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2024/12/10:フリーペーパーvol.105発刊!

わかりやすい「障害者差別解消法」入門

わかりやすい障害者差別解消法

相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指し、「障害者差別解消法」 が今年4月から施行されます。この法律は不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めているものです。障害者差別解消法とは、どのような法律なのでしょうか?

<対象となる障がい者は?>
障害者基本法 第2条で定義されているように、障害者手帳の有無を問わず、障害や社会的障壁により日常生活や社会生活に相当な制限を受けているすべての人を対象にしています。

 

Point_1|不当な差別的取扱いの禁止

(※内閣府発行のリーフレットより引用)
役所や企業・お店などの事業者が、障害のある人に対し、正当な理由なく障害を理由として差別することを禁止しています。

Point_2|合理的配慮の提供

(※内閣府発行のリーフレットより引用)
国・都道府県・市町村などの役所や企業・お店などの事業者が、障害のある人から「社会の中にあるバリア(社会的障壁)」を取り除くために何らかの対応が必要だという意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することを求めています。

障害者差別解消法

合理的配慮のルーツを探る

アメリカでは合理的配慮(reasonable accommodation)という文言が判例に残っていたりします。長い間、一定の理にかなった措置や調整を意味する熟語として広く用いられてきましたが、1982年にはリハビリテーション法の施行規則にこの「合理的配慮」が登場し、その後1990年に「障害を持つアメリカ人法(ADA法):Americans with Disabilities Act of 1990)」で明確に定義されました。

 

ADA法の4つの柱

Title I ▶ Employment (雇用)

Title II ▶ Public Services (公共サービス)

Title III ▶ Public Accommodations (公共施設での取扱い)

Title IV ▶ Telecommunications (電話通信)

 

「はたらく」をテーマにしている本コラムでは「Title I Employment(雇用)」について深く見ていきたいと思います。この「Employment(雇用)」では、一定の公的機関や民間企業(従業員15人以上)で雇用時に身体や精神の障がいを理由とする差別的取扱いを禁止しています。この定義の第9項には「合理的配慮」について次の通り定義されています。

 

(A)設備を利用可能なものにすること
(B)求職にあたっての介護機具の調整、訓練のための器具や政策の適切な調整と変更、資格を有した読み上げ人や通訳の配置

 

※この内容は国連の障害者権利条約の第2条における「合理的配慮」にも影響を与えました。

※「障害者権利条約」は2006年12月に国連総会で採択されました。日本は国内の障害者制度を充実させ、2014年1月20日に批准しています。

 

働きづらさの原因はどこにある?

障がいや難病を持つ方の感じる「働きづらさ」とは何かを考えていきます。「働きづらさ」について、これまでの考え方は障がい者が持っている個人的な性質(機能障害)から生じるものと考えられてきました。働き方の通念やルールは大多数によって定められます。オフィスなどの建築構造物や通勤に必要な交通インフラなども同様です。これらは前提条件として、健常者が使えるものとして設計されてきました。だからこそ、それらを使えない・使いづらい理由は障がい者の持つ個人的な性質が原因だと考えられてきたわけです。

 

障害の社会モデルとは?

前述したように機能障害が原因で「働きづらい(不利である)」と考えることを「障害の医学モデルの考え方」と言います。では、世界に目を向けてみましょう。本コラムでも数回取り上げている国連の障害者権利条約では「働きづらい(不利であること)」の原因は機能障害のことを考えないでつくられた社会のしくみ「社会的障壁」にあるとされています。この考え方を「障害の社会モデル」と言います。これがグローバルスタンダードの考え方であり、日本でも既に障害者基本法第2条の定義に取り入れられています。

 

そもそも、「合理的配慮ってナニ?」というあなたへ。

障害者一人一人の必要を考えて、その状況に応じた変更や調整などを、お金や労力などの負担がかかりすぎない範囲で行うことが、合理的配慮です。合理的配慮の提供には、「対応要領(たいおうようりょう)」と「対応要領(たいおうししん)」の2つがあります。合理的配慮は公的機関は「義務付け」に、事業者は「努力義務」になっています!

<対応要領>
障害者差別解消法は国に対して「差別的取扱いの禁止」及び「合理的配慮の提供」を法的義務として課しています。具体的な対応をまとめたものが「対応要領」です。役所で働く人は、この対応要領を守って業務を行います。都道府県や市町村などは対応要領を作ることに努めることとされています。

<対応指針>
事業を所管する国の役所は、その事業を営む企業やお店が適切に対応できるように「対応指針」を作ることとされています。企業やお店が法律に反する差別行為を繰り返し、自主的な改善を期待できない場合は報告の提出や注意を受けることがあります。

 

障害者差別解消法によって変わる「はたらく」

雇われる時
障がいを理由に雇用の機会が失われることは差別になります。職場の合理的配慮があれば問題なく働けるという場合は障がいを理由として不採用にされることはなくなります。しかし、業務における最低限必要条件(実務経験や資格など)を満たしていない理由で採用されない場合は差別になりません。

社員になってから
障がいを理由にした部署などの配置、不当に安い給与、降格などの不利益な取り扱いを受けた場合は差別になります。会社側も障がい者を配置する業務と、障がい者を配置してはいけない業務とを分けたり、障がいを理由に正社員で雇わない、普通なら昇進できるのに昇進させない、また、解雇や降格対象者の中から、障がい者を優先して解雇や降格するなども差別となりますので、合理的配慮を行いながら就労ルールを組み立てる必要があります。

 

未来を考える

障害者差別解消法によって、「働らきづらさ」の原因となっていた社会のバリアが取り除かれていくでしょう。これは長い間、差別や不当な扱いを受けてきた障がい者にとっては悲願ともいえます。合理的配慮の考え方も社会ルールとして普遍的なものになっていけば、個性によらず共生できる社会に近づいていくことでしょう。これらを踏まえて、もう一歩深く考えてみましょう。

障がい者は自分の障害については熟知していますが、自分とは異なる障害についての見識や理解度は、多くの場合、健常者と変わらないレベルだとも言えます。社会のバリアが取り除かれることで、一つの職場に様々な障害をもった複数の障がい者が配置されることもあるでしょう。

障がい者は障害者差別解消法によって「合理的配慮をされる側」ですが、複数の障がい者が混在する職場においては「合理的配慮をする側」になる可能性もあります。合理的配慮の必要性を感じてきた障がい者自身が「配慮されるだけでなく、率先して配慮していく」ことで、社会における合理的配慮のボトムアップにつながる可能性が高いのではないのでしょうか?

 

引き続き、取材・レポートして参ります!

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