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ヤマト運輸はコンビニ受取や宅配ロッカーを本音で望んでいるのか?

一人暮らし世帯の増加やネットショッピングの普及などを背景に、宅配業者の不在再配達問題が大きな話題となっています。

対策として、都市部や人口密集地を中心に、コンビニエンスストアでの受け取りサービスや受取ロッカーの設置などが進んできました。

24時間営業のコンビニエンスストアは全国いたるところにありますし、小さな店舗ながらコンビニのセキュリティの確かさは、かなり信頼できるものといえるでしょう。

大きな駅やショッピングセンターなど、毎日頻繁に利用することの多い施設に、楽天など大手通販業者の中には、受け取り専用のロッカーを設置しているところもあります。

これらの工夫は、仕事やプライベートの事情で帰宅の遅い単身者が増えた現代に好評を集め、サービスとして拡大しています。

一方、これらのサービスが今後さらに拡大し、ロッカーの設置数もコンビニ受け取り希望者も増加し、将来的にはコンビニの宅配サービスに乗せるかたちで自宅までの配達を代行し始めたとしたら、宅配業者の仕事はどこまでコンビニに移ってしまうのでしょう?

同時に、宅配業者が1件1件自宅に訪問するというこれまでのサービスが、今後も同じように必要なのだろうかという疑問もわいてきます。

宅配業者の店舗エリアはコンビニに敵わない

日本の宅配業主要3社、ヤマト運輸佐川急便日本郵便はそれぞれ、全国に数多くの営業所を構えています。配達時に不在だった場合、配達員が荷物の代わりに不在票を残すので、再度日時を指定して再配達してもらうことができます。

再配達以外にも、不在票に運転免許証などの本人証明をそろえ、営業所まで受け取りに行くこともできます。しかし、その営業所はコンビニほど多くはありません。

約60万人の人口を抱える鹿児島市でも、車でも保有していなければ大型の荷物を受け取って自宅まで運ぶのは難しいでしょう。

コンビニなら、大きな道路の交差点ごとに並んでいるような状況ですから、付近に住んでいれば歩いて受け取りに行くこともできるでしょう。仕事終わりについでに持って帰ることもできるはずです。

コンビニも進化し、個食配達やネット注文された商品を宅配するまでにサービスが進んでいます。
もともと配達インフラはあるのですから、コンビニ受け取りを個食宅配と合わせて行えば、サービスとしてさらに充実するでしょう。

不審者から逃げてきた子どもの駆け込み場所に指定されているコンビニも存在するほどで、その利便性は民間の交番のような役割まで彷彿とさせます。

他人に来てほしくないという本音

ネット通販で買い物するにもさまざまな理由があるでしょうが、値段や限定商品という事情の他に、人と関わることなく1人でじっくり商品を吟味したいという思いもあるでしょう。

そのような主張のある人なら、配達員であっても出来るなら他人に自分の部屋に来て欲しくないといった個人的なこだわりの強い人もいるかもしれません。

私自身もそのようなところがあるのですが、わざわざネットで商品を買うことが示すように、若干の人嫌いの特性が、出ているのではないでしょうか。

そのような考えの良し悪しは別として、顧客のニーズがそこにあるなら、人との接点をなるべく省くサービスが今後は拡大していくのかもしれません。

利益の取り合いか

コンビニの業務は多岐にわたり、宅配便の受け取りサービスの他にも、ゆうパックなどの発送代行、公共料金の支払い、切手やハガキ、各種イベントなどのチケット販売、Amazonなど通販料金のコンビニ支払いなど、さまざまな代行サービスを行っています。

それらの業務は直接的に店の商品を扱うわけではないためか、サービス自体が大きな利益を生むものではありません。

売り上げ全体のパーセンテージで利益を考えるコンビニにとって、店まで足を運んでもらうこと自体が重要で、ついでに何らかの商品を買ってもらえるならそれでいいわけです。

懸念されるシェアの奪い合い

現在、宅配業者の店舗受け取りのために場所を提供しているコンビニが、受け取りサービスに大きな利益を期待し始めたとしたらどうなるでしょう?

受け取り場所の提供そのものに対する金銭的な見返りを、コンビニがこれまで以上に要求するかもしれません。宅配業者との間で請負額の交渉が始まるということです。

コンビニに届いた荷物を、自宅以外の職場や休日の行楽先まで運んでくれたり、毎日訪れる飲食店に届けてくれたりするサービスが生まれるのかもしれません。

それは、小さな店舗が乱立するコンビニだからこその強みです。
同様のサービスで他に追随できるものは他になかなかいないでしょう。

もしも、宅配業者が現在行っているサービスの一部をコンビニが完全に請け負うことになったら、より細やかなサービスに進化することも期待できるでしょう。

一方、宅配業者側は利益を生む可能性を1部門失うことになりますが、丸投げで得る利益が莫大なものであれば宅配業者側も望むところかもしれません。

反対に、業務部門の移譲を恐れているなら、現在の受け取りサービスもロッカーの増設も、宅配業者は本音ではあまり望んでいないのかもしれません。

変な改革が起きないよう「今くらいのバランスでやっていきたい」というのが本心なのかもしれません。

再配達問題がきっかけとなって宅配業者が改善を図ったのは、配達員の賃金上昇正社員登用など、従業員の待遇改善でした。身内にお金をかけたのです。

それは、当然といえば当然ですが、あらゆるサービスを代行するコンビニなど外部の業者に依存度を強める方法もあるなかでの自社組織の改善は、意外でもありました。

「自分たちの業務を他に渡したくない」という本音が感じられたのです。

近ごろ多く報じられる、楽天やDMMなどのさまざまな企業が、自社の本業にこだわらず次々と貪欲にトレンドの業種に手を出していく様子を目にすると、そのような市場の奪い合いがいつどこで起きても決しておかしくないと、思わずにはいられません。

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