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台頭する将棋AIと羽生善治永世七冠を見て思うこと

人工知能AIによる将棋ソフトが棋士の存在を脅かすほどに実力を高め、名人をはじめ多くのトップ棋士を次々と撃破する時代に入りました。

12月5日、第30期竜王戦第5局2日目、羽生善治棋聖が4勝1敗で竜王位の奪還を決め、すでに獲得していた永世称号に永世竜王を加え永世七冠を達成しました。

羽生竜王は、公式に組まれた将棋AIとの対局経験はないものの、現在フリーで流通している将棋ソフトは使用済みとし、自らの思いを語っています。

人間として指す将棋

「本質をまだ分かっていない」

とは、将棋について羽生さんが語った自らの思いです。
盤面における指し手の可能性、それは「10の220乗」に及ぶとのこと。

「自分はまだその世界のひとかけら、あるいは、ひとかけらすら分かっていないのかもしれない」

99回のタイトル獲得を成し遂げ、なお謙虚な向上心に満ちた羽生さんの強さの秘訣が現れた言葉と言えるでしょう。

研究した新手の出しどころ

変化の激しい現代の将棋を踏まえると、特定のタイトルを保持し続けるために新手や新戦術を蓄えるというやり方は時代にそぐわないと、羽生さんは語ります。

現代の高度な情報社会のなかでは、自分が新たな発見をしたとしても、それはすでに他の知るところである可能性が高いと言うことです。

そのため、他の棋戦で研究した成果を特定のタイトル戦に集中して発揮するまでとっておくという作戦は、現代では無理だろうと語っています。

今後の目標

これまで、故・大山康晴十五世名人が保持してきた、最多勝記録1433勝を塗り替える期待も高まっています。羽生さん自身も、竜王戦の後、最多勝記録には意欲のあることを語っていました。

今からおよそ一年前に引退した「ひふみん」こと加藤一二三先生についても話題に上げ、60年間にわたり、勝負の世界を生き続けてきたモチベーションについて賞賛と感嘆の気持ちを語っていました。

AIは、とにかく答えが速い機械です。
だから、出来ないことはすぐに明確に分かります。

そして、AI自身が自分にできないと判断したことは、もうそれ以上深く考えても本当に出来ない場合が多いです。
出来ないことさえ、AIは正しく判断してしまうからです。

一方の羽生さんは、盤面に向かって長考した末、思いもよらぬ新手を指すことがあります。いわゆる「羽生マジック」です。

それが出来るのも、人間が自分の可能性すら正確には把握出来ていないからと言えるでしょう。出来るかどうかわからないことにも可能性を見出すのが人間の特徴でもあります。

AIが実質的に「将棋という競技に限定して」プロ棋士を超えたのは、2013年に団体戦で3勝1敗1持将棋とプロ棋士に勝ち越した時点と考えられます。

しかしおそらく、AIは自分が理解していることの範囲については理解していません。これ以上知らない方がいい、という考え方も理解できないでしょう。

私自身はAIとの共存すら必要ないと考えていて、AIは人間が作ったものなのだから平和的な方法であれば、自由に利用すればいいだけだと思っています。

自己学習能力で人間を超える存在になってしまったものを開発した人間が、自分たち人間の技術力の証として、ノコギリや金づちと同じようにAIを使えばいいと考えています。

周知の通り、ここ10年で棋士はAIに追い抜かれました。しかし、将棋というゲームの特性上、さらに10年、人間が研究を重ねることで、棋士は再びAIを抜き返すかもしれないと期待しています。

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