日本人の自殺者は、年間約3万人とのデータが出ています。命を守るための教育機会を提供することは、国が取るべき最低限の対策だといえるでしょう。

ようやく始まる

本来きわめて重要な、精神疾患に対する教育が1978年に中止され、復活するまで2022年まで待ったという事実は、率直に言えば「遅すぎ」です。

その44年間で、どれだけ多くの当事者が苦しんだか想像するだけで胸が苦しくなります。障害者を差別してきた過去の事実も消えるわけではありません。今年発覚した、障害者雇用の不正、障害者雇用条件記載条項の内容的差別など、探れば次々とボロが出るありさまです。精神障害者も含めた障害者、健常者(両者を分けるこの表現もいい加減どうにかならないものか)、誰もが同じ権利を持ち自由に参加できる社会を実現するためにも、今後中心となっていく学生世代への教育には完璧な内容を要求したいと思います。

学生の知識の集約、教科書

1978年当時と現在とを比較すれば、日本の精神科医療は大きく変わりました。治療は隔離から共存へと向かっています。治療薬の副作用は格段に低く抑えられ、病巣に特化して作用する薬剤が研究され、開発が進んでいます。

教科書復活で求められる教員レベルの向上

文部科学省が精神疾患の記述を復活させることが、中央省庁による障害者雇用率水増し問題への帳尻合わせという勘ぐりは、根拠のないこじつけかもしれません。それでも、障害者の中でもさらにマイナーな存在として知られる精神障害者を、学校が授業で扱うことは、障害者の社会的共存に新たな息吹を吹き込むことになるでしょう。これからさらに必要となることは、教える側である教員の知識や授業レベルの向上となるでしょう。

バザーリア法の1978年と教科書復活の2022年

イタリアがバザーリア法で改革を目指した一方で、教科書から「精神疾患」の文言を消した日本精神科医療への反省が「いまさら」ながら実行されたように思います。健常者の方々は、精神障害者を目にすることで大いなる違和感を覚えるだろうと思います。発達障害者の言動が、時と場所を異にすることでつじつまの合わない場面にも遭遇するでしょう。日本人は今までそういった、自分と違うものを即切り捨てる文化を作ってきました。これから未来に向けて社会の中心を形成していく若い世代が、自分たちに与えられた未来の社会をどのようにとらえ障害者と共存していくのか、興味の尽きることはありません。

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