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2024/3/10:フリーペーパーvol.96発刊!

ツアー体験から鹿児島のユニバーサルツーリズムを考える

南さつま市はユニバーサルツーリズムを推進

さつまのすんくじら(鹿児島の隅っこ)南さつま市がユニバーサルツーリズムへの取り組みを始めて5年。2016年12月には、札幌市・山形市・長瀞町・長崎市とともに、観光庁「ユニバーサルツーリズムのモデル事業実施地域」にも選ばれています。

先日、南さつま市観光協会主催の半端ないまち(サッカー大迫勇也選手の出身地)南さつま市の魅力が詰まったバリアフリーツアーに参加してきました。題して「夏の南さつま市、半端ないツアー2018」。

今回はツアー体験を通じて感じた「鹿児島のユニバーサルツーリズムに見えた未来」について書いていけたらと思います。

ユニバーサルツーリズムとは

観光庁がすすめる「ユニバーサルツーリズム」。誰もが気兼ねなく参加できる旅行のことです。国籍・性別・年齢・障害の有無など関係なく、高齢であろうが、障害を持っていようが、乳幼児連れであろうが、妊産婦であろうが、インバウンドであろうが、どなたでも楽しめる旅行、それがユニバーサルツーリズムです。

車いすを最大6台搭載可能

今回のツアーバスは GSE Corp.南薩観光株式会社の”PREMIUM X LINER”。ユニバーサルツーリズム促進のため、今年5月に導入した車いすが最大6台搭載できる大型ハイデッカーバスリフト付き車両です。

”PREMIUM X LINER”について詳しく知りたい方は…
2018年5月7日、奄美の里(鹿児島市南栄町)にて行われた PREMIUM X LINER 2台における試乗体験・昇降機リフトなどのお披露目会の様子を取材した記事をどうぞ!
『車椅子最大6台!GSE南薩観光の新型観光バス車両を取材!』

夏の南さつま市、半端ないツアー2018

南さつま市のベストシーズンは夏。夏といえば海。ということで「夏の南さつま市、半端ないツアー2018」は坊津の海から始まりました。とても綺麗な景色、澄んだ海。坊津B&G海洋センターでは、水陸両用車いすを体験しました。

水陸両用車いす体験

坊津B&G海洋センターの前の砂浜はまさにプライベートビーチ。砂浜までのアプローチはコンクリートで整備されていて、海ぎりぎりまで車いすで行くことができます。

砂浜を歩きたければ、砂浜用車いす「ランディーズ」で散策もあり!

九州では福岡と坊津の2ヵ所にしかないという水陸両用車いす「チェアボート」。初めて体験しました。この安定感、半端ない!わざと水陸両用車いすを不安定な状態にしようと動いても、海に落ちることは1度もありませんでした。リラックスして海に浮かぶことができました。

水陸両用車いす「チェアボート」を導入した経緯をインストラクターに聞きました。
以前、膝を伸ばすための装具をつけた方がこの海で遊んでいたそうです。膝の装具が濡れないようにビニール袋を膝に巻いて…。ケガをしても、ここまでして海に入りたい、海で遊びたいひともいるんだ。だったら、誰でも安心して海で遊べる道具はないか…そこで見つけたのが「チェアボート」だったそうです。

障害をもっていても、高齢者でも、お子さんでも、泳ぐのが苦手なひとでも、「チェアボート」を使えば「今までちょっと無理かな」と思っていた海あそびを楽しむことが十分にできますよ。

バリアフリー対応!松屋旅館

海で遊んだ後は、地元食材を生かした旬ランチをいただきました。先付け・お造り・揚げ物・煮物・ご飯・汁物・デザートと贅沢なランチ。味も量も大満足。お腹いっぱいになりました。

旅館の雰囲気も落ち着いていて、ランチだけではもったいない、泊まってみたいと思いました。

創業102年の松屋旅館。1階はバリアフリー対応となっていました。旅館のエントランスから客室までの廊下は車いすの方だけではなく、ご年配の方も、お子さんもスムーズに通れるつくりです。

バリアフリールーム、お手洗い、家族風呂もユニバーサルデザインを採用している松屋旅館。ぜひ今度は母を連れて家族で来たいと思います。

ちなみに四代目の若女将に松屋旅館のコンセプトをお聞きしたところ「おじいちゃん、おばあちゃんの家に帰ってきたような感じでホッとして過ごしていただければいいですね」と答えてくださいました。

地場焼酎蔵・萬世酒造見学

焼酎づくりの技を九州各地に伝えたという職人集団「阿多杜氏」「黒瀬杜氏」。2つの焼酎づくりの職人集団の活動地域はともに南さつま市(金峰と笠沙)。杜氏の故郷南さつまでは七蔵がその伝統を引き継いでいます。今回訪れたのは、萬世酒造の展示場併設の工場「松鳴館」。

焼酎づくりの製造工程の見学や試飲ができ、気に入った焼酎があれば購入できます。ツアー参加者もお土産に、自分へのご褒美!?にたくさん買っていました。

「松鳴館」は明治モダンな建物。雰囲気がありました。駐車スペースから玄関エントランスまではスロープがあり、館内もフラット。車いすの方でも無理のない高さに試飲スペースが設置されているのも良かったです。

