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2018.11.10:フリーペーパーVol.32発刊!

「赤い華」錦城 薫〜ドラマ「避暑地の猫」主題歌

もっと評価されるべき作品1―「赤い華」錦城 薫

誰もが、心の中に自分だけの最高の芸術を秘めているはず。それは音楽だったり文学作品だったり、昔もらった手紙の一節だったりするでしょう。

そんな、自分が思うだけなのかもしれないけど「もっと評価されるべき」として広く知ってもらいたい作品を、小出しにしていきます。

宮本輝『避暑地の猫』

錦城 薫による楽曲『赤い華』は、所属レコード会社NECアベニューから1988年8月21日に発売されています。

楽曲は、当時4話限定で放送されたドラマ「避暑地の猫」のエンディングテーマとして使用されました。

当時流行していた日本のポップミュージックとは一線を画すような独特な曲調は、強烈なドラマ作品の内容とともに、短期間ではあるものの際立つ存在でした。

昭和の終わりとともに

1988年8〜9月という時期は、昭和最後の年の前年、昭和63年です。当時の日本のテレビ放送では、昭和天皇の体調変化が頻繁にテロップで示されていました。ドラマ「避暑地の猫」だけでなく、ほぼすべてのチャンネル・番組で、テロップによる病状と番組はセットで放送されていました。それは翌、昭和64年1月まで継続しました。

錦城薫「赤い華」

肝心な曲についての感想ですが、一度聴くだけなら「清々しい爽やかな曲」です。

錦城薫さんによる、透き通る高音の歌声が、聴く者を魅了するでしょう。その後、歌詞をきちんと読むほどに、内容の深い闇の部分が見えてきます。そこからが、この曲の本当の鑑賞だといえるでしょう。

このまま闇に落として二度と帰さない

「赤い華」とは「惑わすもの」であり、「どこまで摘んでも赤く咲く花」です。
それは「愛を試す」ものであり「心に燃える」赤い花であると、歌詞は描写しています。

楽曲中の主人公「私」は、「季節はいつか変わると知って」「(あなたを)愛し」ます。さらに、「あなたが言い出す前に(自分が)去っていく」と、私は決めていました。

しかし、現実にとった行動は「遠い目をして次の風を待つあなたを、このまま闇に落として二度と帰さない」というものでした。

曲の終盤、赤い華は次のように描かれています。「触れてはいけない伝説の、私を惑わす赤い花」であると。さらにたたみかけるように、「届かぬ思いに群れて咲く」と、歌詞は締めくくられています。

赤い華(花)とは、形容される多くの例文から類推するに「嫉妬」の象徴なのかもしれません。引き剥がそうとしても消えることのない煩悩が嫉妬です。さらに、人を試し、自らが身を引くことより対象の相手を闇に突き落とすようなエゴイズムの象徴が、嫉妬であるとも言えるでしょう。それら嫉妬を形容する言葉が、歌詞のあちこちに散りばめられています。

ドラマの主演だった高橋良明さんは、約半年後に交通事故で亡くなっています。
宮本輝の同名小説をほぼ的確にドラマ化した番組内容からも、不思議で運命じみた厳(おごそ)かな不気味さが、いつまでも私の心を捉えて離しませんでした。

「勧める」という名のセラピー

もっと評価されるべき音楽、本、映画、その他さまざまな芸術的作品が誰の心のなかにもあるでしょう。そういうものは、機会を見つけて誰かに伝えることで楽しさを分かち合うことができます。

自分が良いと思うものは、良いと思っている自分自身を的確に示してくれるものです。だから、好きなものを紹介することは、自分という人間を知ってもらうための都合の良い手段です。

好きなものを紹介すると気分が晴れやかになりませんか?

晴れやかな気持ちで何かを勧めるあなたの生き生きとした表情が、相手との距離をもっと縮めてくれるはず。