介護職は腰痛を発症しやすい。web上には悲鳴に近い投稿が日々上げ続けられている。
あかん、腰が張ってきた。
後々、腰痛に繋がるやつや、これ。
介護職にとって腰痛は職業病である。#介護職 #介護 #介護あるある— a (@rb26vq35) August 7, 2016
だからこそ、介護職は定期検査として腰の健康状態をチェックするという常識があるのだ。
@w6110n 健康診断は会社が年に2回絶対しなあかんやつやから、払ってくれると思うねんけどなー(´・_・`)
介護職は腰痛検査も絶対しなあかんし。— ちょろりん🌼0403おちゃろく (@n4560) May 10, 2016
https://twitter.com/ellevielm/status/577979301984780288
高齢化が進む日本で、これからますます必要とされてくる介護の現場。そこで働く介護職は「腰痛」から永遠に逃れられないのだろうか?
福祉の元締めである厚生労働省は2013年に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂している。2013年改訂の大きなポイントは腰痛患者が増加の一途を辿る福祉施設や医療機関、訪問介護・看護と適用範囲を広げた上で、原則として「抱き上げ介護」(人力による利用者や患者の抱き上げ)を行わないように求めるものだった。しかし、この指針に強制力はなく罰則規定も設けられていない。
この曖昧な改訂から3年経つ2016年、web上の介護職の悲鳴はいまだに止まない。
腰痛くて全然寝れなかった…
ついに私も腰痛持ちだ…
介護職だけど腰痛だけはならん!って言ってたのに〜くっそ— みー (@miiiiiy_21) August 5, 2016
保育士の待遇もだけど、介護職の待遇を変えてやらないと老後大変だぜ。
国会議員の方々よ。
今の給与の3倍にしてやればきっと離職減るのにな~(  ̄▽ ̄)重労働低賃金でやりがい以外になんの旨みもないただの腰痛になって労災おりない自己犠牲の福祉の世界かー。— 休 (@yasumin_1112) July 7, 2016
腰痛による離職は、さらなる悲劇の原因にもなるのだ。
介護職を続けてきた知り合いが、神経性の腰痛になり、痛くて仕事が続けられなくなりそうだと聞いた。しかも、子どもが心臓病で高額な手術が必要なことも発覚したとも聞いた。悪いことが重なって、この先どうしようかと途方にくれる人をどう助けるか。自己責任論では済まされない。
— 監視委員長 (@kansi_iintyou) July 8, 2016
腰痛の原因は「抱き上げ介護」だという明らかな事実が日本の福祉現場には存在している。では、この「抱き上げ介護」は世界共通のものなのだろうか?
実は、介護・福祉関係の先進国とされている国々では抱き上げ介護を行ってる国はないそうだ。外国では抱き上げ介護は「人材の消耗」と「介護を受ける方への虐待」という認識が当たり前ですらある。
だからこ、移乗用リフトなどの機器による移乗が当たり前になっている。
それに比べ、日本では介護職に入職すると「人力による移乗の技」を伝授されるという。
変わろうとしない、その頑固さに閉口する。
日本人の価値観を介護の現場に持ち込むと、抱き上げ介護は身体のぬくもりが伝わるから介護らしいから「福祉らしい」となり、移乗用リフトを使うと機械的で冷たいといから「福祉的でない」という考えが先行してしまっているのではないだろうか。
結果として多くの介護職が腰痛に苦しみ、悪化した場合は離職により失業状態へ…という、悲しいスパイラルに陥ってしまう。
次に、抱き上げ介護は「虐待」だということついて考えてみたい。
多くの場合、介護を受ける側の腋下に手を入れて抱き上げ介護は行われる。
この腋下は体の部位の中で皮膚が弱い部分であり、手や衣服での摩擦で皮膚が傷ついてしまうのだ。
さらに、人力である以上100%の安全性は担保できない。
抱き上げられている最中に、介護職が激しい腰痛に襲われたら…と恐怖してしまうのは人として当たり前であろう。
このように、身体的・精神的虐待につながることは明らかだ。
これからも増え続ける介護の現場。
介護は誰もが現実に直面する大きな問題だ。
介護を提供する「人」というリソースは少子高齢化社会において、希少なものになっていく。
人は消耗品ではない。
想いを持って介護職についた人材を本当は避けられる「腰痛」というトラブルでリタイアさせてはならないし、介護される側の気持ちにたっても、身体的苦痛や精神的恐怖心を与えてはならない。
日常的に介護職の健康を削る業務を、「冷静考えて」機械化することで介護職が健康状態を保ちながら、長い年数にわたり仕事を続けられることになる。また、移乗の際も言葉を交わすことが可能になり、結果として介護を受ける側の満足度も高まる。
特養職員時代、管理職になってから移乗用リフトを積極的に導入した。夜勤1人体制で勤務時の移乗介護の時間を人力とリフトの時間差を調べたが15分程度の差だったと記憶している。また、夜勤明けの疲労はどの職員も体感できるぐらい違っていた。だから私は介護現場にリフトを導入することは賛成する。
— 中野 一茂 (@nakano00k) August 5, 2016
移乗用リフトのデモを行いました。これからも積極的に、職員の腰痛対策に力を入れていきたいと思います!( ̄^ ̄)ゞ pic.twitter.com/9Zzvg9vi3n
— 介護老人保健施設 楢葉ときわ苑 (@n_tokiwaen) November 12, 2013
日本の福祉の現場は、何を優先していくべきかを価値観ではなく、現実的な観点からも考えることが必要なのではないだろうか。