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「普通になりたい」軽度知的障がい者の恋心を描いた漫画『初恋、ざらり』

「あれ?これって私?」

『あれ、なんだか過去の私を見ているような』私はある日、ソファーにもたれながら過去を思い出し胸が苦しくなった。

仕事から帰宅後、スマホでTwitterを開き、ソファーに足を伸ばし私の日課であるエゴサーチをしていた。すると画面上にイラストが表示された。そのイラストはマンガになっており、私は1話から遡って見ていた。

今回は『初恋、ざらり』を読んでみて自分が感じたこと、思ったことを発信していきたいと思う。

同じ境遇の主人公と自分が重なってみえた漫画本に初めて出逢う

この物語の主人公は軽度知的障害を持っている25歳の女の子。主人公・上戸有紗は、コンパニオンという男性相手に接客をしていたが、『このままじゃダメだ』と今の自分を見つめ直し、本格的にアルバイトを探すことに。そこで運送会社に面接後、見事採用された。

『しょうがい者枠は嫌だ』『履歴書に支援学校卒って書いたら落とされる』『知的障害って言ったって、私は軽い方』その1コマを見ていると、私の頭はフラッシュバックした。

私は、特別支援学校を卒業しているので『初恋、ざらり』の主人公・有紗と同じ境遇なので、1話から最新話まで見ていると、とても胸が苦しくなった。

『普通そう』当事者はこの言葉をどう捉えたらよいのか

『IQ』この言葉を聞いて何を思いますか?「IQが高いと頭がいい」「IQが低いと頭が悪い」「学力に差がある」

大半の人のイメージはこんな感じ。

平均的なIQは100と言われている。84を下回ると「境界知能」70を下回ると「軽度知的障害」50を下回ると「中度知的障害」

正直、この世の中で生きづらい人は「境界知能」を抱えている人たちなのではと私は思う。

私は、『軽度知的障害』と診断されてから10年以上経ち、もう一度知能検査を受けると『境界知能』と診断された。

仲良くなった友達や周りの人にカミングアウトするのも怖く、私が人よりIQが低いと分かったらどんな反応するのだろうと思うと余計にカミングアウトするのが怖かった。

実際に心を許した人にだけ、カミングアウトした時もあったが、周りからは「え!?嘘でしょう?全然普通に見えるけど」と皆同じことを言っていた。正直「IQ低そうには見えない」だとか「さくらさんって謎解き得意だからIQ高いのかと思った」とか色々言われる。ひらめき力とIQと知能指数はまた別だと思う。見た目が普通と言われているが、『普通に見える』からこそ誰かに手を差し伸べて欲しかったりするのだ。

知的障害や境界知能を抱えている人にはあるある?な恋愛話

さて話は戻るが、『初恋、ざらり』の主人公・有紗も自分の障害についてカミングアウトすることに、不安を覚えていた。

有紗が採用されたアルバイト先の初日での出来事。有紗は自分の業務が分からずぼーっとしていた。(私も自分の役割が分からず、突っ立っていることが多い)

「午前と午後で荷物を分けて」と上司に指示され、荷物を見るとそこには午前と午後という文字は記載されておらず、有紗は「あ、あの。午前と午後って書いていないんですが・・・」と上司に聞くと『え?ここにAM・PMって書いてあるよ』という返事が返ってきた。「えっと、AM・PMってなんですか?」と有紗は言った。

有紗はAM・PMという言葉の意味が分からなかったのだ。すかさず上司は『俺も最近まで知らなかったよ』とフォローしてくれたのだ。

そんな初日に優しくフォローしてもらった上司に有紗は恋をする。『優しくされるとすぐに恋をする』ことは軽度知的障がい者には結構あることらしい。

優しくされると恋心が芽生えたり、惚れやすい性格だと人の弱みにつけ込んでくる悪い人などに、騙されやすかったり、都合のいい人にされやすかったりなど、色々と厄介なことになる。

初日の出来事で有紗は上司の岡村さんに恋をし、また上田さんも有紗にだんだん惹かれ二人はお付き合いすることに。しかし、有紗は岡村さんに自分の障害のことを言うタイミングを逃していた。

