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2018.10.10:フリーペーパーVol.31発刊!

社労士が説明する「中央官庁の障害者雇用率水増しは何が問題だったのか」

中央官庁の障害者雇用率水増しは何が問題だったのか

中央官庁での障害者雇用の水増しが大きな社会的批判を浴びています。報道されているところによると、水増しが行われたのは中央官庁の約8割にも達するということです。

中央官庁が障害者雇用に関し不正を行っていたということは多くの国民が知るところとなりましたが、具体的にどのような法律に対し、どのような違反を行ったのかということを明確に理解している人は少ないかもしれません。

そこで、本稿では、障害者雇用のルールと、今回の事件に当てはめて、何が問題だったのかということを説明していきたいと思います。

障害者雇用促進法のルール

障害者雇用促進法は、障害者の方の雇用の促進を図るため、企業や公的機関の義務や、障害者の方への公的支援措置を定めた法律です。

法定雇用率

この法律により、企業や公的機関には、規模に応じて一定数以上の障害者の方を雇用しなければならないとされています。具体的には、「法定雇用率」という数字が定められており、雇用する労働者数に法定雇用率を乗じ、雇用すべき障害者の方の数を算出するというものです。法定雇用率は次の表の通りです。

事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.20%
国、地方公共団体等 2.50%
都道府県等の教育委員会 2.40%

たとえば、ある官庁で職員数が2000人だとすると、「2000人×2.5%=50人」となりますので、50人以上の障害者の方を雇用する義務があるということです。

雇用率算出方法

そして、障害者の方を雇用するといっても、所定労働時間の長さや障害の重さは人によってそれぞれですから、下表のルールに沿って、必ずしも1人換算ではなく、0.5人換算したり、2人換算したりする場合があります。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者 1人 0.5人
重度 2人 1人
知的障害者 1人 0.5人
重度 2人 1人
精神障害者 1人 0.5人or1人

雇用している障害者の方の人数の単純合計ではなく、雇用している障害者の方を上記の表に当てはめて換算して法定雇用率を達成していれば合法な状況ということです。

障害者かどうかはどのように判断するのか

さて、ここで問題となるのは、どのような範囲の方を障害者としてカウントして良いのかということです。

障害者手帳

この点につきましては、障害者雇用促進法の別表や、省令、施行規則などで細かく定められていますが、実務的には、「障害者手帳」を持っているかどうかが判断基準となります。

障害者雇用のルール

今回、中央官庁などで問題となったのは、まさにこの点です。架空の障害者の方を雇ったことにするというような完全に悪質なことではないのですが、障害者手帳が発行されるに至らない軽度の障害者の方を法定雇用率の計算に組み込んでしまったことが問題だったということです。

今回の中央官庁の水増し事件の原因は、障害者雇用のルールが理解不足だったことや、障害者手帳を確認せずに障害者枠で雇用してしまったことなどが背景にあるようです。

まとめ

法定雇用率という数字目標を達成することはもちろん大切ですが、数字だけが独り歩きをしてしまってはいけません。

中央官庁の役割

「国として民間の手本になるように何が何でも法定雇用率を達成しなければ」という焦りやプレッシャーが中央官庁にはあったのかもしれません。しかし、数字よりも大切なのは、障害者の方が安心して働ける職場環境づくりの模範例を中央官庁が示すことなのではないでしょうか。

民間企業の模範

小手先の数字のマジックで法定雇用率を無理矢理達成するよりも、時間はかかっても公明正大な方法でこれから法定雇用率をどのように達成していくかのプロセスを示し、それを実行していくことが、本当の意味で障害者の方のためになり、国民の信頼を取り戻し、また、民間企業の模範にもなっていくことだと私は思います。

 

プロフィール

榊 裕葵(ポライト社会保険労務士法人代表)

大学卒業後、製造業の会社の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。その後、社会保険労務士として独立し、あおいヒューマンリソースコンサルティング代表に就任。勤務時代の経験も生かしながら、経営全般の分かる社労士として、顧問先の支援や執筆活動に従事している。

主な寄稿先:東洋経済、DODA、シェアーズ・カフェオンライン、創業手帳Webなど