バリアフリー観光先進地・当事者から学ぶ盛り沢山の内容
バリアフリー観光を推進している方々が中心になって開催している「バリアフリー観光推進全国フォーラム」。第8回目となる今年は7月6日、鹿児島市で開催されました。NPO法人PADM(遠位型ミオパチー患者会)・YouTube『車椅子ウォーカー』・アプリ『WheeLog ! 』の代表を務める織田友理子さんや国土交通省 観光庁 観光課長 鈴木貴典さんの基調講演、伊勢志摩・松江・指宿のバリアフリー観光先進地事例発表など、盛り沢山の内容でした。
ざっくり
バリアフリー観光推進全国フォーラムとは
バリアフリー観光や誰にでもやさしいまちづくり構築に取り組んでいる地域は全国各地にあります。日本バリアフリー観光推進機構に加盟している団体は北海道から沖縄まで23団体。全国の観光関係者や障害をもった方々が集まり、バリアフリーの視点から観光を考え、これまでの特色ある成果の発表や誰にでもやさしい観光地づくりの可能性を探るフォーラムです。
第8回 かごしま大会
日本バリアフリー観光推進機構主催のバリアフリー観光推進全国フォーラムも今年で8回目。今回は鹿児島での開催でした。フォーラムの内容としては、基調講演・バリアフリー観光先進地事例発表・トークセッション。
フォーラム会場内には全国13ヵ所(秋田・山形・ふくしま・湘南・愛知・伊勢志摩・とっとり・松江山陰・四国・別府大分・佐賀嬉野・沖縄・かごしま)のバリアフリーツアーセンターのブースがありました。
展示ロビーでは、電動車いす「RASREL(ラスレル)」の試乗体験コーナー
と鹿児島県・日置市・南さつま市の観光協会のブースがありました。
外ではGSE 南薩観光さんが5月から導入している、車椅子を最大6台搭載可能なリフト付き観光バス「PREMIUM X LINER」の試乗体験ができました。
特産品販売ブースでは12店舗が出店していました。わたしたちの事業所、ひふみよベース紫原も出店させていただき、4月に立ち上げたアパレルブランド「instinc(インスティンク)」と「HIFUMIYO TIMES」の紹介をさせていただきました。この場を借りてお店に立ち寄ってくださった方々にお礼申し上げます。
新たな学び
バリアフリー観光推進全国フォーラムでは、バリアフリー観光の先進地から、国の取り組みから、当事者から、多くの学びが得られると思いました。今回参加してみて、わたしの中ではフォーラム出演者すべての方々の言葉から新たな発見をいただきました。その中でも印象に残ったのは、基調講演で語ってくださった織田友理子さんの体験や言葉でした。
車椅子をつくること=障害を受け入れること
織田さんは進行性の筋疾患「遠位型ミオパチー」という病気を患っています。遠位型ミオパチーは国内に300~400ほどしか確認されていない超希少疾病です。体幹から離れた筋肉、手足の先から筋力が低下していく病気です。
足の先の筋力も早い段階で低下していくことから車椅子を使うようになるのですが、自分用の車椅子をなかなかつくることができなかったそうです。借りている分だとまだ自分の障害をごまかせるけど、自分専用の車椅子をつくるということは、この障害と本気で向き合っていかなければならない…織田さんにとっては「車椅子をつくること=障害を受け入れること」だったそうです。
遠位型ミオパチーを発症する確率は0.0003%。なんで自分が…と思ってしまう確率ですよね。今は病気の進行を受け入れる日々と語っていました。
遠位型ミオパチー患者会織田友理子代表等が「遠位型ミオパチー・三好型及び肢体型2Bの治療薬開発」に関する要望に来られました。先駆け審査指定選定作業中であることを伝えさせて頂きました。行動力に溢れた織田代表。心から尊敬します。 pic.twitter.com/nzg0gzJ6ee
— 古屋 範子 (@Noriko_Furuya) 2017年3月8日
情報がバリアフリー化を推進できるのでは
織田さんのライフワークのひとつである『車椅子ウォーカー』。動画サイトYouTubeに車椅子スポットを紹介する取り組みです。車椅子に乗って13年となる織田さんですが、当初はわからないことだらけ。1年半、こわくて外に出られない時期もあったそうです。
情報があれば、どこへでも行けるのではないか!
諦めなくてもいい、外へ出ていこう!
情報がバリアフリー化を推進できるのではないか!
このような思いから『車椅子ウォーカー』を続けているとのことです。
個人的にはカテゴリーのひとつに「鹿児島」があるのがすごく嬉しく思います。
情報によって世界が変わる
あなたの「行けた!」が誰かの「行きたい!」になるバリアフリーアプリ『WheeLog!』の発案者でもある織田さん。『車椅子ウォーカー』では、情報を出すのに限界がある、ひとりじゃ何年かかるんだ!と自分でツッコミを入れていました。
みんなで情報を投稿しあって共有しようという考えの『WheeLog!』。世界中のバリアフリー情報をひとつのアプリで共有できます。
ひとつのバリアフリー情報がみんなで共有できる…情報によって世界が変わる、広がる…すごくいいですよね。織田さんは「情報は当事者を幸せにする」とも語っていました。
Wheelogが受賞!世界に広げていこう!
>国際的に先進的な取り組みをしているプロジェクトとして、この度Zero Project(ウィーン)から賞を受賞することになりました!https://t.co/Tt76FmAOGP@yurik00da @Ito_morioka pic.twitter.com/UXerG4ZCjb
— 吉藤オリィ(オリィ研究所 所長) (@origamicat) 2018年2月15日
バリアって
織田友理子さんの講演をはじめ、バリアって何だろう、と考えさせてもらった1日でした。段差などの「物理的なバリア」、自分がもっている、または、他人がもっている「心のバリア」。
どちらのバリアも解消できれば、もちろんいいとは思いますが、「物理的なバリア」の解消には限界があります。でも「心のバリア」の解消は、そのひとそれぞれのものの見方、考え方を変えれば可能性は広がります。
バリアフリー観光推進全国フォーラムに参加してみて
「バリアフリー観光推進全国フォーラム」。わたしは初めて参加しました。一言でいうと、新しい発見と学びの場となりました。自分の知らないところで、様々な工夫が、考えが、取り組みが行われていることがとても嬉しく、日本における観光の可能性を感じました。多くのひとに知って欲しい情報がたくさん得られる、学べる「バリアフリー観光推進全国フォーラム」。来年はぜひ参加してみてはいかがですか?