「いじめ」とは、便利な言葉ですね。残酷な犯罪が、無意味に柔らかな表現に変わってしまうのですから。
今回の事例は「恐喝」と呼ばれるにふさわしいものです。
横浜市の小学校で、福島原発災害から避難してきた小学生が、親が賠償金を受けたことを理由として、同級生から多額に渡る「おごり」をさせられたという事件がありました。
おごりの総額は150万円にのぼるものの、第三者委員会はいじめの存在は推察されるに過ぎないという表現にとどめています。
それを理由に、市教育委員会は「おごり」だから「いじめ」ではない、判断権を持つ第三者委員会が出した結論が「推察」なのでいじめとは断定できない、という趣旨の回答を出しました。
教育長および教育委員会が言葉尻をとらえて抵抗するさまは、まるで親に叱られている子どもが、なんとか言い逃れようと必死になって食い下がっている姿のように見えます。
画像引用:BuzzFeed
去年、高校生が「150万円とられても、いじめで片づけられてしまう」と朝日新聞に投稿した。
ううん、横浜市教員委員会が出した結論はもっと酷い。
「おごりおごられる関係なので、いじめと認定できない」と岡田優子教育長は言い切ったんだから!→https://t.co/xnO1fUXskl https://t.co/alPLnohL02— 盛田隆二『焼け跡のハイヒール』祥伝社 (@product1954) January 22, 2017
大人でも150万円奢るのは無理でしょう。貴方の周りにいますか?過去5年遡った合計でも人に150万奢った人。横浜市教委、両者の意見を公平に聞くのは言い訳を鵜呑みにする事ではありません。小学生が年間30万奢れると思いますか? https://t.co/Xtapa7u642
— さちみりほ@夢やしき死者達新作 (@sachimiriho) January 21, 2017
いじめ事件の内容あらまし
現在中学1年生の男子生徒は2011年8月、小学2年生として福島から転校してきました。
その直後から「菌」などのあだ名をつけられたりプロレスごっこと称して数人の児童から叩かれたりするなどのいじめを受けるようになりました。
その後、ゲームセンターなどでの遊興費や交通費、その他の飲食代金などの支払いを負担させられ、その総額は150万円にのぼりました。児童は自宅から親のお金を持ち出していたということです。
金銭を負担することでプロレスごっこと称する暴力行為はおさまり、被害者の児童には共に行動する友好感も生まれてきていたとのことです。
画像引用:BuzzFeed
いじめではなく犯罪
いじめとは、具体的に何を指すのでしょう。相手が嫌がること全般、などの漠然とした定義になっていないでしょうか。
今回の事件は明らかに犯罪であり、「暴行」「恐喝」に該当する刑事事件です。少なくとも同じことを成人が行えば、すぐに逮捕されるでしょう。「いじめ」には、学校の中だけで済む問題と思わせてしまう、言葉上の甘さが感じられます。
子どもだからこそ、自分の行為は犯罪だからやってはいけないと自覚させなければいけません。そのためには、厳しい言葉で指導する必要もあるでしょう。
いじめの事実が判明したら、「あなたのしていることは犯罪だからすぐにやめなさい。今やったことに対する罰があるかもしれません。明らかになったら処分を伝えます」と、はっきり言葉で指摘するべきです。
大人が罪を犯した時の立件、起訴、裁判、判決、刑の執行、などの手順は、つまりそういうことですから。
子どもだからこそ必要な指導
自分が子どもだったころ、だいたい小学生だったころを思い出しても、自分が純粋な存在だったとは思っていません。
物事の善悪も本能で感じ取っていたし、悪いことを悪いと自覚したうえで身勝手にやっていることも多々ありました。頬を叩かれたりげんこつで頭を叩かれたりしたことは今でも不当だと思っていますが、親から指導されたことは今でも強く印象に残っています。
子どもは吸収力が高いのですから、この時期にたくさんのことを教えるのは、理にかなっています。きちんと言葉で伝えれば吸収していく力は強いのです。
その中で、身体への暴力や言葉による暴力を「いじめ」という言葉で簡単に片付けないように指導する必要があります。この時期に妥協すると、その後大人になってから考え方を変えるのは難しくなるからです。
横浜市教育委員会の岡田優子教育長による市議会常任委員会での発言は、いじめを認定することは難しいというものでした。
現在中学1年生となった被害者の男子生徒は、自治体教育機関のトップによる今回の発言を、どのような気持ちで受け止めているでしょう。
そこが一番、気がかりな点です。
もし自分なら、どんなに不当なひどい目にあっても、先生も大人も誰も自分を守ってはくれないという絶望感で胸がいっぱいになるでしょう。
大人への不信感に心は侵食され、いつも猜疑心を持って人を見る癖が身につくと思います。大人の世界に置き換えると、犯罪被害者でありながら警察でも相手にしてもらえない状態です。
裁判所でも加害者の社会的権力や金銭の影響でしつこく示談に迫られ、ようやく判決に至っても無罪で片付けられるような状態ではないでしょうか。
そのとき、大人である自分がどのような気持ちになるかを考えます。それが、現在中学1年生の生徒が、小学2年生から現在までの約5年間、ずっと抱えている気持ちだからです。
第三者委員会の決定に従ったとされる岡田教育長の発言は、今後同じような事例が起きたときの判断の尺度となるでしょう。
それだけの大きな影響力があるのだという自覚を持って、委員会にも教育長にも、最終的な判断を下してもらいたいと考えます。
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via:NHK NEWS WEB
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