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「水商売の接客業」という仕事と19歳シングルマザーの死

スナックで接客する女性の仕事と19歳シングルマザー暴行死

スナックで接客する女性の仕事を、その家族として間近で見たことはありますか。彼女たちの生活の苦労を、本人の口から嗚咽とともに聞いたことはありますか。彼女たちは仕事に文句を言わないし、客に苦労はあっても不平は言いません。彼女たちはプロであり、仕事の部分は自分の責任と理解し、きちんと実行するからです。

でも、彼女たちの多くは、離婚歴があり子どもを持ち独身で、経済的に貧しい状況にあります。籍の上で夫を持ちながらその夫からの連絡は途絶え、生活の責任を金銭面もろとも抱え店を転々とせざるを得ない女性もいます。未婚だけど小さな子どもを持つシングルマザーもいます。

スナックのママの息子

スナックの接客業に就く女性にはさまざまな事情のある人がいます。子どもを連れて夫のDVなどから逃げ、住所を隠して働く女性もいます。場合によっては、名前を変えて働く人もいます。

スナックのママ

今から20年ほど前、私の母はスナックのママとして働いていた時期がありました。私自身は、営業中の店に遊びに行ったことはないし、他の店であっても客として飲みに行ったことはありません。

しかし、母親がママという立場で仕事をしていたため、夜間に営業する水商売の内情や働く女性の事情について、客としては見ることができないような側面から入ってくる情報がありました。

DVから逃げ出した子ども2人連れの女性

母が働いていた店は、当時で25年ほど続く地元では名の知られたスナックでした。店主が私の母をママに雇ってから現在にいたるまで、店の歴史はさらに25年ほどが経過しています。今では2人とも水商売から引退し、その店も完全に閉めています。

当時、母と一緒に働く接客担当の女性の中に、店の住所とは違う土地から店主を頼って働きに来る女性がいました。その女性は、以前から母と店主の知り合いだった人で、夫から暴力を受け子どもへの危険も感じたことから、知り合いである店主を頼って勤めに来ていたようです。

その後、その女性は高齢となった自身の両親に対する介護の必要に迫られることになり、もとに働いていた地元に戻るため結局半年ほどで店を辞めざるを得なくなりました。転居していく最後の電話で、「ママとずっと働きたかったねえ」と、彼女は泣きながら話していたそうです。

出水市の寒い海岸沿いのスナック

店主とともに母は仕事がら同業の知り合いも多く、逆に自分たちが客として知り合いの店を訪れることがありました。他店のサービスを学ぶため、一見のスナックやバーなどに入り他の飲食店の様子を観察するのです。

その中で、鹿児島県薩摩半島北部の出水(いずみ)市という地域に出向いたとき、昼間営業しているスナックを偶然見つけ入ったそうです。

働く女性にたまたま中国出身の方がいたらしく、とても気の利く接客に母は感心したと話していました。そして、なぜ中国からわざわざ出水のようなところまで働きに来ているのだろうと気になった母は、その女性に「いま、幸せですか」と聞いてみたそうです。

彼女は「もし幸せなら、こんなところにいません」と、微笑みながら答えていたということです。

新橋のキャバクラ店で19歳シングルマザー死亡

東京、新橋のキャバクラ店で働く19歳のシングルマザーの女性が、実質的な経営者とみられる男性から殴るけるの暴行を執拗に受け死亡するという事件がありました。急性硬膜下血腫の傷を負うほどの重体となり、意識不明の状態で病院に搬送されたものの、その後、死亡が確認されたとのことです。

水商売で働くすべての女性の人権

この事件を知り、水商売で働く人のための労働組合「キャバクラユニオン」から声明が出されました。その概要は、

「キャバ嬢にとって、この事件は、働く女性を支配するキャバクラ業界の抱える問題の氷山の一角で、日常的に暴力を受けたり差別されたり恐くて店を辞めることも出来ない女性が多くいる」

というものでした。

必須とされる水商売の社会的地位向上

スナックで働く女性たちも、労働環境の面であまり保証されているとは言えません。多くは賃金の面で、また、労働時間や勤務日数の厳守、休日の保証という点でも。

労働環境の保全

店の治安を保ち反暴力を徹底し、彼女たちの物理的な安全を確保することはまず最初にやらなけれならない課題です。さらに、確実な支払日の徹底など賃金の曖昧さを正し、子どもを安心して安全に預けられる託児施設などの設備を整えることで、親は安心して勤務に専念することができるでしょう。

長期的な視野に立てば、それは子どもの育てやすい安心して出産できる社会の実現にもつながります。少子化を食い止めることにも一役買うでしょう。水商売の業界の景気が良さは、経済が成長していることを意味します。

すべての職業に尊敬の念を

労働市場では、特定の職業に対する固定観念がまだ根強く存在します。スナックなど水商売の接客業では、労働環境は悪いもので、我慢し理不尽を甘受することが当然とされるような風潮があります。

しかし、水商売は専門性の高い仕事で、豊富な経験と高度な対人スキルが要求されるものです。深夜から早朝にまでおよぶ夜の水商売の接客業が、既婚であれ未婚であれ小さな子どもを持つ女性にとって安心して選ぶことのできる職場になったら、彼女たちの社会的な地位をもっと高めることもできるのではないでしょうか。

水商売で働く女性の労働条件と労働環境を守るため、水商売に対する社会的な偏見を無くしましょう。彼女たちが自分の仕事に揺るがない尊厳と自身を得られる社会を実現しなければなりません。

母が勤めていたスナックの客に、「水商売なんて、楽でいいよね」と頻繁にこぼす女性がいたそうです。その女性は夫が高収入で、自分自身はほとんど社会で働いた経験のない人だったようです。もし、水商売を楽な仕事だと思う人がいるなら、

「じゃあ、同じ仕事をあなた今ここでやってみなさいよ」

と、その人に問いかけたいと思っています。

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