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「手紙」岡林信康、フォークの神様が綴る部落差別

主人公は、「部落」と呼ばれる被差別地域を出自とする若い女性です。
実家が商売を営む資産のある男性から彼女は求婚されます。

男性の両親は、女性が部落出身者であることを知り、「結婚するなら、店を任せない」と反対するのです。

この曲は、実在した女性が実際に遺した手紙をもとに作られたものとも言われています。

部落差別

江戸時代に作られた身分制度「士農工商」のその下にあった、穢多(えた)、非人(ひにん)。

人とさえ見られなかった彼らの血を引くものとして長く差別の的となってきた「部落住民」の現実を突き付けた楽曲「手紙」は、主人公女性による心からの悲痛な声「私は書きたかった」との言葉で、その歌詞を終えます。

尊いラブソング

仮に、曲の主人公であるこの女性が、手紙を書き上げたのち命を絶っているとしても、それは彼女にとって必然的な死であったのかもしれません。

愛するということは「みつるさんがだめだから、じゃあ別の〇〇さんにする」という性格のものではないでしょう。

岡林はなぜこの曲を書いたか

山谷ブルース」、「チューリップのアップリケ」などと並び、「手紙」は岡林の代表曲の一つとして挙げられる作品です。

1969年発売のアルバム『わたしを断罪せよ』に収録される初期の名作ですが、岡林は人前でこの曲をあまり歌わないといわれます。

現に、テレビからは長い年月に渡り「放送禁止歌」に指定され、メディアでの放送が自重される曲でした。

今でも、放送用に好んで使用される曲とはいえません。

この曲の伝えようとするテーマが具体的に明らかとなる「部落」という言葉が歌詞に登場するのはたった1回だけ。

たった一言だけ語られるその言葉が、女性の叫びをさらに悲痛なものに仕上げています。

牧師の家に産まれ、同志社大学で神学を学んだ岡林は、東京の山谷に身を置き、格差社会の現実を目の当たりにしてきました。

社会的な弱者に向けられる岡林の目線が常にリアルである理由は、自分自身で見聞きした本物しか信じず、心から湧き出る本当の言葉でしか語らない、岡林の本音が歌に滲み出ているからではないでしょうか。

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