自然な死を避け、命を永らえる技術が医療の世界で可能となってきました。
一方、延命治療を望まない意思を、意識の明らかなうちに文書で残す動きも出ています。
「延命中止」は、医療現場でこれまでタブー視されてきたものです。回復の見込みの無くなった患者の看護に、家族が多大な負担を強いられる例も明らかになってきました。
患者側からも、自分が家族に余計な負担をかけることを嫌い、事前に延命治療の拒否を伝える動きもあります。
これは、10年前であれば殺人事件として起訴されかねなかった問題です。
長寿社会となって久しい日本では、今後活発に議論されるべきテーマと言えるでしょう。
日本の看取り文化はまだまだ遅れている。本人の意志より家族の意志が重視さる。「食べられなくなり、亡くなっていく」という本来の辛くない死への道は、餓死として拒絶される。そして辛い延命治療(家族はそう思ってない)が行われ、結果として「辛そうだった」となる。これが日本の現代の看取り文化だ
— 萬田緑平 (@ryokuhei) June 27, 2017
命を伸ばす医療技術
心肺停止の状態で人工呼吸器につながれ、本来なら死を迎えている状態にありながら延命措置を取られた患者の生死を決定するのは、現場においてはもはや本人ではありません。
生きるのか死ぬのか、まだ意識の明らかなうちに伝えておいた本人の意思に基づいて家族が医師に告げるのです。
しかし重度の疾患を患い、1年以上意識朦朧と病院のベッドに横たわってきた患者の心が、1年前と同じものだという確約はないでしょう。
言葉にならない呻きのような声で「生きたい」と訴えているのかもしれません。
延命中止は倫理的にも判断の難しい問題です。結局のところ明確な答えはどこにもありません。
しかし2007年、国のガイドラインで人生の最終段階における医療行為の中止が提示されました。
【終末期の人工透析 中止広がる】終末期の人工透析見送りや中止を、2014年以降に約半数の医療機関が経験との調査結果。2014年に中止を選択肢とする提言。 https://t.co/mTAWpYeT9O
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) June 19, 2017
アドバンス・ケア・プランニング
欧米で広まっている終末期医療の新たな考え、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が取り上げられています。
患者の意思を尊重し、最善の治療方法について患者や家族と医療スタッフの間で丁寧に話し合い決定していくものです。
気持ちが不安定になって、当初の希望からの変化があればそれにも対応し、医師と患者で目標を共有し合って治療を進めていくものです。
アドバンスケアプランニングと在宅医療に関する研修会終了、お互いの知識と意識の共有が大切だが現実にはなかなか難しい、そこに取り組もうと他職種でコミュニケーションや情報を共有するプロセスが大事ということでした、気持ち大切にしなきゃね pic.twitter.com/Y6N7oFp09h
— AM-FAN/マフィアドクター (@amfan42) May 23, 2017
生き方と終わり方、医療の持つ新たな役割
私は、近い親戚を多くガンで亡くしています。
家系や遺伝がガンの発症リスクに関係のあることは明らかになっています。
数人の最期を看取る現場に、小学生の頃から立ち会っていました。頻繁に見てきただけに、死に対する感情は今では冷めたものになっています。
しかし、最終的に死を迎えるまでの患者自身の苦しみには壮絶なものがあります。
意識も朦朧として普段声をだすことさえできない終末期の患者でさえ、ガンに伴う激痛に顔を歪め呻き嘔吐し、しかし周囲はなすすべもなく背中を擦ることくらいしかできないのです。
小林麻央さん逝去に がん専門医が思うこと(中山祐次郎) – Y!ニュース https://t.co/h4Tg9aUnIw
今回は大変残念なことになったが、全体的にはガンによる死亡率がだいぶ減ってきた。
運悪く終末医療となっても緩和ケアも充実してきている。
— はやぶさ (@24e5hayabusa) June 23, 2017
本人が望むなら自然死に導いてあげるのが優しさとも言えますし、どんな形であれ命を永らえさせることに意味があるとも言えます。
これは個人の考え方の違いであり、一定の決まった答えが用意されているわけではありません。
幸せな死を迎えるとき脳裏に浮かぶべきことは
「もう、自分は死ぬけど、でも、あんなこともこんなこともしたし、いろいろな人に出会って様々な思いをした。今までの人生は密度も濃く、それなりに良かったのかもしれない」
と思えることだと思います。
死の間際になって後悔の念が浮かばないよう、今の人生を一生懸命生きることが、幸せな死を迎えるために必要なことだと思うのです。
延命中止はひとりの人間の、人生における最も重要な部分を他人が操作することになります。
それだけに、踏み切るには患者と家族と医療機関の間で十分に納得する必要があります。
それができるためには、私たち個人は健康なうちに自分の人生を良いものするよう、努力しなければなりません。
そして普段から、より良く生きるために、死の問題についてもじっくり考えておくべきだと思います。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/001/index.html
via:クローズアップ現代+
via:YOMIURI ONLINE
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