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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

『おっさんずラブ』『弟の夫』”現代”を映すLGBT作品の紹介

同性愛者が主人公の『おっさんずラブ』、三者三様の家族を描いた『隣の家族は青く見える』。ここ最近ぐんとLGBTを扱う作品が増えたように思います。
今回は、そこからピックアップしてご紹介します。

LGBTまたはGLBTとは…、
男性同性愛者(ゲイ、Gay)、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、トランスジェンダー(Transgender)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、の各単語の頭文字を組み合わせた総称のこと。

熱く可愛く心に響く『おっさんずラブ

女好きだけど全くモテない33歳の春田創一の元に、ある日突然やって来たモテ期。
ピュアすぎる乙女心を隠し持つ おっさん上司 黒澤武蔵と、同居しているイケメンでドSな後輩 牧凌太。
2人の男性からの告白に驚き、全力で拒む春田だが…

「愛とは何か?」をテーマに、同性愛や年齢差などを盛り込み、涙と笑いとときめきと、心にガツン!と訴えるストーリーは多くの方を虜にし、国内外問わず一世を風靡しました。

『おっさんずラブ』の魅力。それは、「人間を描いていること」。
相手を想い、たとえ周りからは滑稽に思われても登場人物それぞれが一直線に想いをぶつける様は、誰だって応援したくなります。
そこには性別の垣根もありません。ただただ1人の男性を巡った人間模様を描いていました。

出てくるキャラクターが皆さん魅力的で、吉田鋼太郎さん演じる武蔵さんが!本当に!可愛くて男前だったのですよ!対して林遣都さん演じる牧の切なげな表情…。そして田中圭さん演じる はるたんのクシャッとした笑顔の可愛さたるや!部長の奥さんである蝶子さんも、好きだったなぁ。
男性陣がわちゃわちゃしてる中、女性陣は皆、自分の目線で自分の言葉を発していて、それもまた素敵でした。
嫌なキャラが1人もいないという安心感。

そして切なさを散りばめつつも、予想の斜め上を行く怒濤のストーリー展開でコメディ要素が強いのがこのドラマの特徴でした。登場人物らの感情や行動に涙しながら笑うという、新しい感覚。
同性愛者が主人公の場合、どうしてもファン層が限られそうですが、今までLGBTに興味の無かった人や親世代も楽しく観ていたというのも、うなづけます。

 

 

 

企業垢の方々のツイートも楽しかったです!

これからDVDやオフィシャルブックも発売されますので、まだまだOL旋風は止みそうにありません。

 

日だまりのように優しく包みこむ『弟の夫

田亀源五郎先生の漫画が原作であり、ドラマ化もされました。

小学生の娘を男手ひとつで育てる弥一の元に、ある日カナダ人の男性・マイクが訪ねてくる。
弥一には双子の弟・涼二がいたが、カナダへ移住してからは絶縁状態となっていた。マイクは涼二の訃報と共に、自分は”弟の夫”、つまりは同性婚の相手だと伝える。
しばらく滞在することになったマイクだが、弥一はゲイへの偏見がぬぐえず…。

相手を認めること」を丁寧に描かれているのが、この作品。
突然やって来たマイクという存在。自分の弟が同性愛者であること。誰だって、突然そんなことを告げられたら、とまどうことでしょう。
最初は困惑していたものの、マイクと生活を共にすることで少しずつ彼と打ち解ける弥一。逆に偏見を知らないからこそ、最初からマイクになつく娘である夏菜。

特に印象に残っているのがドラマの最終話で描かれた、夏菜の忘れ物を届けにマイクが学校へ行くシーン。
「おじさんの旦那さんが家に来ている」と話していた夏菜。実際にマイクの姿を見た担任の先生は、その後 弥一を学校へ呼び出します。
「このままだと夏菜さんは浮いてしまい、いじめられるかもしれない。」
そう告げた先生の言葉は生徒への心配だと信じており、偏見だとは微塵も思っていません。
そこで弥一は、先生に伝えます。
「もしも夏菜がいじめられるのなら、先生には夏菜ではなく、いじめる側に話を聞いて欲しい。」

同性愛者という存在を「認める者」「憧れや幻想を抱く者」「認められない者」
先生への言葉に対して弥一は、「じゃあ、マイクを学校へ招いて理解してもらおう」とは提案しません。
当初、偏見を持っていた弥一だからこそ、マイクと過ごす内に、マイノリティーに対して人によって様々な見解を持つのだと気付いたからです。
弥一の言葉は、そういう様々な見解を持つ人たちを一緒くたに考えていないからこそ出てきたのではないでしょうか。

