就労継続支援B型で作業していることを話しにくい
B型で働いている自分を話すことに躊躇する場面が多い。
新しく誰かと出会ったとき、髪を切りに行って「何のお仕事されているんですか」と聞かれたとき、知り合いがその人自身のとても深い部分の話をしてくれたとき。
大体において、私はいつもB型ーーというより福祉的就労ーーについて話さない。「在宅ワークをしている」とか、「簡単な記事を書く仕事をしています」だとか、嘘ではない、でも決して本当でもないことでごまかす。
福祉的就労については話してもいいし別に話さなくてもいい。ただ、ほぼすべての話題が福祉的就労、というか今の働きかたをしている慢性的な特性や障害に繋がるものだから、本当の気持ちだけでごまかすような話しかたはストレスがたまるのだ。相手というより自分自身に対して不誠実に感じるケースがとても多い。だからといって開き直って誰かに話したら相手に気を使わせてしまうこととなる。もしくは悲しい返答で自分が傷つくことも。
大前提、A型やB型について知っているかたが少ない。実際私もそうだった。あえて「普通」という言いかたをするが、私の場合はいわゆる普通の一般企業の会社員として30歳まで働いていたので知識がなかった。だから今になって誰かに話すとしても、「『エーガタ、ビーガタ』って何?」という反応がまずあることくらいはわかる。良いも悪いもなくただの事実として。
このあたりは福祉的就労で働いているかたの特性によっても随分と変わるだろう。センシティブな内容を書くと、性格とは別に、身体・精神(発達も今回はここに含みます)・知的によって、B型で作業している事実の話しやすさ/受け止められかたの傾向は正直変わると思う。絶対ではなく“傾向”はあると思う。
少し前に話題になった、セクシャルマイノリティのかたの「カミングアウト論争」と同じで、事実を伝えることが尊いなんてまったくない。その人に応じた多種多様な選択やその時々の正解があるのだろう。けれど私は今の働きかたを人に言いにくい。B型で働いていることではなくて、B型で働く理由である「特性」について話したときの相手の反応が怖い。
言わなかったら言わなかったで、いわゆる普通の人々と話すときに自分だけ隠し事をして、それなのに本音っぽく話す時間帯に心地よさは感じられない。ーーこういった話題を、当人同士以外で聞く機会は少ない。
格差と落差
でもこのような実情を、私はB型で働く前に知りたかった。数人での密やかな会話ではなく、B型事業所を運営している会社やそこで作業する人から発信される声として。
けれど私が知る限りはほとんど見かけなかった。きっとリスクがあるのだろう。とてもつらい思いをして乗り越えて、B型で働くことに誇りを持っているかたもいるだろうし、反対に焦りや後ろめたさを感じているかたもいるだろう。粛々と作業(仕事)をこなしている人もいるのだと思う。
障害や特性があって、B型事業所という同じ場所で働いていても、そこには格差が生まれる。というような趣旨の内容を、ある有名な日本の医師が言っていたが、実際に特性のあるかたから「格差をつけたいのだろうな」と感じる発言を聞いたこともあるし、フラットに話していたつもりなのに差を感じて落差を覚えたこともある。
これまた月並みだけれど、障害や特性があるからといって一枚岩であるはずがないのだ。
だから多分、この手の記事を見かけることが少ない。運営側のリスクと読み手の反感の確率が決して小さくないのだから。
でもやはり、私はこういった内容の、記事とも呼べないかもしれない独白にもっと前に触れたかった。皆が今の自分の働きかたについてどう感じていてごく当たり前に人に話すものなのかを知りたかった。隔離された空間を離れ、誰でもアクセスできる媒体で。
だから数多くいるB型で作業をする利用者のひとつの意見として、今回はここに書き記す。
最後に
たとえばこれが記事として採用されなくてもきっと誰も悪くないのだと思う。それはきっと、B型を運営している事業所がたくさんの利用者と私と、どこかで嫌な思いをするかもしれない読み手を守るための決断だと思うから。
ーーまだ福祉的就労については話しにくいけれど、今利用させてもらっている事業所が利用者のことを心から考えてくれている場所であることは、ひとつ間違いない事実だと思う。