猫と人、互いに幸せな時間が長く続くように
今年の「猫の日」は2022年2月22日、”にゃん、にゃん、にゃん、にゃん、にゃん、にゃん”と例年とは違う特別な「スーパー猫の日」。ごちそうを用意したり、記念撮影や思い出づくりなど、いつも以上に猫愛が燃え上がっている愛猫家も多いでしょう。
ところで、普段猫に接するときに愛おしいがゆえについ人間本位の接し方をしていませんか?大切な愛猫にストレスフリーな日々を過ごしてもらうため、猫が嫌がること、猫に対するNG行為を紹介。正しい接し方でより良い関係を築き上げましょう。
ざっくり
動きを封じられる
抱き上げられたり、動かないよう押さえられたり、と体の自由が利かない状況に対し恐怖を感じてしまいます。猫は危険を察知すると、瞬く間に高い所やベッドの下などに身を隠します。動きを押さえられることはとっさに逃げられない状態であるため、猫は抱っこや保定を嫌がります。強いストレスを感じてしまうので、嫌がっている猫を無理やり抱き上げることはやめましょう。
抱っこが好きな子には
中には抱っこされている方が安心できて好きだという猫もいるので、そんな子に対してはスキンシップとして抱き上げてあげるのも良いでしょう。それでも猫のそのときの気分に合わせずに、こちらから無理やり抱き上げるとストレスを感じるかもしれないので要注意です。
服を着せる
「動きを制限される」「長時間体に密着される」「毛づくろいができない」ことになり、猫からすれば嫌がらせの様に感じているかもしれません。たしかに服を着せると可愛いですが、それは人間側の一方的な喜びであり猫にとっては苦痛の時間です。人間だって拘束された状態を長時間強要されたら、相当のストレスを感じるはずです。
それでも服を着せて記念撮影をする場合は、蒸れて皮膚炎にならないよう必ず短時間で終わらせて脱がせてください。
大きな音に敏感
猫は非常に優れた聴力の持ち主。人の可聴域(聴き取れる周波数)が約16〜2万ヘルツであるのに対し、猫の可聴域は約25〜7万ヘルツであると言われ、人の約3倍の聴力を持っています。猫と暮らしていると、家族の足音を聞き分けたり、車の音で家族の帰宅にいち早く気付き出迎えてくれたりと、その聴力に驚かされます。
音に対して敏感なため、人には聴き取れない音にも反応し、人が不快に感じる音はより不快に感じてしまいます。特に突然の雷や花火、サイレンなどの大きな音が轟くと、驚いた様子で身動きが取れなくなることも。
怯えないよう工夫が必要
猫は環境適応能力が高い動物ですが、人と暮らす上で猫にとって耳障りな音はどうしても避けられません。掃除機やドライヤー、テレビ、洗濯機、人の動作音など。子どもの大声も苦手だと言われています。ストレスによる健康異常を防ぐために工夫は不可欠です。
- 掃除機やドライヤー等の音が大きいものを使用するときには、猫を別の場所に移動させるか、猫から離れた場所で使用する。
- 扉は静かに閉める。
- 猫のそばで大声を出したり、叫んだりしない。
- 逃げ込める場所を普段から作っておく。
かまわずに放置する
猫は自由気ままで気分屋。過度なふれあいは嫌でも、適度にかまってもらいたいといった、いかにも猫らしい要求があります。これを、「忙しいから」「面倒だから」と無視し続けて全く相手にしないでいると、ストレスが蓄積してしまいます。ときには猫トイレ以外の場所におしっこ、うんちをする粗相によって気を引こうとする行動を取ることも。そうなると、猫も飼い主も互いにストレスを感じて全くいいことがありません。
かまってアピールには簡単でも応えてあげる
パソコンでの作業や読書などに集中していると、間に割って入って邪魔をするような行動を取り「かまってよ」のアピールをすることがあります。”かまってアピール”があったときは、軽く撫でたり、名前を読んであげるだけでも喜んで満足することもあります。
新入り猫ばかりかまわない
新入り猫を迎えると、どうしても慣れていない子の方に気を配りがちです。先住猫からすると、”自分の”飼い主を横取りされたみたいで面白くありません。このストレスの矛先は新入り猫へと向ける場合があるため、先住猫に対しても平等に愛情をもって接してあげましょう。
香水・芳香剤は猫にとって刺激臭
犬ほどではありませんが、猫は嗅覚も優れていて人の1万倍とも言われています。人がニオイとして認識できる最低濃度の1万分の1でもわかるそう。おやつの入った皿を隠してみても、空気中のニオイを嗅ぐような動作を見せ、隠してある場所にまっすぐ向かい容易にたどり着けます。さらに、食べられるものかどうかもニオイによって判別しています。
空気中のニオイから多くの情報を得て行動している猫にとって、香水や芳香剤といった刺激の強いニオイは情報収集の妨げになるため、不快に感じるようです。
遺棄する(捨てる)・暴力を振るう
言わずもがな、絶対にやってはいけない行為です。愛護動物(ここでは猫)を虐待したり遺棄する(捨てる)ことは犯罪であり、違反すれば懲役や罰金が科されます。
- 愛護動物をみだりに殺傷した場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金
- 愛護動物に対し外傷の生じる暴行を加える、そのおそれのある行為をさせる、エサや水を与えずに衰弱させるなどの虐待を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 愛護動物を遺棄した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金
それでも行う人間がいるのが悲しい現実です。突然見知らぬ場所に遺棄されたり、暴行を受けるといった恐怖は計り知れません。どのような事情があっても、命を軽んじる行為は猫に限らず許されることではありません。
事情により一緒に暮らすことができなくなったときには、個人もしくは保護団体等に譲渡する方法があります。手放した後、その先の猫の幸せを考えた行動を取ってください。
ときには猫の嫌がることをしなければならないことも
猫が嫌がることだとわかっていても、健康を維持するために欠かせないこともあります。
爪を切る
爪を切るときには保定することになるので、だいたいの猫は嫌がりますが、猫自身や複数匹いる場合は他の猫まで傷付ける可能性があるため、爪が伸びたら適度な長さに切りましょう。
動物病院に連れて行く
猫は体調が悪くても表に出さないことがあるため、病気がわかったときには重症化していたという話は珍しくありません。また、感染症も多いので予防することが非常に重要になります。そのためには、病院で年に1度予防接種を受ける必要があります。キャリーケースに入れただけでパニックになる子もいれば、道中の車内で大きな声を出したり、口呼吸になってしまったり。
猫からすれば「どうしてこんな怖い思いをしなきゃいけないんだ!」と思っているかもしれませんが、いつまでも健康で長生きしてほしいのであれば、嫌われ役もこなさなければなりません。
猫とのコミュニケーションには”忖度”が大切です。繊細な生き物である猫の機微を、こちらが察して動く必要があります。簡単に猫の気持ちを理解できるわけではありませんが、一緒に暮らしていると表情や動き、声などから猫が求めているものや喜怒哀楽がわかるようになるのを実感できます。元来、猫は警戒心の強い動物ですが、一度信頼関係を築けると心を許し懐いてくれます。猫と人が互いに幸せな時間が長く続くよう、猫の気持ちを考えた行動を心がけたいものです。