総合診療(プライマリ・ケア)を信条とする医師、森田洋之先生に質問してみるコーナー第2弾は、現在猛威を奮っている「インフルエンザ」について特集する2回目です。
※「インフルエンザ治療について1―診断キットで陰性でも診断書や薬をもらえるの?」はこちら
いま、全国的にインフルエンザの患者さんが急速な勢いで増えています。薬と免疫の関係や、薬の上手な飲み方って、一体どんなものなのでしょう?
今回は、インフルエンザの治療についてお話しいただきました。
インフルエンザは免疫で駆除されるの?
名人「インフルエンザなのに薬を飲まなくていいというのは本当ですか?それは、どういうことでしょう?」
森田「薬を出さないというのも、ケース・バイ・ケースです。もちろん、私も薬を処方することは多いのです。しかし、すべての例で、という訳ではないということです。そもそも、インフルエンザの薬というものは、インフルエンザウイルスを殺してくれるというよりも、体のなかで増殖するのを防いでくれる、といった働きが期待されるものです。
インフルエンザのウイルスは、感染してから体内で万〜億単位で増殖するとされています。これがピークに達するのが、大体症状が出てから2日、48時間後くらいです」
名人「億単位とは、すごい増殖力ですね」
森田「そうですね、でもご安心ください。体内の免疫系統が健康に働いている人、つまり、普通に生活している元気な人であれば、その後、体内の免疫細胞さんたちが一気にウイルスをやっつけてくれます。そして、急速にウイルスは減っていきます」
名人「そうなんですか!それは、薬を使わなくてもいいという、お話ですか?」
森田「そうです。薬を使わなくても、普通に生活している人なら、体に自然に備わった免疫系統がきっちり働いてくれます。ウイルスをやっつけるのは薬ではなく、あくまで自分の体に備わった免疫力なのです。あらかじめワクチンを打っておけば、免疫力はより強力に働いてくれるでしょうね」
名人「う~ん、では、薬は要らないですね…」
森田「まあね。でも薬も使いようです。タミフルとかリレンザなどのお薬は、ウイルスを殺してくれるわけではなく、増えるのを抑えるんだ、と言いましたよね。つまり、殺すのではなく、増えなくする。ですので、薬が活躍できるのはウイルスが増えてる時、発症時から大体2日=48時間まで、この時期なら有効ですよということなんです」
森田「そうそう。逆に言えば、その2日を過ぎていれば、薬の効果はあまり期待できないのです」
森田「そうなんです。なので、受診時にすでに2日以上経っていて、症状も回復傾向、という患者さんの場合、場合によっては薬を飲まないという選択肢だって『あり』なんです。だって、薬飲んでも結果はあまり変わらないと予想されるわけですから。あとはゆっくり休んで、自分の体内の免疫がウイルスをやっつけてくれるのを待てばいい、ということなんです」
名人「でも、せっかく病院まで行ったのに薬が出ないというのも…」
森田「ま、そう言われる方も多いですよね。医師としっかり話し合って決めればいいと思いますよ。…あ、あと、こう言う説明をすると、『あとは免疫でいいや』って、3日くらいで薬やめちゃう人がいますが、タミフルなどの薬は飲み始めたら5日間続けたほうがちゃんと効くといわれていますから、気をつけてくださいね」
名人「だんだん分かってきました。それでは、その2日の間に薬を飲み始めたら、どのくらいの効果があるのでしょう?」
薬は発熱期間をどれくらい短縮してくれるの?
森田「そうですね。これも一概には言いにくいんですが、平均的には『熱で辛い期間を半日〜1日短縮してくれる』という感じで表現されることが多いと思います」
名人「『半日〜1日短くしてくれる』か、……普通に元気な人なら薬飲まなくても治る場合もあると…微妙な数値ですよね。私なら病院に行かないかもしれません」
森田「そこは自己判断でいいと思いますよ。でも、まあ確かに得られるメリットとしては、ビミョーかも…。ですけど、その短縮される1日が、その人にとっては貴重な1日かもしれないですからね〜。」
名人「受験生とか、仕事を休めない人とかもいますから」
森田「そうです。あと、重症化リスクの高い、ご高齢で体力が衰えてる方とか、免疫抑制剤を飲んでる方、元気だけど肺に病気がある方、あと超高齢者とか妊婦さんとかね。こういう方々には薬を積極的に飲んでもらうこともあります。でも、そうでない普通に元気な人たちはインフルエンザの薬を処方しないこともある、そういうことですね」
名人「結局、インフルエンザもケースバイケースですね。お医者さんもその場その場で正解を探しているのですね」
森田「そうですね。あともう一つ基本的なことを追加しときましょう。最近の研究では、インフルエンザウイルスは、結構その辺にいっぱい居そうだと言われています」
(「インフルエンザ治療について3」へ続く・1月18日公開予定)
医療崩壊のすすめ?
財政破綻により病院がなくなってしまった夕張市、
しかも高齢化率は市として日本一。
果たして夕張市民の命はどうなってしまうのか?‥。
しかし財政破綻後のデータは、夕張市民に健康被害が
出ていないことを示していた。
事実、夕張市民は笑顔で生活していた。
「病院がなくなっても市民は幸せに暮らせる! 」
それが事実なら、それはなぜなのか?
本書は、その要因について、先生(元夕張市立診療所所長)と
生徒2人の講義形式でわかりやすく検証してゆく。
夕張・日本・世界の様々なデータを鳥の目で俯瞰し、
また夕張の患者さんの物語を虫の目で聴取するうちに3人は、
夕張市民が達成した奇蹟と、その秘密を知ることとなる・・。
少子高齢化や財政赤字で先行きが不透明な日本。
本書は、医学的・経済学的な見地から
医療・介護・地域社会の問題を鮮やかに描き出し、
日本の明るい未来への処方箋を提示する希望の書である。
森田洋之 著
森田 洋之
医療・介護のご相談や困りごとを募集しています
Dr.森田の医療・介護お悩み相談室では、
皆様からのご相談や困りごとを募集しています。
以下のサイトにアクセスし、フォームに必要事項を入力してください。
全てに応えられるわけではありませんが、
出来る限り多くの皆様のご要望にお答えしたいと思っています。
Contact – 南日本ヘルスリサーチラボ