万世特攻平和記念館

特攻基地といえば知覧飛行場が有名ですが、知覧から西に約15kmのところに万世飛行場がありました。終戦直前の4ヶ月間だけ使われた陸軍最後の特攻基地。旅の最後は万世飛行場跡地の一角に建てられた「万世特攻平和記念館」に行きました。

知覧特攻平和会館ほど広くありませんが、凝縮された感じが良かったです。17、8歳の若い特攻隊員の死を間近に控えた最後のメッセージ、遺品、遺影…語り部のおはなしには目頭が熱くなりました。

玄関エントランスまではスロープがあり、1階2階とも展示物と展示物の間のスペースが十分ありました。車いすでも安心。館内はそれほど広くないので歩く距離は短く、様々な展示物を見ることができます。

鹿児島のユニバーサルツーリズムに見えた未来

鹿児島には、かごしまバリアフリーツアーセンターがあります。ユニバーサルツーリズムの取り組みを始めて5年の南さつま市観光協会があります。ユニバーサルツーリズムを促進するために”PREMIUM X LINER”を導入した GSE Corp.南薩観光株式会社があります。今回の南さつま市のバリアフリーツアーに関わったこの3団体を中心に、鹿児島のユニバーサルツーリズムがもっと成長していけばいいな、と思います。

ユニバーサルツーリズムは、誰でも気兼ねなく参加できる旅行。鹿児島を「誰でも安心して旅行を楽しめるまち」にできればいいですよね。

ユニバーサルツーリズム先進県へ

鹿児島県は、ユニバーサルツーリズム先進県を目指す取り組みを展開しはじめています。その一環として『2018年度版 鹿児島県ユニバーサルツーリズム情報誌』を作成しました。鹿児島県全域の観光スポットのバリアフリー情報などが掲載されています。

『鹿児島県ユニバーサルツーリズム情報誌』きっかけで多くの方が安心して旅行を楽しんで欲しいですね。掲載される観光スポットが毎年増えたり、情報自体がブラッシュアップされていくことも大切だと思います。そして、鹿児島に訪れるひとがどんなニーズをもっているか拾い続けることも必要かと思います。

「夏の南さつま市、半端ないツアー2018」では、南さつま市観光協会の方が再三「参加する皆さんの辛辣なご意見をよろしくお願いします!」と言っていました。

ニーズを拾う、常に学び続ける…この姿勢を貫くことができれば、ユニバーサルツーリズム先進県への道も開けてくるでしょう。

海のアクティビティ

鹿児島の魅力のひとつは「自然」。
特に海。東シナ海・錦江湾・太平洋と鹿児島は3つの海!?に囲まれ、それぞれ特徴の違う海岸線を楽しめます。また、海水浴を楽しめるビーチもたくさんあります。

南さつま市のバリアフリーツアーで体験した水陸両用車いす「チェアボート」は凄く良かったです。坊津の海を満喫できました。高齢者や車いすユーザー、泳げない方、お子さんなど、海で遊ぶことから離れているひとにとって、新鮮で、気持ちよくて、楽しい体験ができると思います。

砂浜用車いす「ランディーズ」と水陸両用車いす「チェアボート」を多くのビーチに置くことで、「鹿児島の海はどこに行っても誰でも楽しめるよ!」そんな他県にはない魅力を1つ、つくることができます。

特別感と自然な感じ

旅には日頃味わえない特別感が必要ですよね。地元食材を使った豪華ランチ、アクティビティ、観光スポット巡り…。満足度を上げるには必須条件だと思います。しかし、ユニバーサルツーリズムには、特別感と同じくらい大切な要素があるような気がするのです。普通の感覚、自然な接し方…うまく言葉に出来ませんが、とにかく自然な感じ。

車いすユーザーをはじめ、障害をもっている方や高齢者などは、特別な目で見られ、特別な接し方をされている感覚があります。もちろん、配慮は必要です。しかし、必要以上の関与は無用かと。自由に、色々(言葉は悪いですが)強制されることなく感じる時間が、旅を楽しむには大切なんじゃないかなと思うのです。

今回のツアーには、ご当地ガイドとともにトラベルヘルパー(外出支援専門員:介護+添乗員の役割をもった資格)も同行されました。経験値と知識・技術をもった方がいることで、程よい距離感で旅を楽しめるのではないかと思います。あと、長野県諏訪地方で主に活動されている「ユニバーサルツーリズム・プラットフォーム&勉強会」が推進している「旅先でのちょこっと介護」ができる人材「地域トラベルサポーター」のような方々もいたらいいなと思います。

最後に

先日体験した、南さつま市のバリアフリーツアーを通じて、「鹿児島のユニバーサルツーリズムに見えた未来」を語ってきました。鹿児島県がユニバーサルツーリズム先進県になるためには、一部の自治体、バリアフリーツアーセンター、観光協会、企業が頑張っても限界があります。横のつながりが必要です。

旅行はもうできない、と諦めていた多くの方が「鹿児島に来てよかった!」と思われるようなまちづくり、観光地づくりをみんなで考えて、つくっていければいいですよね。

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