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2024/4/10:フリーペーパーvol.97発刊!

村上春樹の短編小説集、「女のいない男たち」を再読して思う事

「ドライブ・マイ・カー」収録の短編小説集

今、何かと話題の映画、「ドライブ・マイ・カー」。この映画は村上春樹の「女のいない男たち」収録の短編小説が原作です。実は僕は映画の方はノーマークで、村上春樹の原作と知ったのが最近でした。知人からその情報を得て、それが2014年発行の「女のいない男たち」に収録されたもので、僕はその小説を所有している事に思い当たりました。結構前の作品なので、どのような小説だったかあまり覚えていませんでした。

そこで再読してみました。読みだすとすぐに記憶が戻ってきました。ずいぶん活字から遠ざかっていたのですが、すらすらと読めました。村上春樹の作品の素晴らしい点は、文章は敷居が低く、読みやすい事、そして内容は考えさせられる、重厚なものという事が、本当に自然に内在しているという事だと思います。読了後は健やかな気分になれました。少しずつですが、内容をご紹介させて下さい。

ドライブ・マイ・カー

愛する妻を失い、永遠に妻の”ある秘密の部分”を知る事が叶わない男、家福と、すこし風変わりなドライバーの女、みさき。淡々と車の中で交わされる二人の会話。男と女は理解しあえない生き物なのかもしれない、それでも知ろうとすることに人生は在るのかもしれない。

家福の抱えた孤独感がとても鮮明に書かれていると思います。しかし悲観的な作品でもありません。みさきも、文章にスパイスを加えるのに、とても良い効果をもたらしていると思います。

イエスタデイ

東京出身なのに完璧な関西弁を話す木樽と、関西出身で標準語をほぼ完璧に話す谷村。ユニークな二人組。谷村は木樽から、木樽のガールフレンド、栗谷えりかと付き合ってみないかと言われる。木樽の”分裂”はどこへ向かおうとしているのだろうか?

本作で一番明るい話だと思います。木樽と谷村の会話の掛け合いが面白いです。栗谷えりかもとてもチャーミングで、話に華を添えます。

独立器官

複数の女性と交際する渡会。それらの女性とは良き関係築き、自分の生活も充実したものを送っていた彼。そんな彼が1人の女性を深く愛してしまう。深く愛しすぎた結果、彼に起きてしまったある事。そして女とはどういう生き物なのだろうか?

52歳の渡会はこれまで結婚したことはなく、同棲の経験もありません。筋金入りの独身主義者という事です。これまで交際する女性に不自由したことのない彼ですが、嫌な感じは受けません。彼には彼なりのポリシーがあるのです。そんな彼が行き着く先は…。この話はとても興味深いものでした。是非とも読んでいただきたい話です。

シェエラザード

羽原と一度性交するたびに、ひとつ話を聞かせてくれる女性、シェエラザード。そんな彼女の高校2年生の話。シェエラザードによって紡がれていく一つの恋の話。羽原とシェエラザードはそこに何を見いだすのだろう。

シェエラザードという名前の女性ですが、これは彼女の名前を知らない羽原が「千夜一夜物語」の王妃、シェエラザードからとったものです。彼と彼女は限定された関係です。シェエラザードの話はとても人の心を惹きつけるものです。限定された二人ですが、そこには彼と彼女しか立ち入れない、そんな場所があるのでしょう。

木野

妻の不貞を目撃してしまった木野。仕事を辞め、妻と別れ、木野はバーを始める。灰色の若い雌の猫、カミタという物静かな不思議な男、木野の静かなバー。そんな静寂も何かをきっかけに壊れ始める。そして店の周りに蛇が現れる。

村上春樹節、健在という作品でしょうか。この短編小説集の中で最も暗い話だと思います。木野の孤独、何か他人事には思えないものがあります。人は何処か、ある部分で”正しくないもの”と知らず知らずのうちに遭遇してしまう。それの根底にある恐ろしさに触れた作品だと思います。

女のいない男たち

とある深夜、急に電話が鳴る。電話はいつも性急だ。そして相手が彼に告げる。一人の女性がこの世界から永遠に姿を消したことを。そして彼は世界で二番目に孤独な男になる。

この話は、僕がとても好きな文章があります。でもネタバレはしたくないので、読めば分かるキーワードだけ書きます。”消しゴム”です。共感する方がいれば幸いです。

村上春樹の作品

今回、この記事を書くことがとても難しかったです。自分の書いた事が、エゴイズムに解釈されないかと少し不安です。もし不快に思われたら申し訳ないです。

村上春樹はとても好きな作家です。長編小説はすべて読みました。短編小説もあらかた読んだと思います。ただいつのまにか活字離れして、小説を読まなくなりました。気付けば漫画ばかり読んでいました。今回、「女のいない男たち」を読んで、小説の素晴らしさ、村上春樹を好きな事が再確認出来ました。「女のいない男たち」は一つ一つのフレーズがとても心に染み渡る感じがして、みずみずしい気持ちになれます。再読は楽しいものでした。是非とも読んでいただきたいです。

そして欲を言えば、村上春樹の昔の作品も、手に取ってもらいたいです。短編小説も良いのですが、長編小説は本当に感動出来るものばかりです。「ノルウェイの森」や「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、「ねじまき鳥クロニクル」、「海辺のカフカ」、そして「羊」四部作も。どれも一級品の小説です。何か心に残るものが必ずあるはずです。村上春樹を楽しんでください!それでは、読んでいただきありがとうございました!

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