重い障害のある人が働けるような制度改正を
2018年11月26日、分身ロボットが働くカフェの実験がスタート。世界初の実証実験でした。オリィ研究所が開発した OriHime(オリヒメ)-D をパイロットが遠隔操作することで、カフェでの接客やコーヒーを運ぶ業務などをこなしていました。分身ロボットが働くカフェ実験は2019年秋にも行われる予定で、約100人の応募があるとのこと。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、カフェ常設も目指しています。
この分身ロボットを遠隔操作しているパイロットは、神経難病などの重い障害をもった人たち。今までにない重度障害者の新しい就労の形が見え始めています。
外出困難な重度障害者らが視線入力などで分身ロボットを遠隔操作して接客し、報酬も得る実験的なカフェ。「あらゆる人に仲間たちと働く機会を」と期間限定で東京に開店しました。英字新聞で写真部の編集委員がお伝えします。#分身ロボットカフェ #avatarcafe https://t.co/Nvc7vovcyl … pic.twitter.com/1XwgnXk4D2
— 読売新聞 編集委員室 (@y_seniorwriters) 2018年12月17日
仕事中の「重度訪問介護」は全額負担
しかし…です。重度障害者が日常受けている「重度訪問介護」のサービスが、仕事中受けられないという問題があるのです。受けられないというか、仕事中に受けたサービスの全額を自分か雇用主が支払わなければならないとのこと。
仕事中でもサービスを受けなければならない場面って、絶対ありますよね。自己負担って、なんだろう、時代遅れに感じます。働けるかもしれない人の可能性を潰していますよね。
分身ロボットカフェなど重度障害者も働けるテクノロジーや事例を作ってきたが、日常生活に必須な重度訪問介護は“経済活動をしていない事”が条件になり、働くと介護を受けられず、姿勢を変えたりトイレも行けなくなる。
結果、本人が働きたくて働けるのに、制度の壁で働けない問題に衝突している。
— 吉藤オリィ (@origamicat) 2019年6月18日
さいたま市の取り組み
重い障害があっても自宅で働けるように、さいたま市では独自の取り組みを2019年4月からはじめました。在宅で仕事をする間に重度訪問介護を受けた場合、さいたま市が全額負担する、そういう制度を作ったのです。6月から2人がこの制度を使い、民間企業で働いているとのこと。
ひとつの自治体ですが、重い障害をもった方の就労の可能性に道筋を作ってくれたことはすごく嬉しく思います。ここからがスタートかなと思います。
さいたま市、重度訪問介護で全国初の独自支援 https://t.co/zjPfPJc36p
— 毎日新聞ニュース速報 (@mainichijpnews) 2018年12月27日
国の制度改正を
2018年6月、さいたま市は独自の制度導入に先立ち、厚生労働省に制度の見直しを働きかけたようですが、この段階で実現することはありませんでした。
また、2019年6月18日には、島根県松江市在住の女性が東京都内の自民党本部で行われた党会合において、分身ロボット OriHime を遠隔操作し、「今受けているサポートを仕事中も受けたいだけ。働いて人の役に立ちたい」と訴えたそうです。
財源の問題はあるかもしれませんが、地方自治体だけでは賄えない部分だと思うので、国による制度改正が必要になってくると思います。
【切実な問題】
>分身ロボットを使う就労にも、重度訪問介護を巡る課題が立ちはだかる。昨年のカフェで働いた島根県の脊髄性筋萎縮症の女性は、都内の企業に分身ロボットでの受け付け業務を打診されたが、重度訪問介護に公的支援が受けられないため、採用に至っていない https://t.co/gnE70fJbFO
— 吉藤オリィ (@origamicat) 2019年6月18日
可能性が広がる世の中に
松江市の女性が分身ロボット OriHime を通じて訴えた切実な思いを、その場にいた議員たちはどのように捉えたのでしょうか。自分が、自分の大切な人が同じような立場になったら…と考えてほしいものです。
分身(アバター)ロボットを使った労働が現実味を帯びてきている今、神経難病など重い障害をもっている方の働ける可能性が広がってきています。でも、仕事中、重度訪問介護の公的支援が認められないと、実際は働けません。
障害や病気などで思い通りに体が動かせなくなったとしても、自分の可能性はできるだけ狭めたくありません。働きたいと思っているのに、仕事中の介護が認められれば働けるのに…。国にはぜひできるだけ早い制度改正をお願いしたいと思います。