史上最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段が連勝街道を継続し、いままであまり将棋に関心のなかった人たちにも広く知られるところとなりました。
プロになって以来の公式戦は未だに負けなしの20連勝。竜王戦挑戦者を決める本戦トーナメントにも出場を決めました。
藤井四段が大きく注目を集めていますが、女流棋界にも活躍が期待される女流棋士がいることをご存知でしょうか。
里見香奈が谷口由紀に勝って四冠維持。大逆転もあった倉敷藤花戦三番勝負を振り返るhttps://t.co/YjAHR0CPhM
2年前と同じ顔合わせとなった倉敷藤花戦三番勝負。谷口由紀女流二段が悲願の初タイトルを掛けて再び里見香奈倉敷藤花に挑んだシリーズを振ります。#将棋コラム #倉敷藤花戦。
— 日本将棋連盟【公式】 (@shogi_jsa) 2018年12月6日
里見香奈、を知っていますか?
将棋界には、女性のみを対象とした女流棋界というものが存在し、その中でも実力ナンバーワンと称されるのが、里見香奈(さとみかな)女流五冠です。
女流のタイトル棋戦は6大タイトルとなっており、そのうち5つのタイトル、名人、王座、王位、王将、倉敷藤花、を里見が保持しています。
そして、里見のすごさはこれだけに留まりません。
最強女流・里見香奈女流四冠が思い焦がれる対局 羽生善治竜王戦は「盤を挟むのが夢のよう」(AbemaTIMES) – Yahoo!ニュース
里見先生とお会いした時、対局に対し文字通り『人生をかける』将棋観に圧倒され一瞬呼吸を忘れた。千日回峰行の様な研ぎ澄ました覚悟がある方。 https://t.co/g6Jkqy1UaT— 羽生 理恵🐰 (@usaginoheso) 2018年12月3日
奨励会三段という、もう一つの顔
女流の世界でその強さを遺憾なく発揮している里見ですが、現在、主に男性プロ棋士の登竜門とされる奨励会にも挑戦しており、プロ一歩手前の三段に在籍しています。
奨励会三段に在籍する女性は現在2名、里見と、里見の後から三段リーグに上がってきた西山朋佳がいます。里見は女性で初めて奨励会三段に昇級した女流でもあり、パイオニア的な存在です。
女流としてはトップ棋士の名をほしいままにする里見でも、奨励会では三段。
いまだプロとは呼べない修行の身です。
奨励会の三段を通常のアマチュア三段と同じと誤解されることもあるのですが、両者の実力には雲泥の差があります。
アマの世界で五段でも、奨励会なら6級程度、入会がギリギリ許される程度ではないでしょうか。
それくらい、奨励会のハードルは高いのです。
叡王戦の女流枠は女流棋士ではない加藤桃子。里見香奈が固辞したと思われるので加藤に罪はないが、1時間の早指しならどう考えても西山朋佳だろ。90分の奨励会三段リーグで勝ち越す三段と二段との平手戦で3勝20敗の初段。早見え早指し西山ちゃんの将棋観たいファンの方が多いよ。来年はよろしく。 pic.twitter.com/dl14t2EbfP
— Deep Blues (@deepblues1997) May 31, 2017
タイトルホルダーとして、奨励会経由のプロに挑む里見
「女流でほぼ敵なし、立場も保証されているなら、その中で栄華を誇っていればいいではないか。女流でやっていけるのに、ただでさえ狭き門の三段リーグにまでやってきて、自分たちの席を奪わないでくれ」
奨励会男性会員からはそんな声も聞こえてきそうです。それでも里見は、自らの可能性を問う戦いに挑みました。
三段リーグ、そこは、実力の拮抗した約30名が在籍する異様な勝負の世界。
半年にたった2名しかプロとされる四段への昇段は認められません。
女流としてタイトルをことごとく防衛する里見ですが、三段リーグではなかなか成績を残すことができずにいます。
今話題の藤井四段にも、先を越されてしまいました。
それでも諦めることなく、今期も殺風景な部屋にぎっしり詰まった会員たちを相手に、真剣勝負に挑み続けています。
三段リーグ初の女性三段対決に関する将棋関係者のツイートもこの1つか。5年前は女性奨励会初段もいなかった。2人いることが奇跡なのに。里見三段はあと2期。他の女性奨励会員の現状では、これが最初で最後の女性三段対決になる可能性が高いのに。本音では女性四段は望まないってことなんだろうか。 https://t.co/cAt8HUlfHO
— Deep Blues (@deepblues1997) April 24, 2017
女流として数々の棋戦をこなすのは、大きな疲労を伴うことです。そのうえでコンディションを整え、半年を1期とする奨励会の戦いにも挑みます。
その疲労や重圧は、通常の棋士の倍あると考えていいでしょう。
里見が三段になって、すでに幾つかのシーズンが終了しました。しかしなかなか上位2名に入ることができず、まだ四段のプロになれていません。
しかも、里見には年齢制限も近く迫っています。
今期第61回三段リーグは4月22日から9月9日まで行われます。現在の里見の成績は全18局中6局を指し、2勝4敗。毎回の昇級ラインを見てきましたが、だいたい12勝から15勝くらいが、上位2名に入るボーダーラインのようです。
もう一人の女流で奨励会三段の西山は現在4勝2敗、里見に負けずに同じく頑張って欲しいと思います。
これまで誰一人として、女性で奨励会を抜けてプロになった棋士はいません。女流としての仕事も多く、タイトルホルダーとしての防衛戦もあります。
里見香奈は、歴史を変えることのできる限られた存在です。
新たな道を開拓してきた里見女流が、性別を超えて里見四段になる日を、心から待ち望んでいます。
Yahoo!ニュース 最強女流棋士・里見香奈 奨励会退会から見えた新たな道 男性棋士との … AbemaTIMES 夢が叶わなかったことが、もしかしたら最強女流棋士をひと回り大きくしたのかもしれない。現在、6つある将棋の女流タイトルのうち4つを持つ里見香奈女流四冠は、まさに… https://t.co/dycCxnBUk7
— 将棋のニュース (@news_shogi) 2018年11月30日
※里見香奈三段は、2018年3月4日に最終戦の行われた第62回三段リーグを最後に、年齢制限にしたがって奨励会を退会となりました。現在は女流四冠として、女流棋戦での防衛戦や、女流出場枠として棋戦予選へ参加し、男性プロ棋士にも勝ち星をあげるなど活躍しています。里見女流には編入試験を経由してプロ棋士となる道が残されており、フリークラスからのスタートになるものの、四段プロ棋士への道が完全に閉ざされたわけではありません。