『がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック』
私の身近にもがん経験者は結構多い。「実は◯年前にがんになってね…」そんな話を何回か聞いた。2人に1人ががんになる時代だから不思議ではない。昔はがん=死だったが、今は違う。多くの人ががんと闘いながら、治療しながら、仕事をしている。
国立がん研究センターは、2019年5月30日、企業の経営層や人事・労務担当者に向けて『がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック』を作成したと発表している。がんになっても仕事を続けたいと願う人と企業を支援するために、このガイドブックを作成したという。
『がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック』は、日経ビジネス電子版「がんと共に働く 知る・伝える・動きだす」からダウンロード可能。ぜひ、社員のため、会社のためにこのガイドブックを一読し、そして活用してほしいと思う。
国立がん研究センター:がん患者の就労支援、ガイドブックを作成 毎日新聞
国立がん研究センター(東京都中央区)は、がん患者の就労支援のためのガイドブックを作成した。治療と仕事の両立を助ける勤務時間と休暇の取り方、相談対応や支援 …https://t.co/MQOtJ8oZ8p
— 東京市内ガイド (@Tokyo_Shi_Guide) 2019年6月11日
貴重な人材を失わないために
「がんになったら、会社を辞めなければならない」
大企業の3割、中小企業の4割の従業員がそう思っているという調査結果がある。がんになった社員は「迷惑をかけてしまうから」などの理由で、企業側は「長く休まれると業務に支障がでるから」などの理由で、退職してしまう、させてしまうことがあるという。
ガイドブックの一文に、会社側が少しだけ柔軟に配慮すれば、貴重な人材を失わずに済みます。と書いてあった。
有給休暇の時間単位取得など柔軟な配慮のしかたの例や、がん治療を受けながら働く人の実体験も記載されているので、ぜひ参考にしていただければと思う。
がんと就労についての情報を集める
知らないことで不安になったり、諦めてしまうことがあると思う。がんとなると尚更、そういう気持ちになるだろう。がんの状態について、病院について、治療方法について、入院期間について、仕事について、お金について…など不安はどんどん出てくると思う。私の父も肺がんだったが予測していなかったことだったので、準備不足から何もかもが後手後手になってしまった。
でも、事前に情報を集めて、その情報を整理して理解できていると、不安も諦めもある程度解消できるのではないか。
自分の働いている会社が「がんと就労」についての情報を集めていたとしたら、どんなに心強いだろう。企業も社員も情報を共有できていれば、当事者も同僚も上司も比較的冷静に対処できるはずだ。ガイドブックでは、何でもワンストップで相談できる「ヒューマンリソースセンター」を設けている会社が成功事例として取り上げられていた。
実際に社員ががんになってしまったら
いざ、社員ががんと診断されたことを報告してきたら、どんな対応を取るべきか? ガイドブックには、基本的に気をつけること、支援の進め方、必要な配慮の実施例が書いてあった。
印象に残っているのは「がんの支援で心がける7ヵ条」だ。多くの事例から明らかになった基本的な考え方が挙げられているとのこと。7ヵ条は以下の通り。
- 第1条 社員の気持ちに寄り添う
- 第2条 本人の意向を確認し、話し合う
- 第3条 がんのイメージに振り回されない
- 第4条 状況の変化に柔軟に対応する
- 第5条 個別性を考慮する
- 第6条 個人情報の取り扱いに注意する
- 第7条 周囲の社員への配慮を忘れない
この中で、特に2、3、7条は、当事者が職場に居やすい環境にするために大事なことだと思う。
がん治療と仕事の両立が当たり前にできる職場へ
今回は、先日、国立がんセンター研究センターが作成した『がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック』について書いていった。社員のがん治療と仕事の両立には、職場の理解と協力、配慮が不可欠だと思う。
年間約100万人ががんになる時代。仕事をしながらがん治療のため通院している人は、約36万5千人といわれている。
がんと診断された社員に対する支援体制がまだ整っていない企業には、ぜひこのガイドブックを参考にしてほしい。また、体制が整っていると思っている企業も、本当にがん治療をしている社員が求めている支援ができているのか再考していただきたい。
がんにならないことが一番だが、がんになったとしても仕事が続けられる会社が1つでも増えてほしい。また、がん治療と仕事の両立が当たり前にできる職場が当たり前になる時代が来てほしいと思う。