偏見や差別意識は持っていたって良い。
けれど、それを相手にぶつけてはいけない。
ただ、「そういう人もいる」ということを知ること。

ゆったりとした時間の中で少しずつ打ち解けていき、弥一とマイクと夏菜が一つの「家族」になる様を、ひたすら優しく描いたこの作品。
LGBTに興味ある人も無い人も関係なく、多くの方に触れて欲しい作品です。

 

 

多様性を謳う現代だからこそ読みたい『しまなみ誰そ彼

「お前、ホモ動画観てたん?」
夏休みの2日前、クラスメイトにホモ動画を観ていることを知られた たすくは、自分の性的嗜好が知られたのだと恐れる。その矢先、高台にある家の窓から1人の女性が飛び降りる瞬間を目撃し、助けを求めに向かった先には「談話室」と呼ばれる一軒家が建っていた…。

談話室に集まるのは老若男女さまざまで、共通するのは「性的少数者」であること。
同性を好きになったけれど世間の差別を恐れ、少しでもバレるようなことがあれば自らゲイを馬鹿にしてしまう たすく。
けれど、談話室にいるメンバーは、当たり前のように自分自身の姿で過ごしていました。
人と違うことを誰も咎めない世界。だけど中と外では、その世界が違います。
談話室では「自分」が認められていても、外では異質として見られている。
それらが描かれるシーンは、正直読んでいる側も辛くなります。
その中で、彼らが関わる空き家再生事業。
古い家を壊す描写は、世間の風潮や価値観に風穴を入れるようで、見ていてスカッとします。
誰にも言えない。けれど、誰にでもあるモヤモヤを抱えながら生きていくこと。
「普通」ではなく、「自分自身」として生きる生きにくさ。
多様性を謳いながらも、少しでも人と違うものが見えれば咎められる。そんな現代社会だからこそ、彼らの行動や言葉はハッとさせられます。

「私が私らしく楽しく 元気に生きてるってこと見せてくほかに、私は私を 伝えようがないもの。」
「誰かの背中を押す時は 押す力と同じだけ 覚悟が要る。押すタイミングの正解は 誰にもわからない…」
「悪意とは戦えるけど、善意とは戦いようがないもん。」

これらの言葉は作者である鎌谷悠希さん自身が、男性でも女性でもない性別の立場をとる”Xジェンダー”であり、また、男女とも恋愛対象にはならない”アセクシャル”という当事者だからこそ紡げるのかもしれません。

自らを殺して、自分は普通なのだとふるまう瞬間。
笑っている間も、他人の何気ない言葉で傷つく瞬間。
そして、自分自身も他人を無意識に傷つけている瞬間。
それらはLGBT関係なく、生きていく上で誰でも遭遇する瞬間ではないでしょうか。

ページを捲る度に たすくくんの出会いや心の成長が、少しずつ読者自身へと染みこんでいく感じは、マンガだからこそ得られるのかもしれません。
話の合間に描かれる尾道情報も楽しく、ちょっと心を休ませたい時の処方箋にオススメの作品です。

ところで物語の冒頭、たすくが出会った女性「誰かさん」。
談話室のオーナーでもあり、内職に勤しむ彼女は、空を飛んだりと自由自在!
誰かさんの描写だけ妙にファンタジーなところも気になります。彼女は一体、何者なんだ!

 

 

 

 

 

LGBTを扱うと、とたんに作品全体が重く感じて手に取りにくい方も多いのではないでしょうか。
けれど、彼や彼女らの悩みを自分で置き換えれば、身近に感じることができます。

自分は多分 異性愛者ですが、明日には同性の方に恋をしているかもしれない。それは自分自身にも分かりません。そして気づいていないだけで、身近な人にも当事者はいるかもしれない。
だからこそ、もしも「誰にも打ち上げずにいること」を抱えている人が、そのことについて話してくれた時。「そうなんだ。」と、そこだけに過剰反応せずにその人自身を認められる人間に、わたしはなりたいです。

ところで、車いすユーザーが出てくる作品も そろそろ出てきて欲しいんですよね。
主人公じゃなくていい。主人公の友達でも脇役でもモブでもいい。
お涙頂戴感動系ではなくて、当たり前に生活している車いすユーザーが描かれていればソレでいい。
障がいとか色んな垣根を越えた登場人物らが、みんなでゲラゲラ笑って泣いて怒って、わちゃわちゃしている作品を!どうか宜しくお願いします!

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