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2018.11.10:フリーペーパーVol.32発刊!

腐った人生だと言われても、僕は何も思わない。

朝にぱちりと目が覚めて、パンを食いちぎり、イエローのリュックを背負って街に出た。僕は他人を避けながらふわりふわりと空気を刻む。
他人の声を含んだ喧騒が、僕には意味のない拍手のように聞こえた。

学校で、
「今度カラオケに行こうぜ」
と、誘われて、悪くないなと思って「行くよ」と返事を返した。すると嬉しそうに目を細めたそいつは、僕を友達だと思っていて、そういう表現をする。
僕からしたら、この関係に「友達」という名前がついているだけで、本当に「悪くないな」と思っているだけだ。
土曜日に二人でカラオケに行こうという約束をした。

カラオケボックスに入って、そいつは最近流行りのポップな曲を歌う。
「どう?」
とすっきりとした表情で聞いてきて、
「良いな、と思った」
そう答えると、嬉しそうに目を細め、僕にマイクを渡してきた。
僕がマイクを握って、最近流行りのバラードを歌うと、そいつは拍手をしていた。

これで解散。という時間になって、僕らは太陽が薄くなっていく街に出る。
意味は分からないけれど、料金を払う時に、
「ありがとうございました。この中から好きなものを持って帰ってください」
と受付のお姉さんが、たくさんの飴が入ったカゴを見せてきた。僕はイエローの飴を取って、口に含んでみると、何かをごまかしたかのようなレモンの味がする。二人は違う色の飴を選んで、口に含んでいたけれど、二人とも同じ感想だったらしい。僕らは顔を見合わせて、少し笑った。

家に帰りつく頃には、家の窓から部屋の光が見えていた。リュックを肩からおろして、手に持ってリビングに入ると、
「あら、ご飯出来ているからね」
と、お母さんが洗濯物をたたみながらキッチンを指差す。
「分かった。メニューは何?」
「シチュー。最近寒くなってきていない?」
「僕、まだそんなに思っていないんだけれど」
「まあ、いいじゃない。温めなおして食べなさいね」
「うん。ちょっと、リュックを置いてくる」

そう言うと、お母さんは、そうね。と言って、また洗濯物に手をつけ始めた。

自分の部屋に戻って、僕はリュックをベッドに、ぽいっと投げる。中身はそんなに入っていないから、ぽさりと何だか情けない音がなった。
ふう。と息を吐いて、何気なくミュージックプレイヤーに手を伸ばす。ぽちぽちと曲を選んで、さっき「友達」が歌っていた曲を流してみた。ポップなその曲に心が惹かれることはない。けれど、
「サビの頭が、耳から離れないんだよ」
と言っていた意味が僕も何となく分かった気がする。キャッチーな曲だった。

本当に、僕は友達を「友達」と言えるだけで、自分勝手に生きている。それを付き合いが悪いだとか、そっけないだとか言われるけれど、そんな言葉ですら自分勝手に捨ててきた。
それでも、僕は僕がどこか曲がっているような気がするし、けれど、どうしたら良いかも分からなくて、とりあえず生きている。
僕が生きている瞬間は作業のようだ。でも、それも悪くないし、少しだけれど僕を囲ってくれる人もいる。僕は、言うならば、つまらなくどうしようもない人生を歩んでいるのかもしれない。捻くれていることをごまかして、おまけに何もかもに情がないのだ。もしもこれが、腐りきっていると言われたら。それでも僕は死なないし、誰も僕を殺さないはずだ。

今日が終わる。きっと明日も、とりあえず生きているだろう。

END

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