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大規模商業施設と既存商店街の共存は可能か?明暗を分ける小さな工夫

南九州一番の繁華街として知られる鹿児島市の「天文館(てんもんかん)」がここ数年、減少しつつある客足を取り戻そうとさまざまな努力をしています。鹿児島市では、天文館から少し離れた地域への大型商業施設や飲食店の出店が進み、現在、客はそちらのモールに流れている状況です。

天文館を古くから伝統のある良き集いの場と考え、客足の回復に奔走する人たちの努力と工夫には並々ならぬものがあります。

私も若いころ天文館を友だちと歩いたりいろいろなお店を見て回ったりすることを楽しみにしていました。私も当時を懐かしく思っていますし、当時の賑わいが戻ることを望んでいます。

しかし、客として新しい商業施設と歴史のある天文館とを比べてみると、利用者から見た利便性の点で少し考えるところがあります。

不完全なバリアフリー対策

かつて賑わった商店街がシャッター街になっていくといったドキュメンタリー番組を、ここ数年の間に目にする機会が増えました。地方の繁華街が衰退していく傾向は、鹿児島に限ったことではないということです。

鹿児島市の天文館はもちろん今でも賑わいを見せています。それでも客足を少なく感じる理由は、郊外の大規模ショッピングモールと客を取り合っているからです。

両方の商業地区を分ける大きな要素として挙げられるものに、買い物客に対するバリアフリー対策があります。新しく建てられたショッピングモールは、エレベーターや通路の手すり、スロープ、トイレなども障害者や特別な設備を必要とする方々に対応したものとなっています。

小さなお子さんを連れたお母さんの休暇

一方、天文館では、各店舗が古くから長く商売を行っている個人経営の店も多く、各店舗がそれぞれバリアフリー対策設備を整えるのは現実的に難しいという事情があります。同地区内にある大きな老舗デパートならそれなりに努力している面もありますが、伝統のある古い建物ということもあり、バリアフリーを完璧に整えるために設備を完全に改修するのは難しい点もあります。

小さなお子さんを連れたお母さんであれば授乳室なども必要でしょうし、おむつを替えるためのスペースにはより広いものが必要になるでしょう。ベビーカーを押すにも段差はまだ残っており、完全なるバリアフリーの実現にはまだまだ工夫が必要な現状です。

長い時間くつろぐための場として

せっかく遊びに出かけてみても、これといってくつろげる場所がなかなか見当たらなかったりします。騒いだりぐずったりする子どもを連れて、静かなカフェに入るのも気が引けるときもあるでしょう。

個人的には堂々と入ればいいと思うのですが、近ごろは子どもの大きな歓声にクレームがついたり、それが原因で事件になる例もあります。

そのような時、通りに沿ってベンチでも置いてあれば、疲れた脚を休めるためにもお母さんは随分と助かることでしょう。ただ、置きっぱなしのベンチだと周囲にゴミも散らかり安くなるし、そのベンチに住んでしまう人が出て来るかもしれません。

 

買い物客を呼び戻したいのは、全国どこの商店街も同じ思いだと思います。その実現ために、どの商店街も工夫に励んでいるというわけです。

その際考えなければならないことは、一つひとつの店舗をバラバラに考えるのではなく、すべての店舗がその商業地区を構成する要素として自覚し、地区全体の商業的成績を挙げるためにどのようなことをしなければならないかを考える、ということです。

1つの商店街のために、各店舗はそれぞれどのような役割が求められているか、きちんとニーズを調査し、それに対応したサービスを提供する必要があります。

郊外の大型ショッピングモールと、歴史のある繁華街商店街では強みやウリが違うのですから、マイノリティーのことも念頭に置きながら、それぞれが自分の強みを生かしたサービスの差別化を図る必要があるでしょう。

小さなベンチを1台置く、トイレに1面でいいからおむつ替えテーブルを置く、お母さんは汗びっしょりになりますから女性専用の「パウダールーム」を用意する、など、それぞれの工夫は小さな1歩かもしれませんが、小さな工夫を伴った結果は、まるで違ったものになるはずです。

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