鹿児島中央駅の周辺は開発が進んでいて、大きなビジネスホテルが入った地上14階建ての鹿児島中央ターミナルが目の前にそびえ、イオンが入った地上8階建ての商業ビルがそれに並んでいます。駅ビルとも呼べるアミュプラザという大きなショッピングモールも建ちました。
この付近は数年の間に高層ビルが増えました。駅正面にあたる桜島口から駅舎を出て、左に曲がると天文館に行きます、そして右に曲がると少しレトロなアーケード街「一番街」があります。
商店街の備品
テナントの店舗が頻繁に変わることで地元民もよく知る一番街ですが、かなり長期間にわたり同じ場所で商売をつづけているお店もあります。老舗と新規の商店が混在している、歴史のある商店街です。
一番街のメインストリートを歩いて5分程度の場所にアエールプラザという2階建ての小さめのスーパーがあり、通りを挟んで向かい側にアエール広場があります。1階に小さなテーブルと小さな椅子のセットが3組ほど置かれ、1台の古いオルガンが、誰でも自由に弾いていいように設置されています。
オルガンが流れる古い商店街
今でもたまにその付近を歩く機会があるのですが、オルガンの音が聞こえてくると誰が弾いているのだろうと演奏者を見に行ってしまいます。
年配のおじさんがジャージにサンダルをはいてゆったりと演奏していたりします。スーパーの袋を地べたに直に置いて女性が弾いていることもあります。
2階には中高生を対象とした予備校がテナントに入っていて、夕方に2階のテーブルで自動販売機のジュースを飲んでいると、オルガンが静かに流れるなか、ぞろぞろと学生が勉学のためやってきて、私はそそくさとその場を後にします。
歩き疲れて休憩できる場所
その日はその場所にオルガンがあることも知らないまま歩き疲れてたどり着き、初めて見つけたその場所にちょうどよくテーブルと椅子があることに気付いて一緒に歩いてきた友人の女性と座ることにしました。荷物がとても多く、その日は肩もずいぶん凝っていたから、椅子だけでなく小さなテーブルがあることは本当に好都合でした。
その人は少し悩みを抱えていて、人に話したくて不安で仕方なかったのだろうと思います。それは誰にでも話せるという内容のものではありませんでしたし、気持ちがもともと不安定な方でしたから、自分自身があまりしゃべらない私に対しては、思っていることを話しやすかったのかもしれません。
周囲はスーパーの他に酒店、飲食店、昔からある鞄屋、薬局など店舗でひしめき合っていて、喧騒にあふれた忙しい夕方の商店街は、他人に聞かれても困るような内容の話をするには好都合な環境を与えてくれました。
突然、音が鳴って違和感を感じましたが、間もなく私は喧騒とオルガンの音の親和性に気付き、耳は慣れてしまいました。
友人は18時38分のバスで帰らなければならないことになっていて、あまり長く話すことはできず、私はバス停まで友人を送り、バスが出て行くまで話を聞いていました。
オルガンの音を私は心地よく聴きましたが、話がよどみ無くいつもより多めの笑顔で話しつづけた彼女も、同じく心地よくオルガンの音を鑑賞していたと思うことにしています。
その場所にその友人と一緒にもう一度行くことはありませんでしたが、オルガンは今でも同じ場所に同じものが置かれていて、誰かしら暇のある人が弾いています。
鹿児島に来ることがあって、自分も弾いてみたいと思ったら「鹿児島市中央町22-16アエールプラザ」に古いオルガンが少しだけ装飾されて置かれていますから、誰に遠慮する必要もないので、ぜひ弾きに来てください。
1回目の会場、鹿児島中央駅一番街アエール広場に到着しました!
会場の目印はこちら! pic.twitter.com/mirN9SHCrP
— 混声合唱団こけけ@入団するなら今! (@kokeke_k) March 6, 2016