テレワークで広がる障害者や難病の方の雇用の可能性
昨今のIT技術の発達には目覚ましいものがあります。IT技術の発達によってテレワークが身近なものとなってきました。まだまだ大企業が中心ですが、多様な働き方やワークライフバランスの実現のため、テレワークを導入する企業も増えてきています。
テレワークに期待されること
テレワークは、ワークライフバランスだけでなく、障害者雇用の拡大という観点からも期待が持たれています。テレワークの大きなメリットの1つは、通勤が無いことです。
障害者雇用の機会拡大
たとえば、脚に障害を持っていらっしゃる方は、通勤に困難が伴ってしまう場合が少なくありません。また、法律で合理的配慮が求められることになったにせよ、全ての会社がすぐにオフィスをバリアフリー化することは難しいといえるでしょう。
自宅と会社をオンラインでつないで仕事をすることができるテレワークは、間違いなく障害を持つ方の雇用の間口を広げることになりますし、テレワークを導入すること自体が合理的配慮であるとも言えるでしょう。
難病患者の雇用
また、テレワークは障害者の方だけでなく、難病の方の雇用にもつながります。難病の方が自宅療養をしながら無理のない範囲で仕事に向き合ったり、場合によっては入院している病院でテレワークを行ったりすることもできます。
無理は禁物ですが、がんなどで入院した患者の方のスムーズな職場復帰を念頭に、病院内に「職場復帰コーナー」というサテライトオフィスを設定する事業を厚生労働省も検討しているということです(平成29年4月28日「多様な働き方の推進について~テレワークの推進~」)。
テレワークの導入の方法
テレワークを導入するにあたっては、3つの観点から準備が必要です。
インフラ整備
第1は、インフラの整備です。テレワークを行うためには、インターネットを経由してコミュニケーションをとったり、資料を共有したりするための様々なツールが必要になります。現在は、こういったツールはクラウドサービスとして1ID数百円というような料金で安価に提供されていますので、企業にとって大きな負担となることもありません。
具体的には、テキストコミュニケーションのためのチャットワークやSlack、音声コミュニケーションのためのSkype、ファイル共有のためのGoogle DriveやDropboxなどが挙げられるでしょう。
ルール整備
第2は、ルールの整備です。テレワークの実施に関するルールを作成し、円滑にテレワークが行えるよう仕組みを整えておかなければなりません。始業時刻や終業時刻をどのように記録するのか、残業代はどのように計算されるのかなど、法違反が無いことはもちろん、働く人が安心してテレワークに従事できるようなルールを作成する必要があります。
社員教育
第3は、社員教育です。テレワークを行うためにインフラやルールを整備したとしても、社員がそれを理解していなかったら元も子もありません。IT機器の使い方や、テレワークに関するルールがどうなっているのかという点について、社員にしっかりと教育をする必要があります。テレワークは周囲の理解もあって円滑に行うことができるものですから、テレワークに従事する本人だけでなく、同僚や上司も必要な範囲で教育研修を受けることが望ましいです。
まとめ
テレワークを行うことで障害者の方や難病の方が働く可能性が広がり、「支えられる側」から「支える側」に回ることができる機会も増えてくるはずです。
「福祉から自立へ」というキーワードが最近はあちらこちらで聞かれるようになりましたが、テレワークを通じて1人でも多くの障害者の方や難病の方が労働市場へ参加できるようになれば、少子高齢化が進む中でも、日本の経済や社会は力強さを維持し、発展していくこともできるのではないでしょうか。
プロフィール
榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)
大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。
主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど
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