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里見香奈女流五冠、女性初の四段プロ棋士を目指して

史上最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段が連勝街道を継続し、いままであまり将棋に関心のなかった人たちにも広く知られるところとなりました。

プロになって以来の公式戦は未だに負けなしの20連勝。竜王戦挑戦者を決める本戦トーナメントにも出場を決めました。

藤井四段が大きく注目を集めていますが、女流棋界にも活躍が期待される女流棋士がいることをご存知でしょうか。

里見香奈、を知っていますか?

将棋界には、女性のみを対象とした女流棋界というものが存在し、その中でも実力ナンバーワンと称されるのが、里見香奈(さとみかな)女流五冠です。

女流のタイトル棋戦は6大タイトルとなっており、そのうち5つのタイトル、名人王座王位王将倉敷藤花、を里見が保持しています。

そして、里見のすごさはこれだけに留まりません。

奨励会三段という、もう一つの顔

女流の世界でその強さを遺憾なく発揮している里見ですが、現在、主に男性プロ棋士の登竜門とされる奨励会にも挑戦しており、プロ一歩手前の三段に在籍しています。

奨励会三段に在籍する女性は現在2名、里見と、里見の後から三段リーグに上がってきた西山朋佳がいます。里見は女性で初めて奨励会三段に昇級した女流でもあり、パイオニア的な存在です。

女流としてはトップ棋士の名をほしいままにする里見でも、奨励会では三段。
いまだプロとは呼べない修行の身です。

奨励会の三段を通常のアマチュア三段と同じと誤解されることもあるのですが、両者の実力には雲泥の差があります。

アマの世界で五段でも、奨励会なら6級程度、入会がギリギリ許される程度ではないでしょうか。
それくらい、奨励会のハードルは高いのです。

タイトルホルダーとして、奨励会経由のプロに挑む里見

「女流でほぼ敵なし、立場も保証されているなら、その中で栄華を誇っていればいいではないか。女流でやっていけるのに、ただでさえ狭き門の三段リーグにまでやってきて、自分たちの席を奪わないでくれ」

奨励会男性会員からはそんな声も聞こえてきそうです。それでも里見は、自らの可能性を問う戦いに挑みました。

三段リーグ、そこは、実力の拮抗した約30名が在籍する異様な勝負の世界。
半年にたった2名しかプロとされる四段への昇段は認められません。

女流としてタイトルをことごとく防衛する里見ですが、三段リーグではなかなか成績を残すことができずにいます。

今話題の藤井四段にも、先を越されてしまいました。

それでも諦めることなく、今期も殺風景な部屋にぎっしり詰まった会員たちを相手に、真剣勝負に挑み続けています。

女流として数々の棋戦をこなすのは、大きな疲労を伴うことです。そのうえでコンディションを整え、半年を1期とする奨励会の戦いにも挑みます。

その疲労や重圧は、通常の棋士のあると考えていいでしょう。

里見が三段になって、すでに幾つかのシーズンが終了しました。しかしなかなか上位2名に入ることができず、まだ四段のプロになれていません。

しかも、里見には年齢制限も近く迫っています。

今期第61回三段リーグは4月22日から9月9日まで行われます。現在の里見の成績は全18局中6局を指し、2勝4敗。毎回の昇級ラインを見てきましたが、だいたい12勝から15勝くらいが、上位2名に入るボーダーラインのようです。

もう一人の女流で奨励会三段の西山は現在4勝2敗、里見に負けずに同じく頑張って欲しいと思います。

これまで誰一人として、女性で奨励会を抜けてプロになった棋士はいません。女流としての仕事も多く、タイトルホルダーとしての防衛戦もあります。

里見香奈は、歴史を変えることのできる限られた存在です。

新たな道を開拓してきた里見女流が、性別を超えて里見四段になる日を、心から待ち望んでいます。

 

※里見香奈三段は、2018年3月4日に最終戦の行われた第62回三段リーグを最後に、年齢制限にしたがって奨励会を退会となりました。現在は女流四冠として、女流棋戦での防衛戦や、女流出場枠として棋戦予選へ参加し、男性プロ棋士にも勝ち星をあげるなど活躍しています。里見女流には編入試験を経由してプロ棋士となる道が残されており、フリークラスからのスタートになるものの、四段プロ棋士への道が完全に閉ざされたわけではありません。

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