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判断基準は判断能力―現行禁止の知的障害者臓器移植問題

日本の臓器移植に関する法律が大きく変わったのが1997年臓器移植法の成立時でした。
それまで、脳死患者からの臓器提供は法的に認められ難いもので、医学界でも脳死臓器移植はタブーとされていたのです。

さらに、2009年には改正臓器移植法の成立により、禁止されていた15歳未満の小児からの脳死臓器移植も認められることとなりました。

しかし、判断能力が無いとされる「知的障害者」からの臓器提供、臓器移植は今でも基本的に認められていません。

日本初の臓器移植

日本で初めて脳死患者からの心臓の臓器移植が行われたのは1968年8月、札幌医科大学の和田寿郎教授によるものでした。

しかし、当時の移植手術にはさまざまな疑問が投げかけられたのです。

提供を受ける患者には移植しか助ける道はなかったのか、脳死が確認され臓器を提供することになったドナーに救助される可能性はなかったのか。和田教授の快挙は、のちにマスコミから批判の的とされることになります。

有効な意思表示の問題

その後、1997年の臓器移植法により脳死患者からの臓器移植、2009年の改正臓器移植法により15歳に満たない小児からの臓器移植も可能となりました。

脳死患者から臓器提供する際、議論の的となるのが「本人の意思」確認の問題です。現在も「知的障害者等の臓器提供に関する有効な意思表示が困難となる障害を有する者」からの臓器提供は、本人の個人的な意思を示すドナーカードだけでは認められません。

提供は、最終的に主治医と話し合い、両者による同意がある場合のみに限られます。

ドナー候補者を護るために

このような臓器提供の制度が存在することには、さまざまな理由が考えられます。

臓器提供の意思表示をすることで、有効な意思表示が困難な知的障害者でも臓器移植が可能ということになれば、本人のドナーカードが仮に第三者により勝手に作成されたものであっても効力を発揮します。

たとえば虐待暴力などによって脳死に至った場合、障害の有無に関係なく本来、臓器移植は認められません。これは1997年の法改正以前であっても同じです。

海外、発展途上国などでは特に、虐待の後に臓器が売買の対象になったり、臓器売買の対象として人身を取引するなど、極めて非人道的な行為がおこなわれる現状があります。

日本国内においては、医師は患者に対し生命の続く限り最大限の治療に努め、すべての処置が取られた結果、やむを得ず脳死が確認された場合にのみ臓器移植は実施されるべきものとされています。

移植には、「ドナー候補者に対する医療は最善のものでなければならない(レシピエントへの移植のために、妥協されることがあってはならない)」という大前提があります。

現行の制度は知的障害者を違法な臓器移植の犠牲とさせないためにも必要なものといえるでしょう。
知的障害者には判断能力が伴わないおそれがあると、懸念されているのです。

障害の程度にかなりの差がある知的障害者全員に、この基準が適用されるべきか?という点については、実態に照らし合わせたとしても、線引きは難しいところでしょう。

医師による判断が、事実上の移植の決定理由になる点は、知的障害者本人による決定を、1人の人間による判断としては認めていないとも言えるものです。

知的障害者を保護する一方で、彼らの判断を有効な意思表示として認めない現在の方針は、生命倫理の観点からも賛否の判断が難しい問題と言えます。

これまで、脳死患者の臓器提供、小児の臓器提供など、身体的な面でその可否が議論されてきた臓器移植問題は今後、目視では判断することの難しい知的障害について議論の矛先が向けられることになるでしょう。

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