障害者就労継続支援A型事業所で、また多くの利用者が解雇されてしまいました。
今回は、広島県福山市曙町にある、一般社団法人「しあわせの庭」が運営する2ヶ所の事業所。11月17日(金)をもって閉鎖されました。
パンやポップコーンを製造販売していた「しあわせの庭」(福山市)では67名、食品包装材加工などの軽作業をしていた「しあわせの庭 鵜飼事業所」(府中市)では45名、合計で112名の利用者が解雇されました。
今年7月に、一般社団法人「あじさいの輪」とそのグループ会社が運営する岡山県倉敷市と香川県高松市の7事業所が閉鎖され、283名が解雇。また、8月には、株式会社障がい者支援機構が破産を申請し、愛知県名古屋市と清須市、埼玉県、千葉県、大阪府にあった6事業所を閉鎖、153名が解雇されました。
この2例に続く、今年3例目の100名を超える規模の一斉解雇。
「しあわせの庭」は、開所時から経営が厳しく、補助金頼みの経営だったことを認めています。また、パンの製造販売事業の低迷が続き、金融機関からの資金調達が困難になったとも。勤務時間の短縮などで事業継続を模索しましたが、継続不可能と判断して閉鎖に踏み切ったとのことです(10、11月の賃金は未払い)。
代理人の弁護士は、自己破産を申し立てることを明らかにしています。
利用者や家族からは、「突然の解雇はひどい」「行政はもっと早く情報を出すべき」「全く生活の見通しが立てられない」「説明を聞いても、障害者のことを考えているとは思えない」などの声が…。
4月から施行された障害者総合支援法の一部改正により、利用者の賃金を自立支援給付金や、特定求職者雇用開発助成金などの補助金から出すことが原則禁止となったことが大きな要因と考えられています。
就労継続支援A型事業所に関して、様々な問題が浮き彫りになってきています。
A型閉鎖、北海道でもハイペース
北海道では今年度に入って(10月末日まで)、14事業所が閉鎖しています。過去最高だった1年間20事業所閉鎖を上回るペースです。国が事業所に支払う補助金の支給要件の厳格化が背景にあると言われています。
一方的な解雇に対して、札幌市では、解雇された障害者5名と元従業員が地位確認と慰謝料を求めて、事業者を札幌地裁に提訴しているという例もあります。
A型を「儲かる事業」と宣伝していた事実も
8月に破産申請した、株式会社障がい者支援機構(愛知県名古屋市)は、コンサルタント事業も行っていました。「国の給付金で…潰れることのない経営」「年間3,000万円以上の利益も狙えます」などの謳い文句で。
補助金目当て!?悪しきA型!?
A型事業所には、障害者一人につき一日5,000円の給付金、特定求職者雇用開発助成金(特開金)という国からのボーナス(就職が難しい重度の障害者を雇うと、一人当たり最長3年間で最大240万円が支給される制度)が支給されます。
それをよいことに、本業の利益を増やす努力をせず、この補助金で事業所を運営、酷いところになると、実質的な事業をしない事業所も。特開金目当てで、A型では働くのが難しい重度の障害者と雇用契約を交わしていた例もあったとのことです。
利用者がつらいだけ
全国で約3,600カ所あると言われるA型事業所。甘い考えで参入した事業所もあると思います(もちろん、真摯に取り組んでいる事業所がほとんどだと思いますが…)。
悪しきA型事業所は、廃業した方がいいとは思います。しかし、そこには、多くの利用者が働いているのも事実です。「補助金ビジネス」に走っていた事業所は、真っ当な考え方に方向転換して、どうにか利益を確保できる事業所に変貌して欲しい…それが願いです。
株式会社の参入など、門戸を広げた2006年から11年。今年4月の厚生労働省の規制強化により、収益を出せない事業所は窮地に追い込まれています。
今の状況での規制強化は得策なのか…いささか疑問です。
補助金頼みのビジネスを作ってしまった原因は国にもあると思います。A型事業所運営に参入する経営者を最初にしっかり識別できなかったことが大きいのではないかと。
こうなってからA型事業所の首を締めても、苦しむのは最終的に利用者だということも考慮して欲しいものです。
改善策は成功している事業所を参考に
A型事業所閉鎖、利用者解雇の流れを止めるには、成功している事業所を参考にすること(真似をするわけではなく)に尽きるのではないか、と私は思います。
A型にこだわらず、障害者を雇用していて経営的に成功している、今までにない視点で取り組んでいる、働いている方々がイキイキしている事業所。今、思い浮かぶのは、日本理化学工業(神奈川県川崎市)、ラグーナ出版(鹿児島県鹿児島市)、恋する豚研究所(千葉県香取市)、カフェレストラン ほのぼの屋(京都府舞鶴市)、久遠チョコレートです。まだまだ、工夫している魅力的な事業所は全国にたくさんあると思います。
成功している事業所を参考にするのと同時に、何を主の事業に据えるのかを決めたら、その分野のスペシャリストをスタッフに(スタッフとして雇用することが無理なら、定期的に教えを請うなど)したり、営業のノウハウを学んだり、利用者の特性を見抜くスタッフを雇ったり…。まだまだ、できることはあると思いますし、動かないと今のままでは廃業への道を歩むことになってしまう事業所も多いのではないかと思います。
運営に問題があると指摘を受けた事業所は自治体を通じて「経営改善計画」を提出しなければなりません。この計画書の「どのように改善するか」の欄を埋められず閉鎖したところもあると聞きます。
厚生労働省は「A型事業所は、障害者が地域で自立した生活を送るために公金を投入しており、事業者のための事業ではない」とのコメントを出しているようです。
ごもっとも、と思うと同時に、障害者の自立を謳うのであれば、もっと具体的に改善例を提案し、もっと真剣に現状を受け止め、もっと現場を見て欲しい、障害者の生の言葉を聞いて欲しい…そう思います。
事業所を運営する方々にも、自分たちだけで物事を決定しないで、利用者としっかり話し合って、一緒に事業所を盛り上げて欲しいと思います。
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