「誰でも、いつでも、どこでも」本が読みやすい環境に
以前通っていた専門学校の最寄り駅には、白杖をついている方がたくさんいました。「なぜ目が見えない人がここにはいっぱいいるんだろう」と当時は不思議に思ったものです。視覚に障害のある方がこの駅にたくさんいた理由。それは、近くに日本点字図書館があったからです。
日本点字図書館(高田馬場)滝をイメージしたという外観。視覚に障害がある人に溢れるほどの「知識」を提供したいという思いから「知の滝」と呼ばれているそうです。長岡館長は大変気さくな方で素晴らしい時間となりました。『11/11・12 オープンオフィス』 盲導犬と歩いてみたいな。 pic.twitter.com/28tXCHhlDt
— 黒木アン (@aneane2014) 2017年10月7日
2019年6月21日、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(通称:読書バリアフリー法)が衆議院本会議で全会一致で可決、成立しました、視覚障害、知的障害、発達障害、上肢の障害など多様な障害によって、本を読むのが難しい方が読書しやすい環境を整えていこうという「読書バリアフリー法」。誰もが読書しやすい環境づくりが国や地方自治体の責務となります。
点字毎日:読書バリアフリー法成立 誰もが文字文化を享受 環境整備、国や自治体に責務 – 毎日新聞 https://t.co/vFrAg0z9vG
— 知識情報・図書館学類@筑波大学 (@klis_kasuga) 2019年7月7日
ざっくり
知っていますか?点字図書館
冒頭の「日本点字図書館」は1940年に全盲の本間一夫さんが創立した民間の福祉施設です。国が作った図書館かと思っていましたが、当事者が作った施設でした。
現在、点字図書館は、
- 北海道・東北:14
- 関東:21
- 北陸・甲信越:7
- 東海:7
- 近畿:14
- 中・四国:14
- 九州・沖縄:12
公的機関・民間あわせて全国で89ヵ所あります。
点字・録音図書。つくるのはボランティア
点字図書館では、主に指で読む「点字図書」と耳で聴く「録音図書」を扱うのですが、それをつくっているのは全部ボランティアの方々。録音図書に関しては、年間1〜2万タイトル出ていると言われます。思ったよりたくさん出ているな、という印象はありますが、毎日200冊、月間6000冊、年間7万冊ほど発売される新刊のことを考えると、追いついていないのが現状かと思います。
読みたい本が読めない
年間1〜2万タイトルの録音図書が出ているとはいえ、視覚に障害をもっている方が本当に読みたい本をすぐに読めるかといえばそうとは限りません。というか、読めない可能性の方が高いでしょう。
蔵書がない教養図書を無料で点訳してくれたり、朗読してデイジー版(CD図書)にしてくれるサービスを行っている点字図書館もあります。しかし、つくってくれるのは先程も書いたように全部ボランティア。すぐにできるとは限りません。
読みたいときに読みたい本を読めない不自由…。視覚に障害のある方も読みたいタイミングで本が読めるように読書バリアフリー法が機能してほしいと思います。
高田馬場駅の近くにある「点字図書館」を見学して来ました。点字図書館の創設者本間一夫記念室や、書庫も詳しく案内して頂きました。アジアの国々にもその国独自の点字があるようで、とても興味深かったです。 #点字図書館 #世界の点字 #創設者 #本間一夫 #ルイ・ブライユ #フランス pic.twitter.com/olEQgIcDUt
— LearnO Limited 🌀 (@LearnOLimited) 2019年5月23日
「LLブック」って何?
LLブックは、文字を読んだり、本の内容を理解することが苦手な人にもやさしく読める本です。 ”LL” とは、スウェーデン語のLättläst(レットラスト)の略。Lättlästは、日本語で「やさしくてわかりやすい」という意味になります。
やさしくてわかりやすい本「LLブック」
知的に障害を持っていたり、母国語が日本語でない方にとって、本を読むことは少し難しい課題になります。でも、情報や知識は誰もが知っておくべきもの。だからこそ、やさしくてわかりやすい本「LLブック」は普及されるべきものだと思います。
多様な「LLブック」
スタンダードなLLブックは、やさしめでわかりやすく書かれた文章と、ピクトグラム(文章の意味を示す絵文字)・イラスト・写真を入れるスタイル。でも、これといって決まったスタイルがあるわけではなく、他にも写真だけのLLブックやスマホをかざすと音声読みあげをしてくれる音声コードをつけたLLブックなどがあるようです。
誰にでもやさしくてわかりやすい本というコンセプトでいくと、今後、多様なLLブックが登場してきそうですね。
まだまだ少ない「LLブック」
少し前の情報になりますが、2017年3月現在、LLブックは20タイトルにとどまっています。LLブックと明示していないけれども、LLブック相当の作品を含めても80タイトルほど。まだまだ少ないですよね。
【展示】3月の月間展示テーマは「バリアフリー図書」。オーテピア図書館からお借りした「さくらバリアフリー文庫」の資料を展示しています。録音図書や点字本、布絵本、LLブックなど様々な形態の資料があります。見て、触れて、バリアフリー図書について知ってください。 pic.twitter.com/rWt6jjy9SU
— 南国市立図書館 (@nankokutoshokan) 2019年3月12日
読書バリアフリー法が機能してほしい
視覚障害、知的障害など多様な障害によって、本を読むのが難しい方が読書しやすい環境を整えていこうという「読書バリアフリー法」が成立しました。国や地方自治体には、誰もが読書しやすい環境づくりが求められます。
目が見えない、文字を理解することが難しいなど、読書を困難にしている障壁への対処をどのように進めていくかが「読書バリアフリー法」の目的意義です。
また、みんなが本を読みやすくする=読書のユニバーサルデザイン化という考え方をもって、取り組んでいる方々もいます。伊藤忠記念財団が作成した電子図書の「マルチメディアDAISY」もそのひとつです。
音声と一緒に文字や画像が表示されるデジタル図書です。自分が読みやすいように文字の大きさ、音声のスピード、文字や背景の色を選ぶことができます。
現在、登録書籍も増えています。
マルチメディアDAISYが広まり多くの方に読書の楽しみを届けられる日がくることを願っています。#わいわい文庫 pic.twitter.com/fqw3a1vgLZ— 文月*・☪︎ (@fumizuki_Na0926) 2019年2月28日
読書を困難にしている様々な障壁を個別に取り除く工夫と、読書のユニバーサルデザイン化という考え。この両輪を一部の人たちだけでなく、多くの方を巻き込んで考えていただければ、読書バリアフリー法が成立した意義も大きくなると思います。
読書バリアフリー法が機能して、誰もが本を通じて情報や知識を好きなタイミングで得られる社会が実現することを願います。
オーディオブックの登場で
視覚障害者は「本を選ぶ自由が得られる」「読書バリアフリー法」視覚障害者の光に? #日テレNEWS24 #日テレ #ntv https://t.co/Dw5D7EHKGI
— える🌸本に恋するエンジニア (@el_readingbooks) 2019年7月3日