藤井聡太四段が最年少プロ棋士と騒がれたことが、まるで随分昔のことのように思えます。
プロデビュー以来無敗の29連勝で連勝記録を打ち出した今となっては、もはやプロなりたての面影はなく、実力だけで比較すればすでにトッププロと肩を並べる存在になったといえるでしょう。
将棋界において、段位とは純粋に現在の実力を反映したものというより、それまでの実績に対し与えられる敬称と考えていいものです。
近年は、強さの指標として段位ではなく「レーティング」という尺度も用いられるようになっています。
これは、一度上がれば下がることがほとんど無い段位と違い、変化する実力差をリアルタイムに反映して棋力を数値化しようとする試みです。純粋に現在の実力を数字で明確に序列化できるものです。
藤井四段が使っていたおもちゃで藤井四段が量産されたとしても、誕生するのは将棋が好きで好きでたまらなくて人生の全てを投げ打って奨励会という地獄に身を投じて26歳までの三段リーグを抜けられなければ社会不適合者として社会に放り出される人間が出来上がるだけのような。
— トロイカちゃん(100歳)@ソ連が人間に転生しました/4/1おもしろ同人バザール (@uchidahiroki) June 27, 2017
以前の四段昇段規定
同じ四段になるにしても、不公平なことに時代に応じて四段になりやすい時期、なりにくい時期というものがありました。
現在の奨励会三段リーグというシステムは四段になるのが比較的難しい制度だと、棋界実績ナンバーワンの棋士がインターネットテレビ局の対談番組で話していました。羽生善治三冠です。
羽生三冠自身は、奨励会三段リーグで上位2名に入るというシステムで四段になったわけではありません。
羽生三冠が四段に昇段したのは1985年12月18日。
1974年度から1986年度までは現在のような三段リーグはなく、奨励会の二段以下と同様の昇段規定(9連勝または良いとこ取りで13勝4敗で四段昇段)で四段になれました。
人数の規定もなく、時期を半年ごとに区切ることもなくどの時期に集中して勝ち星を稼いでも良いところだけで判断してもらえる分、現在の奨励会三段リーグより四段になりやすかっただろうと思います。
ただし羽生三冠ほどの実力者であれば、制度に関係なく若くしてプロになっただろうとは思いますが。
マスコミは藤井四段の連勝記録に浮かれているが、プロになる直前、奨励会三段リーグで5敗(12勝)したことは、殆ど語られない。このリーグ戦はプロ棋士になる最終関門で、その過酷さで知られ、30人弱の内、上位2名しかプロになれない。つまり藤井君に勝ちながらプロになれなかった人が最低4人。
— rokuno kouichi (@RokunoK) June 28, 2017
フリークラスの九段と、奨励会の三段
名人戦という棋戦には順位戦というシステムがあり、棋士の序列を決める最も一般的な指標とされています。上からA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組、の5クラスに分けられています。
段位は落ちないものの、成績が振るわなければ順位は落ちていきます。
九段だけどC級2組、という棋士もいます。
C級2組でも負け続けるとフリークラスに落ち、順位戦に参加する権利も失います。
それでも彼らはその時点ですぐにプロの権利を失うわけではありません。
しかし、実力的には現役のプロに相応しい実力を持ち、ましてやフリークラスのどの棋士より実力的に上でありながら、三段リーグのルールに従って四段に上がれない実力十分の三段や二段の奨励会員が何十人もいることを思うと、「不公平な世界だな」と感じざるをえません。
「実力次第の世界とも言えないのではないか…」とさえ思えるのです。
今朝の #NewsPicks 野村さんのメールが大変感慨深かった。”
このまま退会すれば「将棋以外何も経験がない」という状態で社会に放り出されることになります。まさに、完全に退路を絶った状態に自分を追い詰めます。” #奨励会— KyonoMakoto (@MakotoKyono) June 29, 2017
入れ替え制度、三段の本音は?
奨励会員のうち、プロである四段に上がれる人数は全体の2割程度と言われています。
早い段階で新たな人生を選ぶことができれば幸いな方で、三段まで上がりながら年齢制限などの理由で退会する奨励会員も多くいます。
実力的にプロ最下位の棋士より強くてもプロになれないことは、考え方が細かすぎるかもしれませんが、純粋に実力を反映した世界でもないと思えるのです。
三段リーグを戦う奨励会員たちは、本音ではどう思っているのでしょう。
自分たちがフリークラスなどに在籍する高段のプロより実力的に強いであろうことは、自分で分かっているだろうと思います。
フリークラスのプロにしても負け続ければ強制的に引退させられますから、四段にになったからといって安穏としていられないことも知っています。
しかし、実力をもっとリアルタイムに反映するため、C級2組で勝率下位のプロと、奨励会三段勝率上位の会員とで、入れ替え戦をすればいいのに、と思います。
24のレートなら奨励会三段だと2900点くらいは普通にいるだろう。そこから頭抜けるということは3300近くは行っていたのではないか。佐藤名人や羽生三冠クラスでも3300点くらいだろうから、今ではそれより更に上の点数になりそうだ。こんな天才がまた出てくるとは…。 https://t.co/T9w9jbT6oy
— 土俵の鬼 (@800_long) June 19, 2017
そういったシステムが成立してしまうことに、不都合を感じるプロもいることでしょう。
入れ替え制度などまず実現することはないと思いますが、なるべく現行の三段リーグのような、あまりに過酷で実力を反映していない不公平ともいえる制度から有能な若手棋士を解放できないかと願います。
強さの定義にはさまざまなものがあり、将棋ファンの開拓などに長けた棋士は、その面で貢献しているという点から評価できるのかもしれません。
しかし、棋界の序列に関しては「寸分の狂いもなく」将棋の実力のみによって決定されてほしい。
コンピューターの棋界参入を阻害しないで欲しいし、弱いベテランは強い新人に席を譲って欲しい。
棋界が将棋の実力のみによって成り立つのなら、そういう世界に近づくべきだと思うのです。
AI将棋プログラム"ポナンザ"の開発者、山本一成さんの記事。
「人工知能は、黒魔術の影響が強くなっている」――“最強将棋ソフト”Ponanza開発者が語る https://t.co/SzQ0MfwwAx
>NHKスペシャル #人工知能が間違っていたら誰が責任を取るのか
— tweet ☯️ meme (@_Eugene___) June 25, 2017
それくらい徹底的に実力で締め付けた世界にする方が、三段までで退会する元奨と呼ばれる人々も納得して次の人生に進めるだろうし、勝負の世界の本来本当にあるべき姿に近づくだろうと思うのです。
それでも確かに、将棋の世界は比較的、日本の封建的な社会に比べれば実力に応じて若手が出世できる機会に恵まれているとは思います。
このような汲々とした考え方に辟易する方もおられるかもしれませんが、嘘のない実力だけの世界のほうが、はるかに「まし」、だとは思いませんか?
http://shuchi.php.co.jp/voice/detail/3394
via:WEB Voice
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E9%80%B2%E6%A3%8B%E5%A3%AB%E5%A5%A8%E5%8A%B1%E4%BC%9A#.E9.81.8E.E5.8E.BB.E3.81.AE.E4.B8.89.E6.AE.B5.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.B0
via:Wikipedia