”風疹ワクチン接種”に要注意!自己免疫疾患患者の予防接種にはリスクがある
前編では、妊婦の風疹感染が胎児に及ぼす影響の危険性、について紹介しました。今回は、自己免疫疾患患者が知っておくべき「風疹ワクチン接種のリスク」について紹介します。
ざっくり
自己免疫疾患患者の風疹ワクチン接種は慎重に
クローン病や、潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)や、関節リウマチなどの「自己免疫疾患」の患者の多くは、「免疫抑制剤」を使用しています。その名の通り「自身の免疫力を抑える」ことで疾患の活動を弱める効果が期待できる、とても有効的な治療法だからです。
自己免疫疾患とは
ヒトの免疫力は、体内に侵入してきた異物に対して、それを排除する役割を担っています。ところが、自分自身の正常な細胞や組織に対しても、過剰に反応し攻撃を行い、症状を起こしてしまうのが、自己免疫疾患なのです。
免疫力を抑えることで生じるリスク
免疫力を抑えるということは、ウイルスや細菌などの外敵と戦う力が弱まっている状態にあるため、皮肉にも、感染やワクチン接種によって、発症のリスクが高まってしまいます。
風疹ワクチンは生ワクチン
生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱め、病原性をなくしたものを材料として作られています。毒性を弱められたウイルスや細菌が、体の中で増殖し免疫を高めるという仕組みです。
毒性を弱めたとはいえ「生きた病原体」です。人によっては、アレルギー反応を起こしたり、免疫力の低い人は、感染症を発症する可能性があります。
主な免疫抑制剤の生ワクチン接種に関する注意事項
風疹の流行をニュース等で知ると「予防接種を受けなければ」と考えるでしょうが、まずは現在使用している、免疫抑制剤の注意事項や、禁忌事項に「風疹ワクチンの接種」がないかきちんと確認を。
- レミケード・・・レミケードを使用した治療を行っている場合、生ワクチンの接種を避けること。接種する場合は、投与後1ヶ月以上空ける必要がある。ただし、接種により感染症を発症する恐れがある。
- ヒュミラ・・・ヒュミラによる治療中は、免疫力が低下し、生ワクチン接種で感染症が発症する恐れがある。そのため生ワクチンの接種は受けないこと。
- ステラーラ・・・風疹などの生ワクチンの接種は、避けること。免疫力の低下により、感染症が発症する恐れがある。
- アザニン・・・薬剤により、免疫が抑制されているため、生ワクチンを接種すると、発症する恐れがある。
- ステロイド治療・・・免疫力を低下させるため、生ワクチンによる感染の可能性がある。生ワクチンの接種は、ステロイド治療開始までに行うこと。
少し前に流行っているとニュースになっていた時に、自分も受けた方が良いのでは?と色々調べていてこの注意点に辿り着いたのだが、自己免疫疾患(膠原病)で投薬中だと風疹の予防接種は出来ないらしい。妊婦さんも。 pic.twitter.com/9GnEdFkgc9
— ⓢⓞⓓⓐ (@soooooda195) 2018年11月24日
感染と拡散の予防
風疹の流行を抑えるためには、「感染しない」「感染しても拡散しない」という一人ひとりの高い意識が大切です。過去に予防接種を受けたかわからない人や、風疹にかかったことがあるかわからない人は、風疹の抗体を保有しているかを調べられる抗体検査や、予防接種を受けてみましょう。
風疹抗体検査、受けてね~
妊婦さんが安心できる
社会であってほしいです🤰💓https://t.co/t2hEhUOVZK#風疹 #風疹抗体 #抗体検査 #妊婦
🙂私は抗体あります🙂— YÜKÅ🌹@TE PO E TE AO (@yuka_poerava603) 2018年12月4日
誰にでもできる”感染予防”
感染予防としては、予防接種を受けることがとても有効的な方法なのです。しかし、妊娠中の女性や自己免疫疾患患者のように、受けられない人もいます。そんな人たちでも、日常生活での簡単な心がけによって、感染リスクを下げることができます。
- 外出先から戻ったら、手洗い・うがいをきちんとする。
- なるべく人の多い場所には行かない、長時間滞在しない。
- 外出先での飲食前にも、手洗いや消毒などで手を清潔にする。
自治体によっては、生まれてくる子どもを「先天性風疹症候群」から守るために、妊娠を希望する女性や、その配偶者等を対象とした、抗体検査を無料で実施している場所もあります。最寄りの保健所等に問い合わせてみましょう。
12月新たに4日間の抗体検査日を設けられました
大阪市民の妊娠を希望する女性とその配偶者や妊婦の配偶者が対象で3日から受付です😃大阪市 風疹の無料抗体検査枠を拡大(ABC NEWS 関西)https://t.co/l1KWwvmY2F
— いずみん (@nymim3311) 2018年12月1日
風疹に感染したら
- 急な全身の発疹や発熱といった症状が現れた際は、早い段階で医療機関に連絡をしたのち、受診する。
- 咳が出る場合は、咳エチケット(マスクの着用・ハンカチやティッシュで口を押さえるなど)で周囲に配慮し、飛沫感染を防ぐ。
- 医療機関を受診する際も、マスクを着用し感染を広げないように注意する。
- 感染拡大を防ぐため、公共交通機関等の利用を控える。
感染状況の新しい情報は、国立感染症研究所のウェブサイトでも確認することができます。各都道府県の感染者数も確認できるので「住んでいる地域の状況を知りたい」「旅行や出張などの予定がある」といった場合に、参考にしてみてください。
まとめ
自己免疫疾患に対する免疫抑制治療は、たしかに症状を改善してくれますが、感染症などにかかりやすく、重篤化する可能性も高まってしまう「諸刃の剣」です。免疫力の低い状態で感染すると、完治するまでに通常よりも時間がかかり、最悪の場合、命を落とす可能性もあります。そのため、自己免疫疾患患者はもちろん、その周囲の人たちの、日頃からの感染症に対する正しい危機管理が、とても大切なのです。