『自分の障害をカミングアウトすると、もしかしたら嫌われるかもしれない』有紗はそう思っていた。

常に劣等感を抱える主人公

仕事は覚えることが多いため、知的障がい者や、境界知能の人には『覚える』ということは苦痛で仕方がない。

人は物事を頭に記憶する時に、どう記憶するか考えてみよう。まず入ってきた言葉を文章化し、脳内に入れる。そしてメモを取る。

しかし、軽度知的障がい者や境界知能の人は、一時的に記憶し、処理する能力が劣っている為、記憶することが困難なのだ。記憶以外にも『後先のことを考えて行動する』ことも苦手である。なので「私はバカだから何一つできない」と劣等感を感じてしまう。

そして、マンガを読み進めていくと、私の心にぐさっときた一コマがあった。

『普通になりたい』

もうこの一コマで、私は過去のこと思い出し泣きそうになった。

私から見た『普通』というものは、勉強が出来て、友達もそれなりに居て、コミュニケーション能力があって、頭の回転が早くて、資格をたくさん持っていて、いい大学に行っていて、会社に勤めていて・・・挙げたら本当にキリがない。私にとってこれが普通という世界。

しかし『普通』って一体なんだろう。皆が思う『普通』と私が思う『普通』とは違うし、人それぞれなんだと思う。

主人公有紗が岡村さんに言った一言でまた私の心が動いた言葉があった。

『あの子(有紗の友達)は見た目で分かるけど、私は障害があるとは分かりにくい』

私も他の人と比べてしまう悪い癖があるので、有紗が言った一言が私の心臓をまた突き刺し苦しくなった。

「物覚えが悪い人」「怠けてるだけでは」という周りからの意見

「要領が悪い」「やりたくないから怠けてるだけ」

『見た目が普通』なので周りから気づかず、時々イラっとするような意見をもらうこともある。

私が小学生の頃、算数の授業で一人だけ担任の教師にとても怒られたことがあった。どれだけ努力しても理解ができず、テストで悪い点を取れば担任に怒られ。今でも、血相変えて私を怒っている担任の顔と言葉がフラッシュバックすることがある。

主人公・有紗は、今やっている配達の仕分けの仕事から特殊という少し難しい仕事を任され「私にもできるかもしれない!」と頑張る意欲を見せた有紗だったが、配達の個数間違いや確認などが不十分で周りからは呆れられる毎日。

そこで、岡村さんは「有紗ちゃんには戻って来てほしい」と優しい嘘をついたのだ。その優しい嘘はすぐにバレた。更衣室で「あの子何もできなかったんだって〜まぁすぐに戻ってくるとは思ってたけど」と女性従業員の声。

有紗はそこでまた劣等感を抱くことになった。何度も有紗が思う『普通になりたい』

知的障害や境界知能のハンデを抱えている人たちは少なからず『普通になりたい』そう思っている。この記事を執筆している私、さくらももえも『普通になりたい』と思っている。

見た目だけで判断される世の中が少しでも減ってほしい

『初恋、ざらり』の書籍レビューで書いたはずが、境界知能当事者目線の意見になってしまった。

『初恋、ざらり』を読んでみて思ったこと。軽度知的障害や境界知能を抱えている人は『見た目だけで判断されがち』これが一番の問題なのではと私は思う。

『人を見た目で判断するな』この言葉はよく聞くが、人と人がコミュニケーションを図る時に、メラビアン法則といって言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%の法則で人はコミュニケーションを取っている。

なので、人は視覚情報を先に取り入れてしまうので『見た目で判断してしまう』ことはしょうがないのかなと思う。

実際、軽度知的障害や境界知能を抱えている人と話してみると、間違った言葉の使い方や、返答の食い違いなどで、違和感を覚え「あれ?この人はハンデを持っているのかな?」とそこで初めてその人の障害に気づくことが多い。

なので見た目だけで判断するのではなく、きちんと話をしてその人の特性を知っていくことを大切に。

そして『初恋、ざらり』で、知的障がい者や境界知能を抱えている人の生きづらさについて色んな人へ理解が深まればいいなと思う。

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