民間企業の障がい者雇用率が上がってきているとはいえ、やはり働く場においての障がい者への配慮はまだまだといっても等しく、障がいを抱える人の存在は無視できないし、配慮も必要であると思う。ただやはり実際に一緒に働くとなると、どう付き合ってきけばいいかわからない。そう考えている人が多いのではないか?
僕は普段ビジネス書といった類を読む事は少ないが、書店に「温かい会社」と書いたタイトルの本が並んでいると、つい気になって手に取ってしまうかもしれない。『日本でいちばん温かい会社』(大山泰弘/WAVE出版)。この著者である大山泰弘氏が会長と努める会社、神奈川県川崎市のチョーク工場・日本理化学工業株式会社は、なんと従業員の75%が知的障がい者だという。
きっかけは東京都立青鳥養護学校(当時)の先生が訪ねてきて、生徒の就職をお願いしたことだった。その時、著者で現在は同社会長の大山泰弘さんは「精神のおかしな人を雇ってくれなんて、とんでもないですよ」と断った。しかし先生の
「あの子たちはこの先、15歳で親元を離れ、地方の施設に入らなければなりません。そうなれば一生、働くということを知らずに、この世を終えてしまうのです」
という言葉を聞いて、とりあえず2週間の就業体験を受け入れることにしたそうだ。
それからというもの、懸命に仕事に取り組む彼女たちの姿勢に感銘を受けると同時に、仕事に熱心に取り組むあまり疑問を覚えるように。「なぜ楽な施設で過ごすことよりも、つらい思いをしてまで工場で働くことを選ぶのだろう?」そんな時に出会った住職の言葉がこれだ。
「人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは、次の4つです。その1つは、人に愛されること。2つは、人にほめられること。3つは、人の役に立つこと。そして最後に、人から必要とされること。障がい者の方たちが、施設で保護されるより、企業で働きたいと願うのは、社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証なのです」
周りの人に必要とされるならば、知的障害者だろうが健常者だろうが関係はない。「ありがとうございます」とただこの一声で喜びを感じてどんどんと仕事に打ち込める、やる気がでる。知的障害者に限らず、ちょっとした配慮を会社にしてもらうことで周りの人とコミュニケーションをとったり、与えられた業務を真面目に頑張って取り組むことができる。普通はまとまっている休憩時間を小刻みに分けるだけで、働きやすくなったりするものなのだ。
「彼らの理解力に合わせた仕事の方法を考えてあげれば、安心して持てる能力を発揮して、生産性も決して健常者に劣らない戦力になってくれるのです。大切なのは、働く人に合わせた生産方法を考えることなのです」
驚きなのが、大山氏が特に社員に教育指導をしていないという点。まだまだ配慮の少ない障がい者雇用において、この本の持つ可能性は大きそうだ。
健常者も障害者も関係なく仕事が出来る、日本理化学工業のような会社がもっともっと増える事を願う。
http://ddnavi.com/news/310012/a/